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【エッセイ】ミスド

ポンデリング…。
なんて美味しいんだろう…。

駅前の明るい日差しの当たる店内で
40歳を5歳も超えたおばさんがドーナツを頬張ってうっとりしている姿…。

…きっと悪くないはず。
誰もみてない。

それより何より美味しい。

もちもちっと前歯に当たる感触。
くにくにっと奥歯が噛み締める歯応え。
もちもちと、くにくにと、感触を楽しみながら噛んでいると心が落ち着いてきた。

土曜・日曜と週末返上でビジネス講座を受けた。
なぜなら現在の自分が不安だったから。

予想はしていたものの
内容もボリュームもハード。
そこで興奮した脳は疲れてる気持ちとは裏腹になかなか落ち着いてはくれず、
ベッドに入ってからも回転し続け
ネットで「ビジネスの始め方」なる無料の書籍を購入し、読み、アンケートに回答し、
疲れた頭脳をさらに疲れ果てさせへとへとになって眠りについた。

自分の価値、自分の在り方、自分の現在…。

理想の自分と現実の自分との隔たりにウンザリしたし、本当の自分の項目ではミュートにしたパソコンの前で声を出して涙を流した。

新手の洗脳かもしれないとどこかで思いながら、自分と向き合うってどこか気持ちいい…、自分の可能性をもっと試してみたいと深く感じていた。

興奮がなかなか覚めなくて
講座が終わった後も余韻が残りまくって
今朝目覚めた時には眠ったのか眠ってないのかわからないような体の重さとハイテンションだった。

痛めた股関節のリハビリに行き、
ほぐしてもらったり、トレーニングの指導をしてもらったりしてもその興奮は治らなかった。

夢見心地…いや、回転しすぎて
もはや働いてない頭でミスドに入った。

カフェオレとポンデリングとその他3つのドーナツを買い、自分の食べることのできる量を大幅に超えていることにも気づかず席についた。

そして。

食べた。

ポンデリング。

前歯がポンデリングを感じた時、
急にリラックスがやってきた。
もちもち。

奥歯がポンデリングをリズミカルに噛んだ時、
安心がやってきた。
くにくに。

そしたら外の景色が見えた。
あ。今わたしはここにいる。

味がわかってきた。
抹茶よりストロベリーの方が好みだな…なんてことも考えられるようになってきた。

そうだ。ミスドにいたんだ。

わたしの感情は急激に乱高下する割に
受け入れる器がとても小さい。

新しいことは好きなのに
新しいことを感じたり興味を持つと途端にバケツから感情が溢れ、頭がぐるぐるし、受けた刺激でいっぱいになって、何でもできる気がして高額な講座に申し込みしてしまったりする。

昨日は申し込みたい気持ちを
なんとかかんとか
どーにかこーにか
ぐっと堪えることができた。

なぜなら失敗してきたから。

昨日の講座が詐欺だとか効果がないとかという意味ではない。
「今わたしの準備は出来てるの?」と自分に聞けるようになったということだ。

会社をお休みして、リハビリに通う身の今、
最優先事項は体。
もともと小さいバケツを自ら負担をかけて溢れさせる意味はない。
そんなこと今のわたしを冷静に見ている人にとっては明白な事実なのに、当人のわたしはすぐ見失ってしまう。

それを昨日はグッと堪えて講座の申し込みを見送ることができた。

それでも。

受けた刺激は体に残っていて
頭をぐるぐる回していた。

自分に何ができるのか、自分の価値とは…。

そしたら
ポンデリングが私のぐるぐるを止めてくれた。

気持ちの良い歯触りが
安心と視野を取り戻させてくれた!

ありがとう!
ポンデリング!!
最高だよ!
めちゃめちゃ美味しい。

安価なのにわたしにこんな大きな効果をもたらしてくれた。

ありがとう!
ミスド!!
最高だよ!

このご時世にカフェオレおかわり自由って本当に素晴らしすぎる!

きっとまた来ます。
頭のぐるぐるがやってきた時に。
今ここにいると思い出したい時に。

そしてその時は
ポンデリング ストロベリー味を食べよう。

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