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「この戦争を知りたければ、ウクライナを知れ」 監修新著『美しきウクライナ』の紹介

露宇戦争全面侵略局面が始まって、日本ではウクライナに対する関心が爆発的に生じた。無理もないことで、2014年のクリミア・ドンバス侵略・占領を発端とする開戦後も、日本の多くの人にとってはウクライナは引き続き「よくわからない国」のままだったからだ。多くの専門家が過去1年にわたり、戦争の推移、侵略の犠牲者、地政学的文脈やら機甲やら長射程やらの兵器、あるいは時にはウクライナ人の今の不安や望みについて語ってきた。他方で、「ウクライナとはどんな国なのか?」「ウクライナ人とはどんな人たちなのか?」というシンプルかつ、だからこそ最も大切な、問いへの答えとなるような話は、今もあまり多くない。
そんな中、世界的に人気の雑誌「ナショナルジオグラフィック」の日本語版を出版する日経ナショナルジオグラフィックの編集部から私に連絡があった。彼らは、ウクライナで国内の様々な場所を探検し、人や景色についての調査報告をするボランティア団体「Ukraїner(ウクライナー)」が出版した本のドイツ語翻訳版を見つけ、美しいビジュアルとわかりやすい記述で、ありのままのウクライナについて伝えるこのような本こそが、日本の社会に今とても必要だと思ったようだ。彼らは、ウクライナーのボランティアの1人であり、また同じようにビジュアル中心にウクライナのことを伝える『ウクライナ・ファンブック』の著者でもある私に連絡し、このウクライナーの本の監修をして欲しいと依頼を寄越した。編集者の方は、この本は、悲惨な戦地だけではない普段のウクライナ、美しい風景、「ウクライナとは何か」という問いへの答え、多様な文化や日常を伝えるのに役に立つ本だと考えているとして、翻訳へ向けた熱意を伝えてくれた。私は、願ってもないことだし、ウクライナーの一員として、仲間の努力を日本に伝える貴重な機会であり、私こそがやるべきだろうと思い、快諾した。

私は、この戦争を理解するには、武器や地政学やプーチンの「頭の中」のことだけでなく、ウクライナ自体のこと、ウクライナの人々のことを知らなければならないと2014年からずっと思っている。戦争は、その基本となるのも、最終的に勝敗を分けるのも、人の心である。侵略を受けるウクライナの人たちが、ウクライナのことを決して諦めない理由は、彼らが命をかけて守る「ウクライナ」そのものをよく見て、知らねばわからないと思う。当然ながら、ウクライナの人々の心の強さの理由は、ウクライナそのものにある。同時に、ウクライナを知ること自体が侵略に対して戦うウクライナの人々にとって大きな心の支えであると思うし(そして、心こそが大切だ)、この本で紹介される、不思議で豊かで楽しい「人と場所の物語」は、それを知った読者自身にもウクライナ風の新しい幸せをもたらすと思う。

ウクライナー著『美しきウクライナ 愛しき人々・うるわしの文化・大いなる自然』(日経ナショナルジオグラフィック)は、3月20日に発売する。16日頃には大型書店には並び始めるそうだ。多くの人の手に渡ることを願ってやまない。

日経ナショナル ジオグラフィックによる書籍紹介ページ

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