チョコザップの迷走
最近、チョコザップ(chocoZAP)が新サービスを始めるというCMをよく見ます。
チョコザップはコンビニジムを標榜し、トレーニングマシンだけでなく、セルフエステやセルフ脱毛などの設備も整え、会費は驚きの月額2980円(税込3278円)。
エニタイムフィットネスなど競合の24時間ジムの月会費が7000~10000円程度であることを考えると、衝撃の安さです。しかし、その分スタッフは不在(他の24時間ジムはスタッフアワーのみ在籍)、シャワーや鍵付きロッカーも無し、店舗によってはトイレもありません。水回りの設備がないことで清掃の手間が少なく、出店する物件も探しやすいことが運営側のメリットとして挙げられます。
昨年9月にはホワイトニング、ネイル、マッサージチェア等の新サービスの追加を発表し、今年3月には「カラオケ」「洗濯・乾燥機(ランドリー)」「ピラティス」「セルフフォト」「キッズパーク」「トレサポ」「医療連携」の7種類の新サービスを追加することが発表されました。今後は「スマートライフジム」の方向性を目指すということです。
代表取締役社長の瀬戸さんは「もっともっとコンビニエンスへ。自分と毎日がもっと好きになる。特別だったものが特別ではなくなる。そういった毎日が過ごせるように、chocoZAPはサポートしていきます」とコメントしていますが、私にはよく分からない方向に迷走しているような気がしています。
競合との差別化を図るためにサービスの拡大を進めているのだと思いますが、正直コンセプトが抽象的になり過ぎている気がします。マーケティング的に幅広いニーズに応えたいという考えがあると思うのですが、あまりにもその幅が広すぎる気がしています。
当初の「トレーニング+セルフエステ+セルフ脱毛」のサービスはカッコよくなりたい、キレイになりたいというニーズに応えるものです。その後の追加サービスの「ホワイトニング+ネイル+マッサージチェア」も前述のニーズに加えてトレーニング後のメンテナンスとしてマッサージチェアがあるのは、100歩譲って許容できる範囲です。しかし、今回の「カラオケ」「洗濯・乾燥機(ランドリー)」「医療連携」あたりは何をしたい人が来る場所なのかよく分かりません。無人運営可能で設備をシェア出来るサービスを取り敢えず何でもやってみようという感じがします。
「何でも出来るというのは何もできないので同じ」という言葉がありますが、万人向けの商品・サービスというのはコンセプトが曖昧になってしまい、結果的に誰にも支持して貰えない魅力のない物になってしまう可能性があります。
洗濯している間にトレーニングしたり、カラオケしたりすることを想定しているのでしょうが、元々他のジムと比較して狭いスペースで運営している中で更にトレーニングスペースが減ってしまう気がしますし、スタッフが居ない中でキッズスペースを設置したら散らかり放題になりそうです。このような幅広いサービスをラウンドワンのような広いスペースで提供するならともかく、今のスペースでは無理があるのではないかと感じています。
また個人的には当初の出店状況を見ていてこのビジネスモデルは大丈夫なのか?と懐疑的でした。具体的には展開を進めたエリアの中で次々に出店をしており、店舗間の距離があまりにも近いことです。ドミナント戦略によるポスティングなどの効率的な広告宣伝や、清掃や設備メンテナンスなどの巡回の効率化などはできるでしょうが、それにしても近い立地が多い気がします。私は仕事で全国色んなエリアに行きますが、密集地域では徒歩圏内に3~4店舗見かけることもあります。流石にこれは自社店舗間での競合(カニバリ)が発生するのではないかと思います。
気になって財務状況を調べてみると、下記のような状況です。
第3四半期まで売上は微増、営業利益は前期の△10億8900万円から△47億6900万円に悪化しています。自己資本比率も8.0%まで悪化しています。今年の3月には自社株を売却して資金調達をしていますが、このペースの赤字が続くようであればなかなか厳しい状況になるかと思います。決算説明会資料を見ると「chocoZAP事業」は単月黒字になったようですが、フィットネスは出店当初は物珍しさもあって入会しても継続できるかどうかがカギです。ある意味低価格だからわざわざ退会しなくてもいいかと放置されることもあり、意外と今後好業績になるということもあり得るかもしれません。今後も同社の動向を注視したいと思います。
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