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半熟小説 | 詐欺から出たマコト


この小説は、まだ半熟状です。

登場人物もストーリーも固まっておりません。
2024年9月2日から考え始めたばかり。

ですので、ずっと先の章の一場面だけが書かれていたりします。

順番に話が進むわけではないため、創作途中の様子を見て楽しめるかただけご購入ください。

完結した小説ではありません。
つまり、書きかけです。

エピローグを起点にして、ある交通事故の日まで日々を、さまざまな立場の人が辿ります。

主人公の一人は、65歳の独身男性です。仕事に誇りを持って生きてきた主人公の翁丞が、ある事件をきっかけにノンフィクション小説を書くことを決意します。

翁丞は、自費出版した紙の本を追うことで事故のマコトに迫っていくのです。

事故後に亡くなってしまった関係者もいて、翁丞や遺族の探しているしんじつは、そう簡単に姿を現さなくて…。



⚠️ご注意ください!





俺の小説に興味がある奴なんているのか?


エピローグ


一体、いつ何がどうなるって言うんだろう。

あからさまな作り話に辟易した翁丞おうすけは無言のまま黒電話の受話器を置こうとした。

「ちょっと待ってください。貴方様の作品を何度も拝読した上でのご提案なんですよ。」

ずいぶん流暢に嘘が出る人間がいるもんだ。それにしたって、俺の実話はなしなんか誰も読んじゃいないはずだが。

会員数800万人を超える小説サイトで、三年前まで定期的に新作を投稿していた黒岩翁丞は、どこで個人情報が漏れたのか記憶を辿っていた。

サイト投稿ではらちがあかないと思ってコンクールに何度か応募したこともあったが…。そういえば一社、倒産した老舗の出版社があった。いやいや、あの会社は個人情報を漏らすほど落ちぶれてはいない筈だ。かつての社長や名物編集者達は皆、新たに会社を起こしたり随筆家に転身して活躍してるのをテレビやネットニュースで見かける。

「作品って、どういうことなんだ?おまえさん、どこから電話してる?新手の詐欺じゃないのかね。おかしいだろ。初めに三十万いるだって?こっちが年寄りだからって舐めてんだろ。」

コホン、コホンとわざとらしく咳払いした後、30代と思しき女が綺麗なよく通る声を創り、程よいテンポを保ったまま話し続けた。

「皆様、初めはそう仰るのです。けれども、大手出版社様なら作品の著作権はあってないような扱いになりますよ。改編、加筆という名の原作軽視。更なる映像、コミック展開により、元の素晴らしい作品世界は殆どなくなってしまう。それでも構わないのですか…。そのようなプライドのない西園寺様ではないですよね?」

確かに映画によっては原作の良さがなくなって別物になるケースもなくはないが…。

西園寺とペンネームで話を進める女が、本名や住所まで手に入れているのではないかと、翁丞は強い語気とは裏腹に不安を募らせた。

「そうは言っても、原作が再注目されれば原作者は報われるだろう。印税が入れば、次の作品だって書く余裕ができるんだ。それのどこが悪い?改稿はプロなら当たり前だろうが。本当に出版社の人間なのか、お前さん達は。」

横からヤイヤイ言う女もまた三十前後のようで、声が若い。どうやら電話の主は操り人形に過ぎないらしい。反論が浮かばなくなると電話を手でおおいアドバイスを求めているようだった。

「そんな茶番に付き合うほど暇じゃないんだ!切るぞ。」

「ま、待ってください!西園寺様の『リコール隠し』は、ノンフィクションなんですよね。このまま真実が闇に葬られても構わないのですか。更なる犠牲者が出てもいいのですか。」

なんだと?本当に俺の小説を読んだというのか?

大阪のしがない町工場を退職してからは、もうディアフォーユー社の報道は追わないと決めて、新聞もニュースも見なくなっていたのだが…。何かまた良からぬことが起きたのだろうか。

「何があったのか、詳しく聞かせてもらいたい。出版の話はそれからだ。」

電話越しにも、女二人の喜びは伝わってきた。俺は三日後の午後2時に、県庁前のカフェで会うことにした。


第一章 女二人の正体

「申し遅れました。私共は、新聞記者とジャーナリストでして。」

地元新聞社の名刺を丁寧に差し出す女は、電話していたほうではなさそうだ。俺が毎日の日課に読んでいる新聞にこの女の文章も入っているのだと思うと、なんだか100%疑いの目を持つのも違うのではないかという気がしてきて、我ながら現金なものだと可笑おかしくなってきた。

「どうしても西園寺さんに会ってお話したいことがあったものですから。出版なんて嘘をついて申し訳ありません。」

電話の時とは打って変わって、二人とも静かに俺を認めた。

「実は私達姉妹は、あの事故の遺族なんです。」

「な、なんと今⁈」

「この写真は、ディアフォーユー社のバスに轢かれ亡くなった私達の家族です。」

新聞記者だという姉が、七五三の時の写真とおぼしき着物姿の三人を見せてくれた。お寺の立派な門前で、輝くばかりの男の子を左右から笑顔の父親と母親が手を繋いでいる。大事な我が子の節目を祝う幸せな家族。

それなのに…あの事故が全てを奪ってしまったんだ…。

俺が封印してきた忌わしい記憶が、脳内で次から次へと噴き出し始めている。

「確か弟さんは、マコトさんでしたね。誠に申し訳ないことを…。」

俺が起こした事故でなくとも、あのバスの部品は俺がいた町工場で製造していた。しかも、あのバスの販売会社はリコール隠しが後に発覚している。それを、俺や子会社の人間がいくら訴えても、ないものにしてしまったんだ。大企業様がな。いや、俺に力が足りなかったから、事故が起きてしまったとは言えないか。仕方なかったなんて言うのは言い訳に過ぎないのではないか。


「お二人は、どうやって私の本を入手したのですか。自費出版で、身内と友人にしか配っていないのですが。」

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