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でんぷんは何が原料? 小麦でんぷんを使う目的は?

こんにちは。

グルテンフリー生活をしているので、原材料欄やアレルゲン表示を常に気にしています。多くの加工食品のアレルゲン表示欄には「小麦」の文字がありますが、小麦を使っているのが「しょうゆ」や「みそ」だけの場合、仕込みの段階で含まれていたグルテンは分解されてなくなっているので、グルテンフリーと判断して購入します。ところがアレルゲン表示に「小麦」と書いてあり、かつ「でんぷん」や「加工でんぷん」が使われている場合は、ちょっと厄介です。今回はこの問題にいて解説していきます。

でんぷんの原料はさまざま、一括表示では何が原料かわからない

原材料名に「でんぷん」や「加工でんぷん」と書いてありますが、多くの場合、その原料が何かわかりません。国内で製造・使用されているでんぷんの原料を調べると、次のようなものがありました。
・とうもろこし(コーンスターチ)
・馬鈴薯でんぷん(片栗粉)
・甘藷でんぷん(さつまいもでんぷん)
・小麦でんぷん
・米でんぷん(ライススターチ)
・タピオカでんぷん
・サゴでんぷん(さごやしでんぷん)
・緑豆でんぷん
・葛でんぷん(本葛粉)
・わらびでんぷん(本わらび粉)
・片栗でんぷん(カタクリの根から採ったでんぷん)
このうち、食物アレルギーが起こりやすい特定28品目に該当するのは「小麦でんぷん」だけです。ですから、「でんぷん(小麦を含む)」とか「加工でんぷん(小麦由来)」と書いてあれば、小麦でんぷんが使われていることがわかります。

問題となるのは、いわゆる一括表示です。原材料欄に、「○○、✕✕、でんぷん、△△、しょうゆ、◇◇、(一部に大豆、小麦を含む)」という表示をすることが認められていますが、この場合、でんぷんに小麦成分がふくまれているのかいないのか判断できません。小麦でんぷんが含まれていそうな食品か、もし含まれていた場合どれくらいの量か、を推測して、食べる、食べないの判断をするしかないのです。これは、店頭でできる作業ではありません。ただでさえ小さな字で書いてあるのを、一つ一つ読み取って、その場で考えるのは無理です。このブログでも何度か書いていますが、原材料欄を見て、食べられるかどうかを判断する人にとって、一括表示はあまりにも不親切だと思います。

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小麦でんぷんとは何か、何の目的で使われるのか

先日パッケージに「国産米粉100%」と書かれていたスナック菓子を購入しました。食べようと思って念のため裏の原材料表示を見ると、でん粉(小麦を含む)と書かれていました。ライススナックに小麦成分を使う理由がわからないので、小麦でんぷんについていろいろと調べてみました。

まず小麦でんぷんは小麦粉から採ったでんぷんで、「浮き粉」とも呼ばれるそうです。製法は後ほど説明します。でん粉の粒径は1~40µmで、片栗粉やコーンスターチよりも細かいそうです。また粒径が2~10µmの「小粒子」と、粒径が15~40µmの「大粒子」の2種類が混じっていることも特徴なんだとか。業務用がほとんどで、一般用にはほとんど出回っていません。

小麦でんぷん

でんぷんに水を加えて加熱すると、粘り気が出ます。このことを糊化(こか)といいます。小麦でんぷんは他のでん粉と比べて、
・糊化し始める温度が高い
・糊化すると、保水性が高く、添加した食品はソフトな食感が出る。
・でんぷんから水が抜けにくい。
・加熱・撹拌に対して安定している。
・耐塩性、耐酸性がある。

という特徴があります。そのため、さまざまな加工食品に使われていることがかわりました。主な使用例とその使用目的は次の通りです。

●水産ねり製品(かまぼこ、ちくわ)
・弾力性、歯ごたえとソフト感ある食感をつくる。
・でんぷんが老化しにくいので、時間が経っても食感が変わらず、固くならない。
・食品からの離水が起きないので、賞味期限が長くなる。
・小麦でんぷんが白いので、食品の色を白くする。
・増量効果。

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●魚肉ソーセージ
・製造時に行う高温殺菌処理(レトルト処理)に対する耐性を高める
・食感を改良して軟らかくする。
・長期間保存したとき、でんぷんの老化が起こりにくいので、粉っぽくならない。
・長期間保存したときの離水を防ぎ、賞味期限を長くすることができる。

●小麦粉を使ったビスケット
・原料の小麦粉のグルテン量を減らし、ショートネス(もろさ、砕けやすさ)を増す。
・製品の形状をよくして、彫刻を鮮明にする。

●小麦粉を使ったショートケーキ(小麦粉:小麦でんぷん=5:1)
・きめが細かくなり、ソフトに焼き上がる。
・口溶けがよくなり、ボリュームがアップし、焼き上げ後の収縮がない。

●ハンバーグ、ミートボールなどの食肉加工品
・結着性・保水性の改良、離水防止、食感改良、増量効果。

●卵加工品(だし巻き卵、錦糸卵)
・食感改良、結着性、保水性の向上、増量効果。

●小麦粉を使うめん類(小麦粉:小麦でんぷん=10:1)
・食感改良、透明感の増大、増量効果。

これ以外にも小麦でんぷんが使われている加工食品には、ソフトビスケット、米菓、せんべい、スナック菓子、かりんとう、ウェハースなどがあるそうです。小麦でんぷんは法律上はあくまで「食品」の扱いなので、原材料表示でも「食品」のところに書かれていますが、使用目的、使用方法からすると、明らかに食品添加物です。

せんべい

小麦でんぷんの製造方法とグルテン量

実は、小麦でんぷんは、小麦粉から麩の原料であるグルテンを製造した際の副産物です。副産物というと、小麦でんぷんに対して失礼かもしれません。グルテンも、小麦でんぷんも立派な製品ですよね。あるメーカーのホームページに載っていた製造方法は、小麦粉に水を加えてこねて生地を作り、これを水の中で揉み洗いして、水の中に溶けだした粉を集めたものが、小麦でんぷんとして売られているそうです。これはMartin法というそうですが、これ以外にも、乾式法、化学処理法、酵素法などがあるそうです。

7でん粉が水に溶けだす

小麦粉に含まれるたんぱく質には、水に溶ける水溶性のものと、水に溶けない不溶性のものがあります、グルテンは不溶性なので、この製法で作った小麦たんぱくには、ほぼ含まれていないと思われます。ちなみにこのメーカーの小麦でんぷんに含まれるたんぱく質は、製品により差がありますが、0.2~0.87%でした。あくまでも推測ですが、このたんぱく質は水溶性のものがほとんどではないかと思います。

小麦でんぷんにどれだけグルテンが含まれているかについては、実際に測定してみないとわかりません。メーカーによって製造方法も異なるようですし、小麦でんぷんの規格というのもなさそうです。

まとめ

・でんぷんの原料はさまざまありますが、このうち食物アレルギーが起こりやすい特定28品目に該当するのは「小麦でんぷん」だけです。いわゆる一括表示で書かれている場合は、でんぷんが小麦由来なのかどうか、判断できない場合があります。
・小麦でんぷんは小麦粉からグルテンを製造するときの副産物で、他のでんぷんとは違った特性を持っています。そのため、食感改良、色調の改良、増量や、離水防止やでんぷんの老化防止に伴う賞味期限の延長を目的に、さまざまな食品に使われています。法律上は食品の扱いですが、使用目的は食品添加物です。
・小麦でんぷんに含まれるグルテン量は、小麦粉に含まれる量よりも少ないことは間違いなさそうですが、具体的にいくらかはわかりません。あるメーカーの小麦でんぷんのたんぱく量は0.2~0.87%ということがわかりましたが、この大半はグルテン以外の水溶性たんぱく質と推定されます。


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