【東京島酒 『嶋自慢』の飲俗學<1>】 プロローグ:『新日本風土記』で、もう一杯。
■NHK『新日本風土記』に登場した、株式会社宮原の『七福嶋自慢』。
普段はほとんどと言って良いほどTVを観ないのだけど。
知り合いである「株式会社宮原」の社長宮原 淳氏と新島酒蒸留所の代表銘柄のひとつ『七福嶋自慢』がNHKのTV番組に登場すると聞いて、チェックすることにした。
番組タイトルは『新日本風土記』、題して「東京島酒、もう一杯」。
いわゆる”島酒”が造られている伊豆諸島のうち、八丈島と青ヶ島、そして宮原氏が家業を営む新島の3島に取材クルーが入って制作されたドキュメンタリー番組である。
■受け継がれる青春の味、祝いの島酒
観ると、新島のエピソードには「白い島の青春」というサブタイトルが付け加えられていた。
”青春”とは何か。
縦軸に宮原社長と新島酒蒸留所で働く東京からUターンした青年櫻井浩司さんがいて、横軸に新島村の成人式に出席する新成人たちがいて、その縁を結ぶものとして芋焼酎『七福嶋自慢』がある。
島で唯一の高校「東京都立新島高等学校」では3年生となったとき、故郷を知る体験学習の一環として『七福嶋自慢』の原料芋「あめりか芋(七福薯)」栽培の時間が取られている。彼等は苗の植え付けから収穫までの農作業を実体験する。
生徒たちが苦心惨憺の末に収穫した芋は、すぐに新島酒蒸留所へと運ばれて焼酎となるために仕込まれる。そして2年間、熟成の時を待つ。
収穫した3年生たちが新島高校を卒業してから2年後、正月3日に新島本村住民センターで開催される成人式のため島に帰ってくる。
その式場で彼等が収穫した七福薯で仕込まれた焼酎『七福嶋自慢』が、祝いの島酒として贈呈されるのである。
そして今、新島酒蒸留所で修行している櫻井さんも、新島高校で栽培を体験した卒業生であり、2013年の成人式で『七福嶋自慢』の贈呈を受けた新成人のひとりでもあった。
新島高校における「七福」栽培の体験学習は2004年から始まって、今年でちょうど20周年を迎える。最初の体験者は38歳か、すでに社会の中堅として活躍しているのだ。
七福薯の栽培体験と二十歳の祝いの酒贈呈は、新島ではこれからも世代を超えて受け継がれていくのだろう。
■ドキュメンタリー番組に登場したアーカイブとしての価値。
株式会社宮原と新島酒蒸留所がNHKのテレビ番組、それもドキュメンタリー番組に登場した意義、アドバンテージは大きいと感じた。
まず民放との違い。
経費を出せばパブリシティとして取りあげてもらえる(こともある)商業放送とは違い、テーマの社会性など客観的中立的な立場での制作がモットーという公共放送に取りあげられたこと。
そして”アーカイブ”としての価値である。
NHKオンデマンドのサイトにこういう一文が記されている。
NHKが存続する限り、この「東京島酒、もう一杯」は保存記録として、公開の期限はあるとしても半永久的に局のライブラリーに残るはずだ。オンデマンドの時代、閲覧希望者は時と場所を選ばずこの記録に接することができる。これは大きい。
さて。『新日本風土記』を観て、とても刺激を受けた。そして、より踏み込んで、株式会社宮原と新島酒蒸留所を探り、可能な限り新島の島酒『嶋自慢』にまつわる記録をまとめてみたいと思った。
白い島の青春の酒、祝いの芋焼酎『七福嶋自慢』とともに。
(<2>に続く)
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