矛盾だらけの「ルッキズム」をどう考えるか
お盆も終わってしまいましたね。久々に行動制限のない夏ですが、制限されなくても夏は動きません。だってホテル高いし。特にサービスや部屋が変わるわけじゃないのに値段だけ上がるっておかしくないですか?すみません小市民の愚痴です。
さて、先日こんな騒動があり、ちょっと論争を呼んでいたのをご存知でしょうか
要約すると、人気YouTuberが昔TVで見かけたコスプレイヤーをこき下ろしたところ、そのコスプレイヤーが人気TikTokerになって反撃された、みたいな構図なんですが。今っぽい話だなぁ。
そこでTikTokerさんが「ルッキズムには懲り懲り」と発言したことにより、ルッキズムとはみたいな話がまた持ち上がったわけです。
もう一個、類似の炎上でこんなのもありましたね。
これはサムネのタイトルそのまま。でもこき下ろしたのが同じグループのメンバーの妻というちょっと笑える…失礼、笑えない案件です。これもまさか将来メンバーの妻になるなんて想像はできなかったでしょうけど。
最近ファッション界でもルッキズムについての話題がよく出てくるので、ちょっと解説しつつ考えも述べてみたいと思います。
「ルッキズム」とはなにか
そもそも、ルッキズムについてwikiにはこうあります
以前からある言葉ですが、SNSの発達によって簡単に外見に言及する機会が増えたことからクローズアップされるようになったワードです。外見で評価すること、それを助長したり(特に批判的な意味を含んで)発言や論評をしたときが該当します。
特に近年は興味本位の外見いじりや過剰な批判が容易に巻き起こったりするので、それはルッキズムとして規制していく必要性はあると思います。多くの人がルッキズムの概念を理解していくこと、教育に組み込んでいくことも大事でしょう。
まぁそもそもの話として「余計な感想をわざわざ発信すんな」で終了ではある。でも、ちょっと社会的に矛盾があるんじゃない?というのも率直な意見だったりするんですよね。
「ルッキズム」の矛盾点①
まずひとつは「都合よく使ってるでしょ」というケースが多いこと。
もちろん誹謗中傷はダメだし、心の中にとどめておけばよかったことをわざわざ発信してしまった側が確実に悪い。でも表に出ている以上評価を受けることは仕組み上仕方ない部分があると思うし、ルッキズムという言葉の意味を考えると適当ではなかったのかなと感じる。
見た目を看板にしていて、肯定的な評価は歓迎!でも違う意見は全部ルッキズム!という方向に持っていくのは、ちょっと都合がいいかなという気もしますよね。今回の話も結局はマウントの取り合いじゃん、的な。
件のTikTokerさんもビジュアルで人気を得てきた人(レイヤーさんだし)だと思うのですが、”ルッキズムには懲り懲り”と言ったのであれば「かわいい」「綺麗」という評価にも”私は外見至上主義には反対です。よって私の外見を勝手に評価しないでください。失礼です”と言わねばならないことになるでしょう。いいとこ取りは難しいと思う。
最近はこういう例が多いかな。
批判を封じるために大義名分として使ってるだけで、言葉の意味を深く考えてるわけじゃない感じ。そうなっていくと、本来の意味から変わってきてしまいます。
例えば小説家やアーティストだって作品を公開したら批判されたり貶されたりすることもあるわけですが、それは世に問うてる時点で好みがある以上、仕方のないこと。度を過ぎたものはいけませんがご本人もある程度は覚悟されているはず。批判はすべて中傷です、なんてことは言いませんよね。
見た目で注目を浴びたり「自分を見て」というアピールをしている人は、ある意味で「外見を重視する価値観という意味でのルッキズム」を利用・活用していると言えるわけで、特にそこで収益を得ているような場合はそういう自覚は持っておくべきではないかと思います。
ルッキズムという言葉を盾にするのではなく、単純に「思うのは自由ですが、外見の中傷を投稿するのはやめてください」と言うべきですね。
ルッキズムの矛盾点②
もうひとつは「結局評価の基準が決まってるでしょ」という事実があることです。
その良し悪しはさておき、多様性だなんだと言いつつも今のところはまだモデルさんは長身痩身美形がトップだしアイドルや俳優も造形的に(現在の価値観で)整っていないとメインどころに行くのは難しい。そして観る側もそれを受け入れていて応援している。
さらに韓流の方々なんて美形of美形を目指して外科的ブラッシュアップを繰り返してるわけで、それを助長してるという意味ではルッキズムの権化じゃないかと個人的には思ったりする。でもどちらも批判はないわけでしょう?
友人のクリエイターも言ってましたが「頑張って動画を作っても、ナイスバディな女の子やモデル風女子高生が踊ってるだけの動画のが伸びるんだよね」と。それが現実。”みんなが見たいもの”はある程度決まっているわけです。そんなの見たくないという人もたくさん居流でしょうけど。
正直、人間の感覚で何が美しいか、かわいいかという基準は相当に長い年月を経て形成されたものだから、すぐには変わらないと思う。好みは細分化しているし多様化もしているけど、それがガラッと逆転したり急に無くなったりすることはないでしょう。それは芸術や美術でもそうだと思いますが。
まとめると、今の段階ではまだ評価基準が存在していて、”ルッキズム”という言葉は「批判を封じるため」の言葉になってしまっている。それはまた健全ではないような気がするのです。
じゃあどうしていけばいいのかと考えたとき、個人が、みんなが、「ルッキズムを超えた価値感」を目指していくしかないんじゃないかなと。
「ルッキズム」を超える価値観とは
思うに、みんなが今のトレンドのビジュアルであらねば、極めねばとなること自体がルッキズムを助長していることになる。その枠にあらずんば人にあらずみたいな感じになっていくし、そこで争うことでメンタルをやられたりする人も増えていく。
だから「自分はどうしたいのか」というところから、自分らしいビジュアルやイメージを作り上げていけばいい。価値観の基準を自分の心の中に持つこと。
長く活躍している芸能人の方なんかも、トレンドによって少し雰囲気は変えたりするけど基本は同じという方は割と多いんじゃないかと思う。例えばミスチルの桜井さんや福山雅治さん、石田ゆり子さん、吉瀬美智子さん。ベースはあまり変わっていないように感じます。きっと自分の中に基準があるのではないかなと。
「あの人はあのスタイルこそが合ってるよね」というのが確立できてしまえば固定ファンが付くし、いい意味でレールから外れたところを歩くことができる。常に今の流れの最前線を狙わなくていいし、気まぐれにトレンドに寄せてもいい。結局のところ、これが一番ラクじゃないかと思う。
そういう人が増えることで、価値観が人の数だけ存在する状態が当たり前になって”評価基準”が多様化し、その人のカラーが出ることがベストだよねという認識になればみんなが同じ方向を目指さなくなっていく。
ひとりひとりが自分の価値観で、今のベストを目指していけばそこに優劣はないから、他人の外見を誹謗中傷したりすることがダサい、あり得ないという空気になっていくんじゃないかなと。
もうひとつ言うと、色々なことが多様化していくので、沢山の人を集めるという行為が難しくなっていきます。好みも細分化していくから。
だからぼんやり不特定多数を狙うのではなく、確実に刺せる層をしっかり狙って固めるという方向性が大事になっていく。動画や配信なんかもそうなってきてますよね。
そういう面でも、なんとなくお洒落とか今っぽいというだけでは弱くて、この人のここが好き!という「尖り」が必要になってくる。そのためにも、発信、活動内容と個性を活かした見た目が必須になっていくはずです。
今回のまとめと提言
つまりは、判断基準を「自分の目指すものに対しての達成度」にすればいいと思うんですよ。
誰かから見た意見、世の中の基準じゃなくて、自分の中の基準に対してどうか。
ルッキズムというのは集合知的に作られた概念だから、そっちに合わせずに基準を「自分」に持つことによってそこから離脱できる。自分がこうなりたい、こうありたいと思ったイメージに対して達成できているならば、外野がどう言おうと関係ないでしょう?自分で食べる料理は自分が美味しいと思えればいいのだから。
結局、人の口に戸は建てられない。
要らんことをあーだーこーだ言ってくる人がゼロになることはないと思う。だからこちらのマインドが変わった方が早いんじゃないかなと。
承認欲求=他者の賞賛だけが自分の評価基準になると、認めてもらえないことが恐怖になると、行き着く先は精神的破綻だということは最近のYouTuberの方々の栄枯盛衰を見ていれば分かります。解散したり休止したり、メンタルおばけじゃないとやっていけません。
ファッションや見た目も、自分のありたい姿をしっかりイメージして、そこに対しての達成度でジャッジしていくこと。まずはその段階からスタートすれば自分もラクです。より多数の支持を得たいという場合はもうひと捻りが必要ですが、それはまた別の機会に。
ゲームで例えるなら、やっぱり”アナログなオフライン”で行くのがトラブルもなく平和。RPGもFPSもオンラインプレイならではの楽しさもあるけど、なーんか殺伐としてる部分もありますから。あの聖人ヒカキンさんでも魔が差して暴言吐いちゃう世界です。疲れたときはソロプレイでコツコツ楽しみましょう。ね?
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