『マチネの終わりに』第七章(33)
蒔野は、ようやく老人介護施設への入居が決まった祖父江が、旧朝香宮邸の庭園美術館で催されているアール・デコ展を見に行きたいというので、介添えをしながら、その話をすることにした。
祖父江はまだ会話が不自由で、展示を見終わったあとは、美術館の名前の由来にもなっている広々とした庭園を散歩しながら、蒔野が一人で喋り続けた。
「しかし、アール・デコっていうのは、パリで見るとあんなに豪華で色気があるのに、日本に持ってくると、どうしてこう貧相で、ジジ臭いんですかね? ここは相当がんば