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平野啓一郎|小説『ある男』

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平野啓一郎の最新長編小説『ある男』。愛したはずの夫は、まったくの別人であった。「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作! ーー
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#小説

【待望の文庫化!】『ある男』(文春文庫)が9月1日に刊行しました。

平野啓一郎の長篇『ある男』文庫版(文春文庫)が9月1日に刊行されました! 2018年9月の単行…

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【2022年公開】平野啓一郎の長編小説『ある男』の映画化が決定しました!

平野啓一郎の長編小説『ある男』(2018年、文藝春秋刊)の映画化が決定しました! 『ある男』…

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ある男|23−5|平野啓一郎

城戸からの報告で、彼女の心を最も激しく揺さぶったのは、一通り話し終えたあとの次のような一…

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ある男|23−4|平野啓一郎

城戸の報告を受け取った里枝は、この一年余りもの間、失われていた夫の名前が、最終的に「原誠…

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ある男|23−3|平野啓一郎

彼女は昔から、読書家という人々に一目置いていて、しかも残念ながら、自分だけでなく、前夫も…

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ある男|23−2|平野啓一郎

声変わりもして、近頃では、うっすらと髭も生えてきたようで、死んだ父親の電気カミソリをどこ…

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ある男|23−1|平野啓一郎

弁護士の城戸章良と面会した日の三日後、里枝は、このところますます部屋に籠もって本ばかり読んでいる悠人に、お風呂から上がったら、話があるからと伝えた。 里枝は先に花と一緒に入って、前歯が一本、グラつき出したという気恥ずかしそうな報告を聞いた。 「よかったねぇ。みせて? あ、ほんとだ。はやいんじゃない、クラスのなかでも?」 「うん、はとぐみでは、ひなのちゃんだけ。──あのね、はなちゃんね、きょう、ひなのちゃんって、よぼうとしたのに、まちがって、ひののちゃんっていっちゃって、

ある男|22−5|平野啓一郎

伐採して、トラックが出入りできるように開かれたスペースの奥で、オレンジ色の首の長いクレー…

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ある男|22−4|平野啓一郎

道は大きくうねっていて、時々視界が開けると、遥か遠くの下方に、先ほど通ったらしい道が見え…

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ある男|22−3|平野啓一郎

道中、城戸は、里枝の依頼で「谷口大祐」さんの遺産の処理などを手伝ううちに、林業に興味を持…

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ある男|22−2|平野啓一郎

南向きの窓から差し込む太陽の光が、通路を経て、城戸の顔を眩しく射た。それを、機内サーヴィ…

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ある男|22−1|平野啓一郎

羽田から宮崎までの二時間弱のフライトの間、城戸は、窓の外を眺めながら独り考えごとに耽って…

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ある男|21−5|平野啓一郎

香織はなかなか戻って来なかった。しばらくすると、颯太が、 「あっ、おとうさん、へんながめ…

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ある男|21−4|平野啓一郎

城戸は、下を向いて、小さな人差し指で器用にタッチパネルを操作する颯太を見つめた。自分の子供の頃に顔も性格もよく似ていると思った。彼はそのことにやはり喜びを感じていたが、颯太にとっては、将来、苦悩の原因とならぬとも限らなかった。自分は、真っ当に生きなければならないと城戸は思った。そして、この子を譲り渡すという決断を想像して、胸が張り裂けそうになった。 『俺は、それをきっと身悶えして後悔するだろう。谷口大祐のように。──しかし、原誠ではなく、別の誰かだったなら、谷口大祐の続きの