パブリックセクター出身者は可能性に満ち溢れている話
10XのCorporate Strategyで働いている@mhiroです!この記事は10X アドベントカレンダーの23日目の記事です。
昨日は10月に入社されたSRE くりはらさんのウィスキーへの熱い想いがこもった「ウィスキーへの愛を語る」で、明日は10X 8人目メンバーの@aineさんの記事です。お楽しみに🎄
はじめに
今回は昨年12月に10Xに入社してからいままで自分が一番多く受けた質問への答えを自分なりの言葉で整理しようと思い「パブリックセクター出身者の強み」というテーマを選びました。
20代~30代前半でいま公的機関で頑張っている方や、もともとはパブリックにいたが外の世界に飛び出した方の背中を少しでも後押しできればいいなという想いで書いています。
※ パブリックセクターとは、一般企業に対して官庁・独立行政法人・地方自治体・公益法人などの公的機関のことを指します
「自分には外で通用する専門スキルが何もない」
元日銀でスタートアップに飛び込んだというバックグラウンドもあり、パブリックセクターで働く若手の方からキャリアについて相談される機会がたくさんあります。その中で一番多く聞かれるのが「自分には外で通用する専門スキルが何もない」という不安でした。
たしかに私も日銀にいる時はこのように感じていました。でもそれは単純に外の世界を知らなかっただけであって、スタートアップに飛び込んで1年経ったいまはそんなことは決してないと信じています。
私が思うパブリックセクター出身者の強みは「立上がり力」「ステークホルダーマネジメント」「ミッションドリブン」の3つです。
※ 当然ながら公的機関で働く全員の強みが同じという訳ではなく、実際には色々なカラーを持った方々がいます。本記事は「自分には専門性がない」「自信がない」という若手の方がいた場合、そんなことはなくて十分世の中で通用するスキルを身につけているはずだよということを知って頂き少しでも自信を持って頂ければという想いで書いています。
どこに放たれても自走して立ち上がる
2~3年で部署異動があるのは民間の大企業でもよくあることですが、パブリックセクターはローテーションする先の部署や業務の振れ幅がとにかく大きいです。分野の違いもありますが、なにより取り扱っているイシューが抽象的でマクロすぎる。入社して10年経っても、何がなんだかわからない状態に放り込まれることはよくあります。
こうした環境下で先輩たちから学んだサバイバルスキルは、それぞれの職場にて「業務の全体像はどうなっているのか」「その中で確実に抑えるべき要点はどこか」「それぞれの要点で抑えるべき有識者は誰か」を早急に把握して、要点は周囲を頼りつつ着実に遂行、その他の細部は自分で業務を進めながらキャッチアップしていくということでした。加えて「知らないことがある状態に慣れる」ことの大切さも教わりました。
昨年末に10Xに入社した自分でしたが、入社直後はまさに何がなんだかわからない状態でした。SlackやNotionの使い方がど素人で、プロダクトや小売業のドメイン知識もゼロでした。当時はオンボーディングの仕組みはなく、コロナも相まってフルリモートの中、とりあえずドキュメントを漁って情報をキャッチアップしつつ目の前のタスクを消化していました。
入社して1週間後、自分がアサインされていたプロジェクトで大きなシステム障害がありチーム全員で対応に追われることになりました。メンバーはそれぞれの持ち場で対応に追われているため、自分のオンボーディングを用意してもらう余裕はありません。そんな中でも自分の役割を果たすことができたのは、まさに前職で学んだ「知らないことがある状態での立上がり力」のおかげでした。
立上がり力というと安易に聞こえるかもしれませんが、高い次元でこれまでの自分をunlearnして事業や組織にフィットできる力は希少価値のあるスキルだと感じます。
刻一刻と変わる環境で関係者をまきこみ推進する
パブリックセクターで働く中でもう1つ学んだのはステークホルダーマネジメントです。完全な同義語ではないですが、しっくりくる言葉でいうと調整力です。
パブリックセクターでは業務が及ぼす影響範囲がとても広い(場合によっては国民全体)ので様々な角度から確認が入ります。関係する全てのステークホルダーの利害を把握して、どこにどの順番で通していけばミッションを最短で達成できるかを考えて実行することが担当者には求められるのです。
スタートアップでは事業や組織が目まぐるしく変化します。事業にブレーキをかけて安全性確保に大きく舵を切ることもあれば、顧客の担当役員が変わり事業を加速させる意思決定が下されることもあります。社内の組織体制が半年の間に3~4回大きくガラッと変わることもあります。1週間前の前提が週明けにはガラっと変わっている。そんな中でも事業を推進するためには、そのときどきの状況に応じて柔軟に立ち回りつつ、関係者の頭にあるアジェンダを察知してうまく巻き込む必要があります。
スタートアップに来て周囲を見渡すと、必ずしも皆が当たり前のようにできることではないことを知りました。入社して3ヶ月が経った頃「なぜこれだけ多様な関係者がいるのにスムーズに巻き込めるの?」とCorporateのメンバーに聞かれたこともありましたが、パブリックセクターではむしろそれが必須のスキルだったということをその時実感しました。
調整力というとジェネラリスト的で誰でも出来ることのように受け止められがちですが、公的な職場で皆さんが息を吸うように行っているそれは十分価値のあるステークホルダーマネジメントというスキルだと感じます。
愚直にコトに向き合う
最後も、公的機関で働く人からしたら当たり前かもしれません。この1年間10Xで働いてきて感じた最も大切な力は「コトに向き合う力」です。いわゆる「ミッションドリブンである」と近しい概念かもしれません。
公的機関で達成すべきミッションの抽象度は高く、日々の現場業務と距離があります。売上が伸びる・案件が獲れる、といった短期的でわかりやすいKPIはなく、国民生活の安定や国力の増強といったミッションを念頭におきつつ日々の業務にあたる必要があります。官庁や政府系機関に勤める友人と話しているとみんな根底には自分が共感するミッションを持っていて、だからこそどんなに逆風にあっても踏ん張って情熱を燃やしている人が多いです。
スタートアップは、メンバー全員が全力を尽くして初めて最速で最大の成長を遂げられるシビアな環境です。そこでキーとなるのはメンバー1人1人が事業のミッションに正面から向き合って、成長のために必要なことならなんでもやるといった利他的な精神を持てるかだと実感しています。
自分の社内におけるポジションが気になったり、他人との競争を意識したり、個人的なこだわりを捨てきれないことだって人間なら誰しもあります。そんな中でも愚直にミッションと向き合って誠実でいられるメンバーが1人でも増えると事業の歯車が一気にまわり始めることを10Xで目の当たりにしました。
データ分析・スプレッドシート・プロジェクトマネジメントなどのスキルはある程度は学べば身につけられますが、「コトに向き合う力」は一朝一夕には身につきません。前職の同僚や官庁の友人たちはこの力を持ち合わせていましたが、それ自体が世の中でとても貴重なスキルだと感じます。
ここまでスタートアップにおいてパブリックセクター出身者が発揮できる強みを書いてきましたが、最後に、自分が外に飛び出して直面した一番のチャレンジも書いておこうと思います。
意思決定の打席にどれだけ立っているか
公的機関で働く担当者が自分の裁量で意思決定をくだす場面は限りなくゼロに近く、上席の判断を仰ぐことが多いです。そうした環境で仕事をしてきて自分に染みついたのは「正解を探す」という動きでした。徹底的にリサーチして、抜け漏れがないことを確認し、あらゆるステークホルダーへの影響も勘案したうえで案件の進め方の承認をとる。関係者にどの角度から見ても「問題ない」と認識してもらってはじめてコトを前に進められるのです。
そんな自分がスタートアップで働いていて実感した一番のギャップは意思決定力でした。入社当初は、案件を進める際に皆がそうだよねと言うまでエビデンスを集めていました。しかし、この1年間での学びは意思決定そのものがコトを前に進めるという事実でした。そもそもスタートアップが向き合っているミッションには「正解」のルートなどありません。誰にも見えていない「正解」を証明することに拘るよりも、限りある時間の中でメンバーがそれぞれの持ち場で意思決定をしてコトを前に進めて、より早くPDCAを回していくことこそが事業として重要なのだと実感しました。
意思決定をすれば、結果責任も自分に跳ね返ってきます。でもそうしたフィードバックを受けた時にこそ次への成長が感じられます。ぜひスタートアップに飛び込まれる方には、このチャレンジをポジティブに実感してもらえればなと思います。
最後に
誤解してほしくないのは、自分の想いは決してパブリックセクターの若手に外に飛び出してもらいたいというものではなく、自分の可能性を少しでも知っておいて欲しいということです。というのも「選択肢があること」と「選択肢があることを知っていること」との間には大きな違いがあると思うからです。選択肢を知ったうえで、それでもパブリックな仕事で情熱を燃やす人、民間に飛び出してちがう形で世に貢献する人、民間で得た知見をパブリックに持ち帰る人、いろんな人がいて良いと思います。重要なのは、情熱を燃やしてコトに向き合えているかという点に尽きるかなと。
この記事を読んで、少しでも自信が湧いたという人が一人でもいてくれたら嬉しいなと思います。
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終わり