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【2020 J1 第30節】川崎フロンターレvs横浜F・マリノス マッチレビュー

1.はじめに

 リーグ戦も大詰め。これで33戦目になります。ほぼほぼ終わりですよね。いやぁ、あっという間だった…この試合が終わればACL。アジアの舞台を前に、国内最強のチームとやれる。最高の環境じゃないですか!見せてやりましょう、マリノスのアタッキングフットボールを!!

2.スタメン

スタメン

■川崎フロンターレ

4-1-2-3の布陣
・アンカーに守田が復帰
・インサイドハーフとウイングに機動力のある選手が先発

■横浜F・マリノス

4-2-1-3の布陣
・前節から7人変更

3.フロンターレの姫ダミアン

■機動力のなさが目立つダミアン

ダミアン流れる

【POINT】
すぐ中央に戻るほど機動力がないため、外に流れると中央が空きやすい

 最近の試合でよく見られるのですが、ダミアンは外に流れてボールを受けようとすることがあります。そうすると当然中央が空きますよね。すぐに戻ってくればいいのですが、ダミアンの機動力だと時間がかかってしまう。つまり、彼が戻ってくるまで攻めにくい状況が続くことになります。この場合も外に流れてスペースを作りましたが、脇坂には仕掛ける選択肢しかありませんでした。

 これが小林なら変わってくるでしょう。彼は敏捷性もあり、幅広くピッチを動くことができます。外に流れたとしても中央に戻ってくるスピードが速いので、いてほしいタイミングで顔を出せる。しかし彼は怪我で不在。ダミアンが出ずっぱりということもあり、機動力のなさが目立っていました。シーズン開始当初は中央に固定気味でしたが、見てない間に変わったなという印象です。いつから、どのような経緯で、というのは線で追ってる方のみわかるのかもしれませんね。

ダミアン守備

 機動力のなさは守備にも影響します。ボールを奪おうとプレスをかけるも、パスでかわされる。そこから次の守備に移るまでに時間がかかるので、素早いカバーがしにくい状況。このシーンでは、喜田に落とされたくらいのタイミングで扇原へ向かいだしていました。

 また、攻守の切り替わりでも目立っていした。攻撃時に外へ流れた直後、マリノスにボールを奪われると守備に切り替わります。しかし、本来彼が守るべき中央に戻るまで時間がかかるので、ファーストプレスでの方向付けが中々できない状態に。マリノスのセンターバックがある程度余裕を持てたのは、これも影響していたでしょう。

■ダミアンの分も動ける選手を先発

 では、ダミアンの目立つ弱点を補うにはどうすればいいか。彼の周囲に機動力のある選手を充てることで解決できそうですよね。サッカーはチームスポーツです。個人の弱点はみんなで補いましょう。そういう意図があり、なるべく広範囲に動ける選手をインサイドハーフとウイングに選出したのだと思います。中村憲剛や大島、家長が先発を外れていたのはこういう理由からではないでしょうか。

ダミアン守備2

【POINT】
攻守に渡ってダミアンの分も走り、彼をなるべく中央から動かしたくない

 なるべくダミアンを中央に据えるため、その周りを他の選手たちが懸命に走ります。だからウイングが前に出てセンターバックに寄せるし、インサイドハーフが外にいるサイドバック目がけて走っていたのでしょう。

 中央封鎖をして外回しにするという狙いに見えがちでした。しかし、ダミアンの周りを囲うため、中央付近に選手が配置される。こう見ることもできると思います。

ハンドの直前

 高丘が退場するきっかけになった裏への飛び出し。このときもダミアンはすぐに前へ走らず、代わりにウイングが飛び出していました。

 守備でも走り、攻撃でも走る。前半の走行距離も、フロンターレのトップ5は両翼と中盤の選手たち。全員が5.4km以上を走るハイペースっぷりでした。このように、ダミアンを囲っていたことが数値にも表れていました。

4.後ろに保険をかけて

■縦に早すぎる展開と、川崎の保険

マリノス縦に早い展開

・マリノスは縦に早く攻めるので、攻撃時は前の4人だけになりがち
・フロンターレはあまりサイドバックを上げず、前がかわされても4人が構えられるようにしている

 前述した通りダミアンの周りを走るため、この日のフロンターレは前後分断しやすい状況でした。後方から縦パスが入ると一気にスピードアップ。いつも縦に早いマリノスですが、この日はさらに拍車がかかっていました。

 しかしフロンターレはサイドバックをあまり上げず、4バックが必ず残るようになっていました。前が動く分の安全保障なのでしょう。速攻を仕掛けるマリノスは前線の4人になりがち。それに対して4バックなので、最低でも同数で対応できます。なんなら早すぎて水沼がついていけないことも多々…基本的に数的不利な状態でした。

 この状態でサントスが流れると、中に誰もいないことも。結構いい感じに攻めることはできていましたが、シュートがあまり多くなかったのはこのためだと思います。

■低いラインを取る代償とその対策

 ただ、ラインを低く設定していたので、ビルドアップ時にサイドバックが相手ウイングに捕まりがちに。マリノスもセンターバックまで遮二無二寄せる守備をしなかたっため、ボールの前進に苦労していました。しかし、飲水タイム後から状況が変わっていきます。

川崎改善

・サイドバックを外側高い位置に上げる
・中盤の選手が後ろに下りて、相手の守備基準を狂わせる

 多少リスクを負うようにしたのか、サイドバックが高い位置を取り始めます。その代わり、中盤の選手たちが下がるように。これでマリノスの守備基準を乱しにかかります。下りた中盤に意識が傾き、外にいる選手が空きがちに。フロンターレはここを起点とし、外側から攻め始めるようになりました。

5.1人少なくても勇猛果敢に

■後半までに整理したいこと

前半マルコス

 高丘が退場してマリノスは10人に。下げたのは水沼なので、そのまま4-3-2のような布陣になりました。このときプレーに迷いを見せていたのはマルコス。サイド深い位置まで守備をしたり、中盤横並びになり3センターのように振る舞うことも。自分はトップ下なのか、それともセンターハーフなのか。攻守における立ち位置が不明瞭でした。

 このように迷いがあった前半。後半に入るまでに、以下のことを整理する必要があったでしょう。

・攻めて勝ちにいくのか。それとも、引き分け狙いで守備的にいくか
・マルコスの役割をどうするか

 1人少ない状態ですので、全員の意思統一は11人のときより重要になります。攻撃的なのか守備的なのか。言葉にしてハッキリ伝えることで、皆が同じ意識を持てるようにします。これで連動したプレーがしやすくなりますよね。

 また、前半フワッとしてたマルコスの役割をハッキリさせます。攻撃的にいくなら3トップの一角やトップ下に据えますし、守備的にいくならボランチを任せます。後者の場合は、天野や皓太へ交代することもできたでしょう。

 さて、ボスの答えはどうだったかというと…

 「残りの45分間、守ることもできるが、自分たちのサッカーをやり続けよう」と伝えました。ボールを回して、ゴールを狙うことが大事でしたし、自分たちのサッカーを貫くことが大事でした。

 それこそがマリノスですよね。ACL直前に守備的に振舞っても士気が下がりますし、何よりマリノスのサッカーというものがブレてしまいます。徹頭徹尾攻撃的にサッカーをするという選択は正しかったように感じました。

退場後攻撃

【POINT】
後ろで頑張って繋ぐことにより、よりよい状態の前線にボールを提供できる

 後ろから丁寧に繋ぐことで、前線との距離を短くしていきます。なるべく近いところからパスを出した方が正確性上がりますよね。また、単純な放り込みではないので、ハイボールの競り合いも減ります。五分のボールを少なくし、なるべく確度を上げて攻めます。

 このシーンはエリキのビッグチャンスに繋がったシーンです。後ろで繋ぐことにより、松原が得意な位置でボールを持てるように。また、それに合わせてサントスもサイドにスペースを見つけられました。万全の状態でパスを送る松原と飛び出すサントス。登里を引きちぎって、クロスまでこぎつけられた理由がよくわかります。勇気を持ったプレーを継続したご褒美だったでしょう。

■数的優位をしっかりと活かすフロンターレ

後半の対応

・マリノスのウイングがいなくなったので、サイドバックが浮きやすくなる
・外に引っ張れたら中央で数的優位が作れる

 マリノスは後半から4-2-1-2のような布陣を取ります。ウイングがいなくなったことで、相手サイドバックが自由な状況に。前半ほど気を遣って位置取りをしなくても、外でボールをもらうことができるようになります。そのまま上がり、こちらのサイドバックが1対2になることも頻繁に起きる。カバーのため誰かが外に出ると、今度は中盤で1対2が発生。「あそこが動いたからここが空く」この認知を全員高いレベルで備えている怖さがよくわかりました。

 人数が少ないので、マリノスが押し込まれる展開に。こうなると、ダミアンの周りに機動力がある選手を置く縛りがなくなります。スペースと時間が各所にできるので、それを活かせる三笘と大島を入れたのは適切だったでしょう。特にこの状況なら、機動力が高いわけではない大島も弱点が目立ちにくくなります。ほんとエグい交代でした…

6.スタッツ

マッチレポート - J1レポート note用-1

■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

7.おわりに

 前半の素晴らしい出来。特に、何回かジェジエウをマルコスへ引っ張り出せていました。こうなると最終ラインは同数に。マリノスの土俵に近いものを強制することができていたと思います。選手たちの走行距離も伸ばしていたので、数値からも伺えましたよね。

 また、10人になってからの戦いも素晴らしかったです。その立役者はエリキだったでしょう。何度もジェジエウをちぎって抜け出す姿が見られました。最後まで攻撃的なサッカーを貫いたことは、精神面でも充実できたはず。負けはしましたが、前を向けるいい試合だったと思います。

 さて、ここからはACLです。ここ最近の試合を見てわかるように、各々のコンディションが上がっているように感じます。スピードで相手を圧倒してやりましょう。厳しい連戦になりますが、マリノスならやれるはず!アジアの舞台で飛躍することを楽しみに、自分も精一杯応援していきます。

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