20240813 商業になじめずに
自分達の劇団の旗揚げ公演の準備をしながら、当時ちいさな事務所にも一応は所属していたのでテレビドラマのエキストラの仕事などを細々とやっていた。朝の連続テレビドラマの主演を務めていた俳優さんと一緒になったりしたものの、エキストラはエキストラなので特にこれといって会話があるわけでもなく、メイクの時間や楽屋挨拶や慣れない現場の立ち居振舞いがあんまりわからずに、ただストレスばかりが溜まっていた。
▼あるとき大きな舞台に出るようにという事務所からの命を受けて商業演劇の舞台に出ることになった。舞台に出るといっても別に台詞もないし、これまたエキストラみたいなものではあった。主演が有名な人だったので、一応事前にその人の著作を読んだりしながら準備をしていた。
▼今でもよく覚えているけれども何かの拍子にその舞台のプロデューサーの人に連絡をしたときに、人を人と思わないようなものすごくすげない返信が返ってきて驚いたりしたりもしていた。主演クラスの芸能人にはペコペコする割に、アンサンブルやエキストラの名もない人間に対してはこうも冷酷になれるものなのか、と思って“プロデューサー”という肩書きの人間に対する不信感がいやに募った。
▼稽古の時に「この距離で芸能人を見られることもこれから先あまりないだろうから」と思って主演の人の顔を凝視していたら「そんなにジロジロ見ないように」と演出助手のおじさんから注意された。芸能人なんて見られるのが仕事なのになんてケチなことを、と思ったがまあジロジロ見てみたとてさしたる発見があるわけでもなかったから、おとなしく稽古場の壁を見ていた。新宿のはずれの、商業演劇御用達の稽古場だった。
▼アンサンブルキャストの中にもその座組への参加回数などによってヒエラルキーが存在していて、なんだかよくわからないおじさんがそのアンサンブルチームのリーダーとして君臨していた。アンサンブルの一人から「あの人はさ、すごい人なんだよ！」と教えてもらったがその後どこででもその人達の名前は寡聞にして聞かないので、本当にすごい人だったのかどうか今となってはわからない。
▼舞台を観に来た事務所の社長さんから「こんな舞台に出られるなんて滅多にない経験なのだからありがたく思いなさい！」と言われて「まあ、そうはいっても真にありがたいかどうかはこの現場で見たこと聴いたことを総合して私が決めますので…」と思っていた。ずっとそんな調子だったので、私たちの旗揚げ公演を観に来た社長から「で、こんなことやっててお金になるわけ？」と言われて心がスンッとなり、翌春その事務所を退所した。アンサンブルの大部屋のなかにいたプロレスラーの方が、楽屋で生卵の白身を20個分食べていたその後ろ姿だけ、やけになんだか覚えている。
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◆日本全国の73名の方々から535,000円の応援をいただき、資金調達が無事に成功しました。ありがとうございました！！
【平泳ぎ本店 クラウドファンディングについて】
「一枚の舞台の床が、才能のゆりかごに。
野外で自由に演劇を上演できるようにするための所作台をつくりたい。」
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平泳ぎ本店／Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日（金）ー19日（日）
各日18時30分開演（17時45分受付開始・開場）
※雨天決行
於：戸山公園（箱根山地区）陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
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