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当時の彼(今夫)「結婚したい」私「結婚願望ない」→結婚に至るまで【4終】

<前回のエピソードはこちら>

前回までのあらすじ
結婚願望がなかった女が結婚願望ありまくる男と結婚することに決めました。


「俺としては付き合った以上責任を取りたい。二人で話し合って行動して、もし結婚を避ける理由が一つもなくなったら、結婚を考えてくれないか」
当時の彼氏(今夫)の問いに対して、「わかった」と私は答えた。そして結婚した。

あれから4年経ち、私たちは子供に恵まれて3人家族になった。

結婚も出産もすまいと幼少期から決めていながら、結局その2つを経験した私は、本当に両方やってよかったと思っている。その機会を与えてくれた夫にも子供にも感謝している。

結婚したいけど相手がうなずいてくれない方がもしこの記事を読んでおられたら、元結婚したくない側の人間として、お伝えしたい。
自分が結婚を焦っているのに、相手の反応が微妙だと「なぜ結婚してくれないのか。私のことが大切ではないのか」と悲しくなるかもしれない。(実際私の夫は、私に「結婚は嫌。事実婚でいいじゃん」と言われてめまいがしたらしい)

だが、相手は別にあなたが大切ではないから結婚したくないわけではない。なにがしかの理由で結婚にいい感情を持っていないだけだ。悲しくなって投げやりになる前に、結婚への印象とパートナーへの好意とは無関係であることを念頭においてほしい。例えとして的確かわからないが、結婚したい側の問いはしたくない側からすると、「私は犬好きなのに、どうして犬を一緒に飼おうと言ってくれないの? 私のこと好きじゃないの?」と聞こえている。犬好きな君のことは好きだけど、ワンちゃんは別に飼いたいとは思わないんだよなぁ、というわけだ。パートナーへの愛情と犬への飼育意欲はまったくの別物である。「どうしてワンちゃんを好きになってくれないの!」と責めても仕方がない。それは相手が人生を通して醸成してきた価値観だからだ。

結婚したくない人がそう考える理由は様々だろう。縛られたくない、両親が不仲だった、結婚制度への懐疑がある、あるいは、私のように身内から結婚をするなと家訓として教わってきた、なんて人もいるかもしれない。ただ、話をはぐらかさずに「結婚をしたくない」と表明する人間は誠実であると私は思う。私だって、結婚を打診された時「そうだねーいつかできるといいねー(棒)」と愛想笑いすることは可能だった。だが、それをしたら彼氏(今夫)に中途半端に期待させてしまい、最終的には傷つけると考えたがために本音を伝えたのである。破局しても仕方がないと覚悟したうえでだ。

そんな私のごとき結婚願望なしな相手とどうしても結婚にこぎつけたいなら、相手が勝手に結婚に乗り気になってくれる日を期待すべきではない。そんな未来はほぼ確実に起こらない。ならどうすればいいのか。

相手に結婚のもたらすメリットを説き、デメリットをなくすために何ができるか話し合うことに尽きる。
犬好きではない相手と犬を飼うなら、犬を好きになるよう訴えるのではなく、犬を飼ったら防犯になるとか、散歩に行くので運動になるとか、利益を伝えるのと一緒だ。併せて、犬が臭いならシャンプーするよ、とか、怖いなら小型犬のおとなしい子にしよう、とかデメリットを減らす工夫も話し合おう。
夢がないって? そうかもしれない。でも、結婚したらそこに迫るのは実際の生活である。生活費をどうするのか、子供をどうするのか、仕事はどうするのか、どこに住むのか、真剣に話し合う機会はいくらでもある。私と彼氏(今夫)も、包み隠さず意見を述べ合ったものだ。「あなた貯金少なくない?(私)」「子供が欲しい(夫)」「転職してほしい(私)」「住む場所は絶対あそこがいい(夫)」「子供を産むとしても育休は二人で取らなくちゃ嫌。じゃなきゃ産まない。というかやっぱり産むのは嫌(私)」etc。予行演習だと思って、互いの意見を述べ、解決策を探り合ってほしい。それができないなら、結婚してもうまくいかない。

ちなみに、結婚を打診したら「結婚したくない」ではなく「今は忙しくて考えられない」「いいね、いつかしようね(あと放置)」と答えをはぐらかすような相手は、残念だが絶対にやめた方がいい。相手の真剣な問いに真摯に答えられない人間を人生の伴侶にするのはリスクしかない。私の周りにも、こういう手合いに引っかかってしまった人が男女問わず何人かいる。互いの価値観の差を直視できずズルズルと苦しい関係のまま日々が過ぎるのは、結婚できないこと以上に遥かにマイナスだ。人生は1度きりなのだ。

結婚したくない側の方がもしこの記事を読んでおられたら、私は手を握って「めっちゃわかるー!!」と叫ぶことだろう。

そりゃそうだ。家族がいれば、風呂やトイレひとつとっても、自分が入りたいときに誰かが入っているかもしれない。一人の気楽さに比べたら、結婚生活のなんと面倒くさいことか。好きな時に好きなことをやって、好きなところに出かけて、会いたい誰かに会う、それができなくて何が楽しいっていうの?

だが、結婚しないと固く誓っていたかつての自分に言うつもりで書く。少し立ち止まって考えてほしい。「好きな時に好きなことをやって、好きなところに出かけて、会いたい誰かに会う」とは言うが、その好きな物事への情熱はいつまで続くのか、と。何かがきっかけでこれまでの価値観が大いにひっくり返ってしまった経験は、だれしもあるはずだ。人間は変化するし、飽きる生き物なのだ。10年前と現在で寸分たがわず同じ価値観だっただろうか。であれば、10年後も同じなわけがない。

また、上と少し矛盾するかもしれないが、人は変化するくせにそれを嫌う生き物だ。未知な物事は恐怖にもなる。結婚は、「明日からアメリカ出張ね。当面日本には帰れないよ」みたいな大きな変化だ。新天地にわくわくする人もいれば、アメリカで暮らすとはいかなるものか知らないがゆえに拒絶する人もいるだろう。今だから思うが、私は結婚そのものを忌避していたのではなく、どんな生活になるかまったく創造の外だったことを恐れていた。だが、未知なる世界に飛び込んで初めて新しい視野が開けることだってある

結婚する気がない側の方は、もし真剣に相手が結婚を打診してきたら、ぜひ現在の自分の価値観にとらわれずに検討してほしい。相手の言い分を聞き、自分もなぜそこまで結婚が嫌なのか、どうしたら相手と合意形成できるか向き合ってほしい。結婚しろと言っているのではない。相手の真剣な思いには真摯に対峙してほしいのだ。70億人も人間がいるこの世の中で偶然出会い、互いに好意を持っている稀有な間柄なのだから。向き合った結果、やはり結婚は難しいねと結論が出ても、それがその二人にとって最善であったといえよう。

結婚したくない側、結婚したい側、双方にとって重要なのは真剣に話し合うことだ。感情的にならず、問題に対する解決策を探り、合意がどこかで形成できないか、互いに話し合って考え抜いてほしい。それで得た結論なら、結婚しようとも、事実婚になろうとも、お別れすることになろうとも、宙ぶらりんで本心を出せない関係が続くよりずっといい。

以上、結婚願望がなかった人間が結婚して4年経ったので書き連ねてみました。今までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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