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夜というフィルターは、大切なものだけを残す

 朝起きて、支度をして、仕事をして、帰宅して、夕食、入浴したら寝てしまう。そんな毎日の繰り返し。仕事の帰りに寄り道して本屋に行って興味のある本を立ち読みすることもなく、ましてや独り酒場に行く余裕もなく。

 あわただしく過ごしていると、忘れ物もありますね。あ、これやっていなかったとか、あれをやればいいんだって。そんなことを思うのは、何かをしている時でなく、何もしていないときに決まっている。

 忙しい時にはほかのことは思わないのものですから。朝から忙しくしていれば常に何かをしているわけで、一日中何かをしていないときなどありゃしない。

 寝ている時には、何もしていないが寝るということをしている。ただ、夜中に眠りから覚めかけた時、朝自然に目覚めかけ慌てて起きなくても良いと思っている時にそれはやってくる。

 これをやってなかった。あれをやればいいんだ。とふと思いつく。

 白昼の活動から解き離れた夜というフィルターが、もう良いこと、記憶にとどめておく価値のないものを闇の中に葬りさり、大切なものが残り浮かび上がるのだ。

 夜とフィルターは、儚く脆いものである。それを壊すまでも一日中忙しくしなくても良いのだと思う。

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