見出し画像

【2020 J1 第29節】横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 マッチレビュー

1.はじめに

 ACLの代替えで29節が繰り上げられました。その相手は札幌。つい1ヶ月前に対戦した相手ですね。やられたらやり返したい。早々にダブルを食らうのも嫌ですしね。

 こちらはサントスという怪物を補強。めっちゃ足の早い正岡子規も加わり、スカッドが一新した気分。今ならやれるはず!苦い思いをした札幌をホームで迎え撃ちます。

2.スタメン

画像1

■横浜F・マリノス

4-1-2-3の布陣
・畠中が負傷から復帰
・詠太郎がリーグ初先発

■北海道コンサドーレ札幌

3-5-2の布陣
・前節中止のため1週間の休養があった
・現状のベストメンバーにて臨む

3.無理せず相手を広げるマリノス

■札幌の守備

画像2

・ハーフェーライン付近で待ち構える
・各所マンツーマンで対応
・マリノス右サイドはうまく受け渡す
バックパスをスイッチに前へ出ていく

 札幌の守り方は前回対戦時と同じ手法でした。アジリティが高くはない福森を起用しても、オールコートマンツーを辞さない構えです。

 当然デュエルが大事に。マリノスが1枚剥がせれば優位に立てます。勝てそうなのは、フィジカル面でミスマッチになってるサントスvs田中。アジリティ面で優位に立てる詠太郎vs福森。このあたりでしょう。

 前者に関しては、ほとんどサントスが勝利してました。フィジカルの強さ。アジリティの高さ。元々中盤の底を得意とする田中には不釣り合いでしたよね。ファウルで止める機会が多くなっていました。

 後者は、詠太郎が期待に応えたと思います。縦に仕掛け、福森を置き去りにする姿を何度も見ることができました。途中からは菅が意識高く見るようになるほど、相手のリソースを削ることに成功していたでしょう。

■詰まったら引いて伸ばそう

 では、なぜマリノスはこの試合で相手に引っ掻けることが少なかったか。それを考えてみましょう。

 ハーフェーライン付近で待ち構えるということは、そこに到達するまで余裕があることになります。これを利用して、まず陣形を整えます。その状況でビルドアップを開始できるので、比較的安全に立ち回れることに。こうすると、自陣で攻守の切り替わる頻度が減少。インテンシティが低くなるので、和田の弱点が隠れますよね。

画像3

【POINT】
ビルドアップに詰まったら、下げて相手を広げる

 また、高い位置で手詰まりになった場合、一旦自陣深くまでボールを戻すこともしていました。これをすると何が嬉しいか。それは、相手を広げてスペースを作り出せることです。

 前述しましたが、札幌はバックパスをすると深くまで追ってきます。矢継ぎ早に人を捕まえるため、下げれば下げるほど守備陣形が間延びすることに。

 こうすると、先程までギュっと詰まってたところに空間が生まれます。これだけ広いのなら、マリノスは繋ぎやすいですよね。中央を割り、サントスまでつけることが何度かできていました。

 これも先程述べましたが、サントスと田中はミスマッチです。相手を押し広げ、デュエルで優位に立てるところへ展開。相手のプレスをいなしつつ、的確に急所を突いていました。

4.ハマるハイプレスと最前線の小兵たち

■意思統一されたハイプレス

画像4

【POINT】
相手のビルドアップ隊を消しながら寄せていく

 この日もハイプレスがハマっていました。サントスが方向を限定するようになったこと。マルコスが指揮を執り、意思統一して追い込みをかけられるようになったこと。ここ最近見られるハイプレス向上の要因はこれらでしょう。

 札幌の3バック+Wボランチの5人に対し、3トップ+マルコスの4人で挑む。漏れが出そうなら、ボランチやサイドバックが前に出て助ける。躊躇いが一切なかったことも、プレスの勢いに拍車をかけていました。

 追い詰められた札幌は、菅野が蹴り出すことが増えていく。見かねた荒野が下りてきますが、それだと前線のリソースが割かれてしまいますよね。それが裏目に出ることに...

■最前線の小兵たち

画像5

 荒野が後ろで組み立てに参加すると、最前線はチャナティップと駒井になります。この2人は身長が高くなく、蹴り出されたボールに競り勝つことは至難の業。チアゴと競り合ったシーンは、それが露骨に表れていましたよね。

 また、チャナティップ最大の武器は小さい体と敏捷性を活かしたドリブル突破です。しかし、最前線にいると後ろ向きにボールを受けるため、前を向くにはターンする一手間がかかります。スペースも狭く、彼の長所を発揮できない。

 結局、札幌は前線で時間を作れず、相手を押し返すことが困難に。ハイプレスを果敢に仕掛けていたことは、こういうことも引き起こしていました。これが、前半相手を敵陣に押し込めた理由でしょう。

5.蹴り出すのなら、最前線に基準を置けばいい

 岩政さんが解説していましたが、このように蹴ってしまう展開だと、前線におさまる選手が欲しくなります。そこで、札幌はドウグラス オリヴェイラとアンデルソン ロペスを投入。

チャナティップ前向き

 これにより、チャナティップと駒井が1列下がることに。投入したフォワードにボールを当て、2列目の選手が回収する。チャナティップは前向きでボールを受けられますし、駒井のオフザボールの動きも光るように。追い上げを図ります。

後半のマンツーマン

 また、福森が交代したのは、詠太郎にスピードでちぎられていたからでしょう。菅を入れることでスピード勝負に対抗。ここまで追い込んだ詠太郎はあっぱれでした。

 アジリティに不安がなくなった札幌は、前半以上にマンツーマン色を強めます。交代で入れたブラジリアン2人の守備をわかりやすくする狙いもあったでしょう。

 このマンツーマンの勢いがすごかったこと。互いにスタミナが削れていき、プレスバックが徐々に減ったこと。これらの理由により、段々とオープン具合が増していきました。

 アンデルソン ロペスがサイドバック寄りに位置していたのも、地味に嫌でしたよね。フィジカル差を利用して、ボールをおさめたり運んだりする。また、サイドバックがルーカス フェルナンデスとの1対2に晒されることもありました。

6.スタッツ

画像6

■sofascore

■SPAIA

■トラッキングデータ

7.おわりに

 後半早々に1点返されていたらわからなかったです。そういう意味でも、畠中のJ1初ゴールはチームを大きく助けました。ディフェンダーらしからぬ華麗なターン。落ち着いてコースを狙ったシュート。ストライカーさながらでしたよね。

 これにて試合の大勢は決しました。早めにサントスと大然を下げられたことはよかったです。仲川とエリキも試合の中で体を慣らせましたし、ゴールも生まれました。この試合の隅から隅まで、今後勢いをつけるものがギッシリ詰まっていたと思います。

 その勢いに乗りながら、次は神戸です。ゼロックスでの忘れ物、取り返させてもらいますよ!ここから連勝街道を歩んでいきたいですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?