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それって本当に小麦アレルギーですか?

こんにちは。
お腹の調子が悪かったり、ニキビ・吹き出物が治らなかったけれど、いろいろ調べて小麦を食べるのをやめたら症状がよくなった、という話をよく聞きます。

お腹の不調のときは、内科や婦人科を、ニキビ・吹き出物のときは、皮膚科を受診したかもしれません。先生、何が原因なんでしょう? というあなたの質問に、ドクターは何と答えましたか?

「う~ん、わかりませんね。ストレスかもしれませんね。」
「2週間分、お薬を出しておきますから、様子を見てください。」

と、言いませんでしたか?

そして、お薬を飲んでも、一時的に症状を抑えるだけで、根本的な治療にはならず、ネットでいろいろ調べた結果、小麦が原因ではないかと思い、小麦を抜いた生活をしている・・・という方が多いのではと思います。

小麦を抜いたらよくなったので、わたしは小麦アレルギー?

ここからが本題です。
小麦を抜いた生活をして、症状がよくなった方は、自分が小麦アレルギー、あるいはグルテンアレルギーだと思っておられるのではないでしょうか。
そして「小麦」が原材料に含まれている食品を、厳密に避けている方も少なくないと思います。

病院で小麦アレルギーと診断される人は1000人に4人程度で、それほど多くありません¹⁾。ただ小麦アレルギー以外にも、小麦が原因で体に不調をきたす病気や体質があり、本人が気づいていない場合も含めて16人に1人くらいいるのではないか、といわれています²⁾。

食事に悩む女性

医師の診断を受けないで、自主的に小麦フリーやグルテンフリーの食生活をしている人の多くは、小麦アレルギーという病気ではなく、おそらくノンセリアックグルテン過敏症といわれている症状ではないかと思います。ノンセリアックグルテン過敏症は、2000年以降に欧米で報告されるようになった症状で、診断基準が確定しておらず、また日本でこの病名がつくことはありません²⁾。ノンセリアックグルテン過敏症は、遅延型アレルギーなので、アレルギーには違いありませんが、小麦アレルギーとは発症メカニズムが全く異なります。この違いをよく理解していないと、小麦を必要以上に避けることになり、不自由な生活を送ることになります。

アレルギーってそもそも何のこと?

アレルギーとは、病原菌や化学物質に対する抗体が体内にできて、抗原抗体反応が起き、からだに過敏症状が起きることです。この中には、即時型遅延型があります。一般的に病気で「アレルギー」という場合は、即時型アレルギーのことを指します。小麦アレルギーを含む食物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎は、即時型アレルギーです。

アレルギーどれ

一方、上で説明したノンセリアックグルテン過敏症や、同じくグルテンが原因で起きるセリアック病は、遅延型アレルギーです。遅延型アレルギーには、ウイルスによる免疫や、輸血による不適合も含まれますので、非常に広い概念です。
さらに余談ですが、自分で勝手にアレルギーを名乗っている場合もありますよね。小麦が嫌いという人は、あまり聞いたことがありませんが・・・

小麦アレルギーかどうかを簡易的に確認する方法

症状が現れるまでの時間
まず小麦を含む食べものを食べてから、不快な症状が出るまでに、どれくらいかかりますか。数分~数時間で症状が出る場合は、小麦アレルギーの可能性がありますが、そうでなければ、小麦アレルギーである可能性は非常に低くなります。

発作女性2

どんな症状
また、どのような症状が出ますか。皮膚症状を例にとってみてみましょう。小麦を含む食べものを摂ってから、数分から数時間で、じんましんが出る、という場合は、小麦アレルギーの可能性が高いです。これに対して、翌日以降にニキビや吹き出物が出る、という場合は、小麦アレルギーではありません。

最終的な確認はIgE抗体検査
あなたが小麦アレルギーかどうか知りたい場合は、病院でIgE抗体検査を受ける必要があります。小麦アレルギーは、小麦に含まれるたんぱく質がアレルゲンとなり、体の中に存在している特異的IgE抗体と反応することで、マスト細胞から化学伝達物質が放出されることによって起こります。ですから、小麦の成分に対する特異的IgE抗体が体の中にどのくらいあるかを調べれば、あなたが小麦アレルギーかどうか、わかります。

IgE抗体検査

検査をすれば、何らかの結果が出ます。でもその結果をどう解釈して、どのような対処をすべきかの判断は、お医者さんに任せてください。特にIgE抗体検査では、複数の食品に対して陽性の結果が出ることがよくあります。陽性になったものをすべて食べないことにすると、かえって健康を害します。ネットで購入可能な検査キットもありますが、検査は病院で受けて、お医者さんから、食事や生活についてのアドバイスを受けることを強くお勧めします。この検査は保険適用です。
なお、クリニックによっては保険適用外のIgG抗体検査IgA抗体検査を勧める場合がありますが、日本アレルギー学会と日本小児アレルギー学会が診断的有用性を否定していますのて、注意してください³⁾。

小麦アレルギーとそうでない場合は、食生活が根本的に違う

小麦アレルギーの場合は、少量のアレルゲンでも、アレルギー反応が出る場合があるので、小麦を含む食品は、基本的にすべて避けることになります。どの程度避けるのかは、その人の症状によります。症状が重い場合は、小麦が入っている食品は完全に抜く必要がありますが、その場合でも、しょうゆ、みそは食べても大丈夫といわれています⁴⁾。人によって症状が異なるので、何を食べてよいのか、何を食べてはいけないのか、は、お医者さんの指示に従ってください。

小麦アレルギー以外の場合、すなわち、遅延型アレルギーが起きている場合は、体の中に入った小麦またはグルテンの量と症状は比例することが多いです。つまり、たくさん食べると症状が出て、少しなら症状は出ない、という場合がほとんどです。ですから、自分はどれくらいなら小麦を食べても大丈夫か、という距離感をつかむことが大切です。

グルテンフリーにしたけど、調味料が大変、という声をよく聞きます。しょうゆに小麦が原材料として使われているので、ポン酢も、めんつゆも、小麦が入っていることになります。でも、調味料に含まれているグルテンの量はごくわずかです。グルテンフリーかどうかは、調味料そのものに含まれる量で判断されますが、料理全体で考えると、調味料の量はわずかなので、ほとんど心配はありません。わずかな量のグルテンを避けるためにかけるコストを、別のところにかけるべきだと、わたしは思います。例えば、加工食品を買うときに、ちょっと高いけれども食品添加物が少ないほうを選ぶとか・・・。

このブログでは、概要だけ紹介させていただきました。ウェブで詳しい解説をしているので、心当たりがある方はぜひチェックしてください。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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参考文献
1) Laurian Zuidmeer et. al., The prevalence of plant food allergies: a systematic review, J Allergy Clin Immunol, 121 (5) 1210-1218 (2008)
2) Jessica R et. al., Neurologic and Psychiatric Manifestations of Celiac Disease and Gluten Sensitivity, Psychiatr Q., 83 (1) 91-102 (2012)
3) 〔学会見解〕血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起
https://www.jsaweb.jp/modules/important/index.php?content_id=51
4) 厚生労働科学研究班、食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017 (2017)
https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/nutritionalmanual2017.pdf

まとめ

・小麦やグルテンが原因で体に不調を感じている人の多くは、小麦アレルギーではなく、ノンセリアックグルテン過敏症の可能性が高い。
・ノンセリアックグルテン過敏症は、小麦アレルギーとは発生メカニズムが異なるため、食生活における注意点が大きく異なる。
・ノンセリアックグルテン過敏症の場合は、グルテンを完全に除去する必要はなく、体調にあわせて摂取量を調節すればよい。






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