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鹿児島蔵元アーカイブズ 2002〜03(1) 大口酒造

2002年4月 サイト『九州焼酎探検隊』で公開
2002.04.17 by 猛牛晴彦

■やっぱりデカイ! 巨大タンクと巨大蔵に隊長+猛牛が(@_@;)

さて、九州縦貫道を筑前から車を飛ばして3時間あまり。『探険隊オヤヂニアリング』初日に訪れた最初の地は、薩摩北部に位置し熊本県に近い大口市。目的は『伊佐錦』『黒伊佐錦』で有名な大口酒造協業組合(現大口酒造株式会社)さんである。

4年前、わてが本格的に芋焼酎にハマるきっかけとなったのが『黒伊佐錦』であり、特に思い入れのある蔵元さんなのだ。関東の友人たちにもわてが送って、焼酎ファンになってもらった想い出もある。というわけで、なにぶん筑前からは遠方、一度もお邪魔したことがなかったので、今回の訪問はとても感慨深いものがあった。

市内に入ってしばらく、隊長が「あそこだよ」と指さす向こうにどデカイ貯蔵タンクが見えてきた。ん~~~ん、やっぱ大手蔵、さすがに大きいわいぃ(@_@;)

さて、事務所にお邪魔して、ご挨拶させていただいた。お迎えいただいたのは、同社の向原理事(下左)と八反丸理事(下右)のお二人。 (※肩書きは当時)

向原氏
八反丸氏

筑前は天神・警固神社で開催されている『伊佐錦を楽しむ会』に御参加の方にはお馴染みの両氏であろう。ご多忙にも関わらず、蔵内を見学させていただけるとのこと。八反丸理事について、拝見させていただいた。

■近代化された蔵の内部では、『黒伊佐錦』がぶくぶくと・・・

蔵の内部に入ってみる。途端にぷぅ~~~~~んと甘ぁ~い香りが漂ってきた。たまらんねぇ~、もう飲みの体勢は万全である(自爆)。蔵を訪ねた方ならお解りでしょうが、あの独得の芳香が、飲兵衛にはまさに涎なのであります。

まずは麹室から洗米、蒸米の設備を拝見した。ちょうど『黒伊佐錦』の製造中とのこと。

上写真の真ん中が黒麹を付けた種麹である。色が白っぽいがこれが1日もしないうちに黒くなってくるという。

左は蒸米の巨大装置。デカイのである。中小蔵元さんを拝見するのも風情があるが、大手蔵はまた大手ならではの驚きや発見があるなぁ~と語ったのは、隊長。

わてはといえば試飲ばかりが頭にチラついていたのたのだった(*^^*)

次に1次もろみから2次もろみへの工程を拝見する。黒麹って言葉では聞くけど、ほんと黒いんですにゃ。以前は真っ黒になるので杜氏さんや蔵人さんに嫌われたらしいですねと、説明いただいた係員の方に伺えば、やはり黒麹でアレルギーが出る蔵人の方もいらっしゃるとのこと。ご苦労さまです。

そういえば御本家『福山エンヂニアリング』でも、黒麹づくりの時はマスクをされていましたですたい。

時節的に造りが一段落された後だったので、蔵の内部での作業は落ちついたものでした。

大手蔵では、昨年熊本県人吉市の峰の露さんに伺ったが、大口酒造さんも巨大なタンクがどーんと並んでいる。その中にあるぶくぶくと活発に泡立つもろみの動きの凄さ。発せられる香りの甘さ・・・(ごくっ)

わてはまじにもろみのなかに飛び込んで泳いでみたらどんなに幸せだろう、などと邪念に取り憑かれていたのであった。

■無濾過36度原酒、メチャ美味に隊長+猛牛絶句!

さて、次は蒸留のプロセスである。仕込み真っ最中なら飲めた「初留」なのだが、今回はタイミングを逸した。ん~~~ん、泣くじょぉ。しかし、しかしである! 蒸留機の下に貯まった完全無濾過の36度原酒をいただくことが出来た。待ってましたぁ!

「まったく無濾過ですから、クセがありますよ。ガスも抜けていませんから」と担当の係員の方からコップを渡された隊長とわて。中身は薄く白く濁っている。

二人ともクセがある人間なので、クセのある酒が好きと来ているから、一向に気にならない。一口、美味い!! いやぁ~、この甘さと独得の香り、コク・・・とわてらは受け止めてしまうが、それがたまりまっしぇん! 来て良かったぁ。

待望というか、たぶん端から見たらわての口から涎が出ていたであろう、無濾過原酒の試飲を終えて、最終的な瓶詰めの工程を見る。

以前、茨城県の小さな酒造メーカーで、まさに手作業の瓶詰め風景を見たことがあるが、ここでは自動である。

瓶詰めされているのは『黒伊佐錦』。コンベアに載ってくるP箱をひっつかんで持ち逃げするという衝動に駆られてしまったが、やめた。

■騒乱状態の焼酎ブームについて、かく語りき。

工程を一通り拝見した後、事務所奧の会議室に案内されて、歓談の時間。先の八反丸、向原両理事にお話を伺う。最中、向原理事から驚きの情報が飛びだしてきた。(以下敬称略)

向原「先日ですけど、『KINZAN』が関東で5000円の値を付けていると聞きましてね」
隊長&猛牛「ええ??? ついに、ですか?(苦笑)」
向原「私も驚きましたよ。こっちじゃそんな値段しないというのに・・・」
隊長「ほんとに過熱してますよね」
向原「間に入って儲けてる人たちが居るんでしょうね」
猛牛「困ったもんですにゃ~」

向原「やはり日常酒として長く愛飲していただきたい、という気持ちはどの蔵元さんも同じだと思うんですが。私個人の気持ちですが、今のブームというのにちょっと不思議な感じがしていますね」
隊長「そうなんですよ。異常ですよ」
向原「それにネットのある大手サイトですが、いろんな銘柄に対するコメントなんかを見ると凄いです。なんでそこまで書くのかなと。なんだか驚いてしまうんですね」

猛牛「わてなんかは、あくまでも日常酒として考えちょりますけん、深く考えんですばい」
向原「地元でも、とても普段のものだから、特別客観視してはいないですよね。身近なものですからね、焼酎というのは」
隊長「頭で飲んでるというか、理屈が先に立つんでしょうね」
猛牛「割水して温めるのも、水と焼酎のクラスターがどーのこーのなんてですにゃ」
隊長「やたら道具に凝るとかね。それは悪い訳じゃないけどねぇ~」
八反丸「錦江陶芸さんも、相当売上を伸ばされたそうですね」

猛牛「時代も変わったもんですにゃ。一ファンとすれば嬉しかですが」
八反丸「酒屋さんと話しますけどね。ブームはまだまだ続きそうだと。嬉しくもあり、また反面怖い気もしますね」
猛牛「最近思うとは、飲兵衛や料飲店が自分の領分を忘れて、一線を踏み越えているっちゃないかと思うとですたい。なんか自分がブームを造っちょると勘違いしとるんやないかと。ネットのおかげで、さらにそれが加速されちょるとでは、と思うとです。自分の好きな焼酎への思い入れは誰にもありますばってん、そういうレベルを超えちょる感じがします」
向原「うむ・・・」
隊長「飲兵衛が提灯持ちをすることもないし、かといって卑下することもないと思うね。探険隊だって、我々が身銭切ってやってるから、言いたいことは言わせてもらうと(爆)」

隊長「ところで、最近は県内での市場の全般的状況はいかがですか?」
向原「そうですね。全体の傾向とすれば他社の大容量ペット商品が伸びていますね。例えばの話ですが、ひとつのご家庭があるとして、贈答用に『黒伊佐錦』をお使いになり、ご自身が家で飲むにはその大容量ペットを買われるという感じです。他の蔵元さんも同じでは?」
隊長「やはり低価格化の傾向は地元でも強いようですね・・・」

◇    ◇    ◇

さて、歓談は続いたのだが、話が出た地元市場の変化については翌日鹿児島市内のディスカウンター店頭で目の当たりにすることとなる。それはまた後日・・・。

というわけで最後に、いろいろと試飲してみますかと出されたのが、ミニペットに入った自社他社織り交ぜてのテイスティング用焼酎の数々。いやぁ~、もぉ飲みまくりましたわぁ~、ガブガブ。ほんにいぢ汚い性格を両理事の前でモロ出し(自爆)。

今から鹿児島市内に向かい、薩摩+日向の領袖の方々と一戦交えにゃいけんちゅーにw


(了)


■2022年追記:大口酒造さんも、2007年に協業組合から株式会社化されました。『黒伊佐錦』は、あのブーム当時に全盛となった黒麹づくりに再度光を当てたパイオニアです。ほんと”黒”がいっぱい増えました。

実質の”芋焼酎ブーム”は、個人的感覚では1996年ぐらいから、その予兆を感じていました。

当時住んでいた大分市内でも、気の利いた居酒屋では「魔王」とか「村尾」などの品書きを壁に貼っていたんです。私といえば、ふだん佐伯市は小野富酒造さんの米焼酎『天下無敵』をうんまい!うんまい!と言いながら空き瓶の山をこしらえていただけなので、それらがどんな銘柄か、その時は知らなかったのです。

対談にもある「日常酒としての焼酎」というのは、そういうことなのでしょうね。

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