【2020 J1 第13節】ヴィッセル神戸vs横浜F・マリノス マッチレビュー
1.はじめに
ゼロックスの借りを返したいですね。そんな気持ちもありつつ、4連勝を懸けてノエビアスタジアムへ乗り込みました。水曜日のルヴァン杯を見据え、神戸は大規模なローテーションを採用することが予想されます。その状況で互いにどのようなサッカーを見せたのか。振り返っていきましょう。
2.スタメン
■ヴィッセル神戸
・4-3-3の布陣
・前節とメンバーを大幅に入れ替え
・大崎がアンカーで起用される
■横浜F・マリノス
・4-2-1-3の布陣
・こちらもメンバーを半数ほど入れ替え
3.統一される守備意識と、バラバラな攻撃意識
■統率されたハイプレス
・大崎はマルコス番
・センターバックへのバックパスや横パスをスイッチにプレス開始
・各所人を当てはめマンツーマン気味で対応する
「3バックかな?」スタメンを見たときそう思いましたが、蓋を上げてみてビックリ。なんと、大崎がアンカーだったのです。サンペールより対人守備能力が長けているので、マルコス封鎖を目論んだのでしょう。配球能力もありますしね。どこまでもマンツーマンというほどではなかったですが、かなりしつこくついてきました。
他の選手たちも大まかにつく相手が決まっている状態。狙いを定めたあと、センターバックへのパスをスイッチにハイプレスを開始。最後方の数的優位を保ちつつ、他は1対1の局面を作って対応。大まかなベクトルは、札幌戦のときに近いでしょう。
この守備方法は意思統一されており、誰がどこへ寄せるかの迷いがあまり見られませんでした。激しい寄せはマリノスを大いに苦しめます。しばらく見られなかった、センターバックのパスミスなどが散見されましたよね。組織化されたいい守備だったと思います。
■後ろの重たさとズレる攻撃意識
・ビルドアップ時は大崎が下がって3バック化して開始
・インサイドハーフも低めの位置でビルドアップに参加する
⇒ 全体的に後ろに重くなる
⇒ サイドバックにボールが入っても孤立してしまう
神戸は後ろに重いビルドアップをしていました。これは、菊池の展開力不足を補うためでしょう。しかし、そうするとサイドバックが孤立することに。
そこへボールが入ったとき取れる選択肢は、以下のものになるでしょう。
①ドリブルで相手をかわして前進
②前にいる選手の裏を目がけてロングボールを放り込む
③後方へのバックパス
①は藤谷が何度か挑戦していましたが、勝率はそこまで高くなかったです。②については、マリノスがハイラインを敷いているため、オフサイドになる。自然と、③を選択する回数が多くなることに。
本来ならインサイドハーフのフォローがあるのですが、位置が低いためそれができない状態。マリノスのハイプレスもあり、神戸は攻めることに苦戦してしまう。マリノスが敵陣に押し込めたのはこれが理由でしょう。
また、攻撃意識のズレも散見されました。この場面で、初瀬は安井がボールを受けた瞬間にパスを受けようとアピールしています。しかし、山口へパスが渡ると、不貞腐れて動きを止めてしまう。その後、自分に向かってロングボールが飛んできますが、出足が遅れたため追いつけず。
恐らく、このとき初瀬は藤谷へボールが渡ると予想し、動いていなかったと思われます。「え?ここに出るの?」そんな気持ちだったのではないでしょうか。普段一緒にやっていないメンバーがスタメンに揃ったので、その弊害と言えるかもしれません。
■似たポゼッションと、乖離するプレーするエリア
ボール保持率はほぼ互角でしたが、プレーエリアはほとんど神戸側に寄っていました。先ほど述べた低い位置でのビルドアップ。その影響が数値にも出ていたことがわかります。
パスマップを見ても、その差は歴然としていました。
神戸は低い位置でのパスが多い。特にサイドバックから前進するボールがほとんど出ていないことがわかります。中央を循環させ、サイドを変えることもできていない。それぞれのサイドでボールが止まっている辛い状況が表れているでしょう。
翻って、マリノスは高い位置でのパス交換が多かったです。右サイドはマルコス、仲川、小池の3人で循環。左サイドは、扇原、大然、ティーラトン、畠中の4人で循環。人の多い中央からではなく、サイドから崩せていたことがわかります。
以上より、前半は神戸がうまく攻められず、マリノスが相手を押し込んでいたことがわかりました。こちらが優位に試合を進めていたと見ていいでしょう。
4.選手交代で一変した試合状況
■孤立しないサイドバック
サンペールが入り、大崎が1列下がりました。これで3バック化してビルドアップを開始する必要がなくなった神戸。安井や山口が高い位置に出やすくなります。
左サイドでは酒井、安井、古橋。右サイドでは、西、山口、大崎がそれぞれ三角形を形成し、相手をかわします。これによってマリノスの両翼を押し込めることもポイントです。
また、交代で入った選手たちは足元のスキルが高く、いつもやっているメンバーです。阿吽の呼吸があると共に、とんでもないタイミングでパスが出ることも。酒井やサンペールからサイドを変えるボールが何本も送られていましたよね。彼らの交代によって、一気に攻撃の形が出来上がりました。
それはパスマップを見ても明らか。両サイドバックが多くのパスを記録するなど、絶大な貢献を果たしたことがわかります。
また、横への揺さぶりが増えたことにより、縦一辺倒だった攻撃に変化が生まれていることもわかります。
前後半のスタッツを比較すると、クリア数が激減し、パス関連の項目がグッと伸びています。うまく循環していたことを表しているでしょう。
また、オフサイドが少なくなり、クロスが増加しています。これは、横方向への揺さぶりが増え、オフサイドの網にかからなくなった。また、サイド深くをえぐれるようになったので、クロスが上がるようになったということ。2点目もクロスからでしたよね。交代後に攻撃が活性化したのは間違いないようです。
■選手交代のメリットとデメリット
選手交代はいい意味でも、悪い意味でも局面を変えてくれることが多いです。今回、先に神戸が4人代え。その後マリノスが3人交代で対応するという形でした。
このときの入れ替わりで注目したいのが、『サンペールin と マルコスout』です。ご存知の通り、サンペールは展開力に非凡な才能を持ちますが、守備範囲の狭さがネック。行動範囲が広く、アジリティの高いマルコスとは相性が悪いです。
しかし、彼は天野と交代します。天野の特徴は、ボールサイドに寄り、隙間を縫ってボールを受けること。相手から離れてプレーする傾向もあります。相手から離れるということは、攻守が切り替わった際、マーク相手を外すことにもなりうる。そこへ素早く戻れたらいいのですが、天野にそこまでのスピードはない。サンペールがフリーになることが多くなります。対峙するのもマルコスではないので、彼の弱点も隠れやすかったでしょう。
終了間際の得点は、いずれもサンペールがフリーでボールを持っていたことがきっかけでした。彼にこれだけの時間と空間を与えたら、そりゃいいボール飛んできますよね。
交代で入った選手は、誰をマークすればいいのかルールをすり合わせる必要があります。また、試合のテンポに慣れるまで、ある程度の時間を要します。特に後者については、水沼の交代が露骨に響いたでしょう。
リードしている状態。しかもサンペールは危険な選手だとわかっているはず。それなら、交代で入った選手たちは、どうすべきだったか。少し考えればわかると思います。
まぁ、こういうお話って、結果論なんですけどね。4点目を決めていたらこの交代は賞賛されていたでしょう。そして何よりも、マリノスのスタイルとしては、攻撃して点を取ることの方が重視されています。なので、攻撃的にいった結果、相手のキーマンを外してしまった。そして、自分たちは決めきれず、相手は決めてきた。ただそれだけなのです。
要はサイコロの出目が悪かっただけですよ。こういったピーキーなやり方を志向しているので、こういう日もあります。なぜ失点してしまったのか。そして、自分たちは何をすべきだったか。それが掴めれば安い授業料でしょう。今後糧にしてもらいたいですよね。
5.スタッツ
■sofascore
■SPAIA
■トラッキングデータ
6.おわりに
前述した通り、今回はたまたまうまくいかなかったです。交代策で言いたいことは色々ありますが、それも結果論なので。究極を言えば、この日のトップ下の交代。帯同していなかった渡辺皓太が恐らく最適解だったでしょう。と言うと、どれだけ無駄な話かがわかると思います。
試合を締める術が、加点すること。それが孕む危うさ。そういったものを理解し、応援することが求められるのでしょうね。だからこそ、「4点目が入ってればなー」という悔しがり方を自分はします。いや、めっちゃ悔しいですけどね!明らかに勝点2を落としましたし。ちゃんと締めることもできたはず。そのあたりの成長は今後見ていきましょう。去年だって、勝てたはずのアウェイ清水戦があったじゃないですか。きっと大丈夫ですって。
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