20240509 小説を演劇へ。
そもそも今回の創作の前に『若き日の詩人たちの肖像』を読んでいてまず驚いたのはそこに描かれる人たちの知的なタフネスというか、ひとりひとりの教養の深さ、そこで交わされる議論の高度なこと、思想や思索が縦横に走り、そして成熟していることだった。
▼実在の歴史上の作家や俳優たちがあだ名でしれっと登場する自伝的な小説というのも好奇心をくすぐられる要素の一つだった。ちょっと調べるだけでもこうした記事が出てきたりするし、下巻の巻末の後書きにも具体的な名前が並んでいたりする。
https://ameblo.jp/go-sakura55/entry-11158691076.html
私にとって大切な作品の一つである宮本研の『美しきものの伝説』という戯曲を、なんとなく思い出しながら読み進めていった。思えばあの作品も当局からの烈しいプレッシャーに晒されながら生き抜いた文筆家たちの話だった。
▼この『若き日の詩人たちの肖像』という小説をひとことで要約するとしたら「ひとりの若者が戦時下、さまざまな抑圧を受けながら兵役に取られるまでの話」かなと思う。もちろんほかにもいろいろ切り取り方はあると思うけれども、ひとまず自分はそのように諒解した。
▼決してソフトな物語ではないけれど、今年で開闢100年を迎える築地小劇場が出てきたり、主人公が旅芸人の一座に混じって劇伴の音楽を演奏したりして、演劇の話も結構たくさん出てくることが個人的には強烈なフックとなって、ドキドキしながら読み進めることができた。
▼そして今回の私たちの野外劇の会場となる戸山公園の陸軍軍楽隊にゆかりのあるとある人物も、思わぬ形で作中に登場するのだった。それを知っていて作品を選んだわけではもちろんないから、知らず知らずのうちにいろんな偶然が重なってそうなったのだと思う。そしてそれは悪くない偶然だと思う。
▼実際のところこの小説を演劇として上演できるのかということについて、創作の序盤は私自身も半信半疑だった。堀田さんの文体のことだったり、あるいはあまりにもスケールの大きい長編小説であることだったり、懸念材料はそれなりにあったけれども今はシンプルにこれしかないだろうと思える構成にしっかりと納まりつつある。もちろんそれもただの勘違いかもしれないが、小説を読むということに正解も不正解もない。堀田善衞さんの言葉を、きちんと響かせる上演になる。必ずそうなる。
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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【チケット】
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02czx9t72zj31.html
【公演詳細】
https://hiraoyogihonten.com/2024/02/24/hiraoyogi8th_info/
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