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ハワイのロックダウン中の人に対して何かできることはありますか?

さっき、facebookで「ふと見渡したら家族全員がZoomしてる」って書き込んだら、そういうコメントをもらった。

「自分に何かできることはありますか?」

ありがたい。
で、僕の中から出てきたのは「周りの人に優しくしてください」っていう言葉だった。

うちは4人家族、ハワイのオアフ島のワイキキから車で15分ぐらいのところに6年前から住んでいる。
今も家の中を見渡すと、長男11歳は友だちとFaceTimeでゲームをしていて、次男5歳はZoomで彼が大好きな友だちのママさんの誕生会をしている。妻はここから10分のところに住んでいる彼女の仕事同僚とZoomでミーティングをしている。近くに住んでいる僕の同僚であってもこの数ヶ月で会ったのは何度かだけだ。僕はもともと日本との仕事なので、ハワイの同僚にあったのは、1ヶ月前にわずか10分、しかもソーシャルディスタンスがあるからお互いにマスクをして、廊下を通り過ぎるときもお互いが壁ぎりぎりを歩く感じ。ハワイでおなじみのハグどころか、握手もしない。
学校は3月から閉鎖されたままで、一度も通学していない。一部再開されているけど、我が家の場合はフルリモート授業。

誕生会があっても、車の中からドライブイン・バースデーで切ない。
もちろん会おうと思えばこっそり会える。ハワイで感染者が多いのも、家族や親戚だとバリバリにハグやパーティーをやるからだ。ただ、本当の理由は米軍基地での感染拡大だろうけど、それは言わないお約束。

でも親戚でもないかぎり、濃厚接触はしない。法律違反だからというのと、アメリカという国は僕が思うに、それほど正しい情報が行き届かない。なのでコロナのことを必要以上に怖がっている人が多い印象。
それは医療費の問題でもある。例えばちょっとした骨折でも病院に行くと20万円ぐらい請求されるといったことはザラだ。国民健康保険に近いシステムはオバマがつくったけど、実際には保険未加入者がたくさんいる。コロナ検査は無料になったけど、とにかく病気で生活が一気に破綻する恐怖がアメリカにはある。
薬局には、DIY抜歯セットが売られている。保険未加入の人が、どうしても歯が痛いときにそれで歯を引っこ抜くのだ。
この「病院からの請求が怖い」っていう感覚は、日本ではあまり分からないと思う。

ロックダウンのルールは毎週のように変わるのだけど、他人に2メートル以内に近づいたり、マスクをしないで入店すると50万円もしくは1年の懲役になる。たまーに本当に逮捕者が出るけど、投獄はされない。そもそも刑務所でコロナ感染が拡大して、刑務所はなるべく囚人を出所させたくて恩赦が連発されている(そしてもちろん再犯率が高く、コロナを理由にした釈放は問題になっていると聞く)。

ハワイという楽園に閉じ込められて6ヶ月が経つ。ロックダウンは今2回目だ。
日本とハワイの飛行機も1便も飛んでいない。10月からANAが1ヶ月に2便だけ運行再開するという。2週間に1回だけ飛行機が日本とハワイに向けて飛ぶのだ。なんという切なさ。

今日も相変わらず天気は最高だ。
海で泳ぐこととサーフィンは禁止されていないから、海の中から気持ちいい夕日を見ることもできる(ビーチで立ち止まることは許可されていないので砂浜で寝転んで夕日は見れない)。

ダイヤモンドヘッドでも、ワイキキビーチでも、観光客はひとりもいない。沖にはローカルの人たちが波を待っている。沢山の人がサーフィンをするようになった。

ワイキキの一番にぎやかなカラカウア通りの店は、ほとんどが閉じていて、ベニア板が打ち付けられている。治安を悪くしないように、できるだけ明るい柄が描かれている店もある。ホテルのほとんどは閉鎖されているので、夜はどのホテルもほぼ真っ暗。

ハワイでロックダウンされ続けている僕らに、誰かが何かをできるのだろうか。
観光再開されたら来てお金を落としてください?
破産しそうなうちの会社を救けてください?
うーん、どれもリアリティーがない。

だったら、身近な人を救ってあげてほしいと思った。

こんなふうに医療費に怯える世界は嫌だ。
借金に怯える世界は嫌だ。
貧困問題で目を背けたいことでいっぱいな世界は嫌だ。

新型コロナの感染の強さを示す、実効再生産数(effective reproduction number)** Rt**という数値がある。

Rt=1だと、感染者1名が1名に感染させるということ。この場合は感染者は横ばいになる。
Rt=2だと、感染者1名が2名に感染させるので、だんだん倍々で増えていって、そのうち大変なことになる。
Rt=3だと、もうヤバい。あっという間にパンデミックになる。

だったら、それぞれの人がそれぞれの隣の人に優しく接したらどうなるのだろう?
Rt=4でそれが実行できれば、世界中はあっという間に優しさパンデミックで包まれる。
つまり、1人が4人に優しく接すれば、世界は一瞬で変わるのだ。

ならば、新型コロナウイルスと同じ特性を使って、世界を変えられないものだろうか?

Rt=2でもいい。それでもわずか数年で全人類の8割が感染することになる。
世界を変えなくていい。すごいことをしなくてもいい。隣の人に優しくして、その人が隣の人に優しくして、さらにもうひとりを優しくするだけで、あっと言う間にそのPay it forward(恩を次の人に返す)がパンデミックを起こし、世界に広がる。

新型コロナの特徴は、濃厚接触である。
濃厚接触とは、家族、一緒に食事をする間柄で感染する。
つまり、インターネットやマスメディアを通じて一気に数億人に伝播される性質のものではなく、きわめて原始的かつ家族的な規模でじわじわと広がっていくスモールワールド式のウイルスだ。

会う、食べる、抱きしめる。
それでじわじわと広がるウイルスに世界は怯え、巨大なシステムは今も停止したままだ。

その特性を、逆に活かそう。
新型コロナウイルスのように、身近な人たちに直接広げていくような活動をしていこう。

そうすれば、Rt=0が、Rt=1となり、Rt=4になったときに、世界は驚くほど短い期間で優しくなるはずだ。
いや・・・そんなこと夢物語だと分かっている。
でも、それを信じて行動できる想像力が、私たち人類には備わっているはずだ。

その力を信じて、小さくてもリアルなことから始めよう。
それは、目の前の人に優しくするという、極めてシンプルなことだ。
その優しさが、巡り巡って世界中にあまねく広がり、やがてハワイにも届くだろう。

2020/9/9

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