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きょうかい12号酵母について!

飛鸞の五代目蔵元杜氏をしております。
森雄太郎です。
今回は、きょうかい12号酵母(以後、12号酵母)について私なりの視点でお伝えしようかと思います。
12号酵母は、私の修行先である浦霞醸造元株式会社佐浦発祥の酵母(別名:浦霞酵母)になります。
おそらく多くの酒蔵と日本酒愛好家の皆さんにとっても馴染みのない酵母かなと思います。なぜならば現在、公には流通していない酵母だからです。

○酵母=主役


そもそも酵母とは何モノかと思われている方もおられるかも知れないので、私の独断と偏見を持って簡単に説明しようと思います。
酵母というのは、アルコール発酵の主役であり、私はいつも音楽バンドで例えるとボーカルと言っております。ボーカルが変わることで曲全体の雰囲気がガラリと変わるのと同じように、酵母が変わるとお酒の雰囲気がガラリと変わります。それぐらい酵母というのは酒造りにおいて大きな存在だと私は思っております。

そんな酒造りの主役的な酵母ですが、昔はというと、酵母は蔵付き酵母と言って蔵に棲(す)みついた酵母が酒造りに使われていました。そのため、どんな酵母がタンク内に繁殖するのか分からない何ともスリリングな酒造りを昔は行なっていたので、主役(酵母)の名前はもちろん分からない時代でした。

今では、酵母に名前が付けられてます。
「新政」で有名な6号酵母、「真澄」の7号酵母など一度は聞いたことがあるかも知れない現役の主役の方たちです。

それではいつから酵母たちに名前が付けられるようになったのかというと、、、
記念すべき第1号の酵母は、1906年に灘の「桜正宗」の酒母より分離されたそうです。
それから次々と酒造りが盛んで良酒を生み出している酒蔵から酵母が分離され名前が付けられていきました。

今回の主役である12号酵母も当時、素晴らしい吟醸造りで名を馳せていた浦霞の醪から分離され、名前が付けられたのです。

名前が付けられるだけの素晴らしいお酒を造って、その時代のトレンドとして多くの酒蔵が使用する。
歴史に名を刻めるのはほんの一握りだと思いますので、本当に素晴らしいことです。
飛鸞もいつか歴史に名を刻めるように頑張ります!(もちろん良いことで)

少し話を戻しますと、、、
最初にお伝えしたとおり、12号酵母は現在では馴染みのない酵母なのです。
やはりトレンドは移り変わっていくもので、徐々に使われなくなっていきました。
最近は、華やかで果実感がはっきりと感じられるような酵母が主役を張っている感じですね。

12号酵母の詳しい復活の経緯に関しましてはこちらをご覧ください。
↓↓↓

○酸味=悪役


12号酵母が使われなくなった理由の一つとして、酸味が出やすくなったからというのがあるそうです。
酵母も使っていくと野菜などと同じで同じ種を使っていても変異しますからね、、、性格が少し変わるといった事もあるのです。

一昔前までは酸味=悪役というネガティブな印象が一般的でした。
それは、酸が強いのは失敗(腐造)した時によく感じるものだったからです。

でも、現代は違いますよね。
ワインを飲む人が増え酸味への抵抗感も減り、何より酸のあるお酒の方が合わせやすい洋食など食文化が多様化している時代です。
日本酒も多様化して当然です。

飛鸞シリーズの一つである神楽はその酸を強調したお酒です。
神楽を造る際に目指したのは「日本酒版グレープフルーツサワー」
白麹といって本来焼酎に使用される麹を使ってるのがミソです。


↑日本酒に使用されるのは黄麹です。

白麹は黄麹には出せないクエン酸を多く生成することができます。
梅干しとかで感じる酸味ですね。

酸味について話すと大いに脱線しそうなので、また神楽について解説する機会がありましたらしっかり解説させて頂きます。

簡単にまとめると、今では許容されている酸味の強いお酒も昔は悪役として扱われていたので、酸味が出やすくなった12号酵母の使用は徐々に減っていったという事です。

○きょうかい12号酵母の復活!


私が株式会社佐浦に入社したのが、2014年のこと。
当時、浦霞の商品は主に自社で保有している菌株と宮城県で開発された酵母をメインに使用しており、12号酵母は全く使用していませんでした。
何故使ってなかったのか当時はほとんど疑問も持っていなかったですが、、
よく考えたら不思議な気もします。
よほど目指す酒質に向かない酵母なのか?
それとも、かなり扱いにくい(発酵コントロールがしにくい)酵母なのか?と色々考えちゃいますが、、

その12号酵母が令和に入り、満を持して復活する事になったのです!

発売してすぐに飲む機会があったので飲んでみましたが、
※ここからは個人的感想です。
香りはバナナ系の柔らかく穏やかな香りが中心ですが、今までの浦霞のお酒より比較的繊細な酸味の感じられるどちらかというと女性的な印象が強いお酒に仕上がってました。
今までの浦霞とは良い意味で違ったタイプで好印象でした。

浦霞の製造スタッフの方に12号酵母についてお聞きしたので、一部抜粋してご紹介したいと思います。

「12号酵母は発酵が旺盛で、醪の温度管理が難しく泡がどんどん上がってきてタンクから溢れないよう泡消し機が必要です。
※泡消し機…大型の扇風機のようなもの。タンクの上部に取り付け泡がタンクの外に溢れるの防いでいる。

香りは、酢酸イソアミル香(バナナのような香り)で一部にブドウ、マスカット、イチゴ、ソーダ水の様な爽やか香りを感じる蔵人もいます。」

とのことです。

初期の頃に発見された酵母というのは最近開発された酵母と比較して発酵力が旺盛な場合が多いです。

私も12号酵母を使ってみたくてお願いしたところ、快く了承して頂けたので昨シーズンより使用しております。ご縁に感謝です。

使用してみた感想としては、浦霞のスタッフの方がおっしゃる通りで非常に発酵力旺盛で、泡がタンク上部まであがってくる印象でした。

12号酵母の発酵の様子

酵母には「泡あり」と「泡なし」の2タイプあるのですが、私は、泡ありの生きてる感が好きなので泡ありを使用することが多いです。ただ、泡がタンク内こべり付き雑菌汚染の温床になりかねないので、日々の掃除が大変です。12号酵母は泡ありタイプで世話がかかるタイプでしたが、見ていて飽きない楽しい子でした。

今シーズンは、新商品の干支のお酒に12号酵母を使用しております。
タイトルは「HIRAN 輪廻転生 RINNETENSHO」です。

仕上がりの感想としては、
ブドウのような香り、口に含むとミカンのような柑橘系の香りが広がり、
中盤から後半にかけての綺麗な酸味が感じられる今までの飛鸞のお酒とまた少し違った印象に仕上がっております。

12号酵母使用歴2年目と言うことでまだまだ経験不足が否めないのですが、とても魅力的な酵母ですのできっと今後も飛鸞の個性を司ってくれるのではないかと思っています。

ぜひ12号酵母の魅力を飲んで感じたい方は12月25日に発売予定の
HIRAN 輪廻転生」をゲットして飲んでみて下さい。

浦霞No.12との飲み比べも面白いかもしれないですね。

お買い求めは、お近くの飛鸞特約店にてお願いします。
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