【2020 J1 第23節】セレッソ大阪vs横浜F・マリノス マッチレビュー
1.はじめに
疲労の色が濃く見えたガンバ戦。その中でもチームは懸命にプレーをし、なんとか引き分けを掴み取れました。しかし連戦は続いています。中2日で臨むセレッソ戦。雨が降りしきる中、鬼門突破となるか。見ていきましょう。
2.スタメン
■セレッソ大阪
・4-4-2の布陣
・松田陸と都倉が負傷離脱中
・右サイドバックには片山、前線には奥埜を起用
■横浜F・マリノス
・4-2-1-2-1の布陣
・喜田が先発に復帰
3.互いに取るリスクの差
■捕まえられないサイドバック
【POINT】
相手サイドバックとシャドーの中間に位置すると安全
ネットが壊れて時間が空いたときに整理したのでしょう。このあたりから、セレッソサイドバックの位置取りが変わります。シャドーに捕まらず、サイドバックも出づらいところでパスを待ち受ける。こうすると、サイドバックで時間を作ることができます。そのまま持ち上がるのもいいですし、サイドチェンジを刺すこともできる。
これより前はマリノスが効果的にプレスをかけていました。フォアリベロのいない4バックに戻しても、サイドバックが前に出て圧力をかけにいく。前半1:58ごろ瀬古に蹴らせたのは、松原が勇気を持って出ていったから。このメンタルを維持できているのは素晴らしいことだと思います。
しかし、このように外されてからプレスはちぐはぐに。後ろの6人が押し込まれるため、中々プレスがハマらない。これ以降、セレッソは安定してボールを保持できるようになります。
■前線の守備ルール差
・2トップは中央へのパスコースを遮断
・ボランチからサイドを変えさせず、必ず一番後ろに戻させる
セレッソの2トップは守備を効果的、かつ精力的に行います。中央を固め、マルコスやシャドーに直接縦パスが刺さらないようにする。なるべく外回しを強いることで、一番危ない中央へ侵入させません。
また、押し込まれたときも自陣へ戻ってきます。このときの対応はボランチ封鎖。そこを経由してサイドを変えられると、位置が高いので反対にいくまであまり時間がかかりませんよね。しかし、センターバックを経由して変えると、一番後ろを通るので距離が長くなる。ようやくサイドを変えた頃には、セレッソ守備陣はスライド完了済み。
こういうメリットがありますが、攻撃の選手がきっちり考えて守備対応し続けるのは相当な負担になります。中盤もこなせる奥埜がいてこそ、ここまで固い守備になっているのでしょう。フル出場していないのに、走行距離はチームトップ。ボランチ以上に走るフォワードなんてそうそういるものじゃありません。これだけの守備をして点も決めるんですよ。本当にすごい選手です。
■中央での阻害はルールにない
・前線の選手たちは前へプレスに出るが、自陣のときは明確に消す場所が定められていない
・サイド低めの位置が安全な地帯になってしまう
翻って、マリノスの守備はどうでしょう。前に出て精力的にプレッシャーをかけますが、自陣のときはそれとなくコースを切るだけ。1点目に繋がった、清武が出した片山へのパス。これもマルコスが寄せきれていないので、余裕をもって蹴られている状態でした。リーグ屈指のキッカーは、これだけのスペースと時間があれば十分なようです。
このように、そこまで迫力を持って寄せないので、相手から見ればサイド低い位置は安全地帯になります。清武や丸橋に、いいボールを多く蹴られてましたよね。
マリノスの場合は高い位置で奪いたいので、前線へのスプリントに体力を使う。その代わり、自陣での守備は省エネ。セレッソは無理に前で奪わず、一旦ブロックを整えてから追い込むように守る。なので、奪えそうな状況なら走りますし、そうでないならゆっくり走ってブロックを整えます。
どちらがいいということではありません。どちらのメリットデメリットを取っているかどうかの差です。マリノスはハイリスクハイリターン。セレッソはローリスクローリターン。しかし、互いのライン設定を考えると、セレッソにとってはハイリターンになります。(マリノスにボールを持たせ、高い位置で奪って浅いラインを突破すればいいから)これが相性が悪い所以でしょう。
4.攻撃で何もしなかったわけではない
■悪いクロスといいクロス
この試合、前線の動き出しが後ろを向いており、中々相手守備陣を押し込められませんでした。また、前述した通りサイドチェンジも時間がかかるため、スライド速度を上回れない。そうなると、浅い位置でのクロスが主になってしまいます。
相手守備陣が前を向いている状態でクロスを上げても、簡単に跳ね返されてしまいます。本来ならキーパーとの間に上げたいのですが、浅い位置なのでクロスの難度が上がる。また、フォワードの前向きなアクションが少ないことも影響して、中々それができない状況。攻撃が停滞していきます。
しかし後半になると、前向きのアクションが増加。後半開始時に喜田が猛然と駆け上がっていくことなんか顕著でしたよね。その結果、相手をある程度押し込めるように。外回しになっても畠中から鋭いパスがつくので、時間が作れるように。キーパーとの間に入れることで、セレッソ守備陣に後ろ向き対応を強います。
■幅を使うと効果的
この日のマリノスは従来の4-2-1-3と違うアプローチで試合を進めていました。この試合ではウイングはおらず、幅を取るのはサイドバックの役目。つまり、フォアリベロを1つ前に上げてマルコスにしただけです。
この状態で攻めると、エリキや大然は内側にいることが多くなります。セレッソも狭く守るため、横幅が短くなることに。その状況でいきなりサイドバックが外側に飛び出せば、サイド深くを取ることができます。クロスを上げると、後ろ向きな対応を強制できますよね。
そして後半になると、エリキが外側にいることが多くなりました。そうすることで、4バックを横に広げることができます。また、相手ディフェンスラインの背後も強く意識するようになりました。
このシーンも外側から素早く展開。バックドアで抜け出したエリキに対応したのはヨニッチでした。固いセレッソからセンターバックを引っ張り出せたのです。
■体力の限界を越えて
裏への抜け出しが少ない。幅を取るためにサイドを走る回数が少ない。守備で前線のプレスバックが緩い。全て連戦によるスタミナ不足が影響していたように思います。
そんな中でも、後半開始から2点目を取られるまでは、ギアを1つ上げてプレーしていました。それがある程度実り、ほんの数回ですが、チャンスを作れていたと思います。しかし、そこで点を取れず、失点してしまう。体力が尽きた中、追いつくためにチームが前向きになったらどうなるでしょう。個人的には、2点目を入れられた時点で大勢は決まったように思っています。
そこからは選手を大幅に交代。縦へのスピードを打ち出したいですが、さすがに2試合連続で多くの選手をフル出場させることはやめたのでしょう。そうなると、ここからはもう別の試合です。そうまでしてボスは選手たちを守りたかったのでしょう。これを加味した上で、4-1という結果を受け止めたいと思います。
5.スタッツ
■sofascore
■SPAIA
■トラッキングデータ
6.おわりに
大阪2連戦、きつかった!体力的にもそうだし、自分たちを整理する上でもそう。とにかく時間がないことが恨めしい。本来なら疲れていない選手を多く起用したいですが、そうなると今とはかなり違うサッカーをしなければいけない。それをぶっつけでやるのはかなりなリスクがあります。そうなると、どうしても似たような選手起用になってしまうんですよね…そして疲労が蓄積して怪我へ…
マリノスのサッカーは、たくさん考え、いっぱい走ることを要求されます。つまり、心身共に大きな疲労を1試合ごとに抱えるのです。人間なので、毎試合100%のパフォーマンスを出せるわけではありません。我らが見ているのは、チェスの"ようなもの"であって、チェス"そのもの"ではないのです。選手は駒じゃないんですよ…自分はこういうことを強く意識し、この結果を受け止めたいと思います。
さて、泣き言を言ってても試合はまたすぐにきます。またまた上位陣である名古屋との試合。中3日でどこまで回復できるかはわかりません。それでも前へ進んでいくのみです。自分も切り替えて、一生懸命応援したいと思います。
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