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【インタビュー】飛鸞のリーダー「森雄太郎」とは何者か? (後編)

前編では幼少期から学生時代における内容でしたが、後編では、大学生・院生時代の酒類総合研究所での研究、浦霞を醸す(株)佐浦での修行時代、そして森酒造場に戻った後にフォーカスしていきます。

後編からはより「飛鸞の原点」となる彼の研究時代・修行時代について、お話を伺いました。

飛鸞の中心人物である森雄太郎とはどんな人物なのか?飛鸞が生まれたきっかけとは?

その原点に迫ります。


醸造研究で培った経験

ーーー森さんの大学時代について伺わせてください

森:大学に入学した当初は、世間一般の大学生と同じような暮らしをしていましたね。

もちろん、バイトやサークルもしていましたし、授業も最初は醸造に関する内容ではなく、国際学、数学、化学みたいな幅広い教養科目の授業を受けていました。

バイトとかは、全く日本酒と関係なく餃子の王将で3年間ほど働いていましたし、サークルも中高から続けていたバスケをやっていました。

ーーーどのタイミングで、本格的に醸造学を学ぶことになったのですか?

森:大学4年目あたりから本格的にお酒の醸造に関する研究を行うようになりました。

広島大学の連携機関である酒類総合研究所にて学業を納める

具体的には、日本酒の代謝物が300種類あると思うんですけど、その代謝物を解析する研究を大学院まで行っていました。代謝物とは、アミノ酸や有機酸など日本酒に含まれる成分のことですね。

その成分の官能的な特徴(味わいや香り)の類似点と、実際の成分の特徴にどれほどの結びつきがあるのか、などを研究していましたね。

例えば、香りだとカプロン酸エチルや酢酸イソアミルの代表的な香り成分があったとして、実際の官能が本当に結びつきがあるのかなどを細く検証する。苦味が強いお酒があったとして、「これがなぜ苦いのか?」の要因を、成分的に検査して調べるようなことを、大学四年から大学院まで主に行っていました。

ーーーこの時の経験が無ければ、今もっと苦労されていたのでしょうか?

森:いや、そんなことはなかったと思います笑

ただ酒造りに対する見方には大きく影響を及ぼしましたね。

自然と学術的な目線で酒造りを捉えるクセがついたので、何か直感に基づいて酒質設計をしたり醸造するのではなく、あくまでも科学的に酒造りを見るようにはなりました。

もちろん、まだ科学的に解明されていない成分もあるので、その点に関しては難しいですが「この成分によって実際の味わいにどのように影響をもたらすのか?」という思考習慣は、この大学・大学院時代の研究によって身につきました。

ーーーこういった研究のバックグラウンドが、飛鸞の商品開発にも活かされているのですか?

森:そこが難しいところで、酒造りの現場だと、研究所で用意されていたような高額な設備はないので、精緻な分析はできないんですよね。まず普通の酒蔵では困難でしょう。

もちろん出来たお酒を解析することはできるのですが、それを商品開発に活かすレベルまで解析するのであれば、学生時代に行っていたような解析を行うよりも、自分の味覚嗅覚で行った方が早いですし、現実的です。

また、結局のところお酒の良し悪しを決めるのは人間の官能評価です。

飲む方が、成分通りに味わい感じてもらえるのであれば良いですが、成分が実際の味わいに必ず結びつく訳ではないので、その点が難しいところですよね。やはり最終的には官能評価が求められるという。

浦霞での3年間の修行

ーーー卒業後、浦霞で修行された訳ですが、研究を行うのと実際に酒を造ることとのギャップは強く感じられましたか?

森:そうですね。確かに教科書通りは教科書通りで、大学時代でも研究の一環として酒造りを行っていたので、酒造りについては知識として一通りは理解していました。

しかし、現場は現場でそれぞれの蔵の設備や商品の製造規模、その他にも多くの点において製造環境が180度異なるので、研究的に造ることと、現場で造ることは全く違いました

その蔵の状況や、その時のシチュエーション、造る商品、年毎に変わる米の品質、時々によって起きる問題など、さまざまな状況に応じて試行錯誤し、柔軟に酒造りを工夫する必要があるので、その経験を浦霞さんでは学ばせていただき大変勉強になりました。

ーーー酒造り以外で苦労されたことなどはありましたか?

森:有り難いことに、浦霞の皆様は本当に良い人たちばかりでして、当時は大学院を卒業したばかりの生意気な学生だったのですが、そんな自分に対してもとてもフレンドリーに接してくださり、今でも大変感謝しています。

ただ、強いていうのであれば、シーズン中は南部杜氏の組合の方がいらっしゃるのですが、東北特有の方言がかなり強く、会話の内容が理解できないことがありましたね。

質問されているのに、話の内容が理解できないから「はははは」と笑って対応して場が変な雰囲気になるみたいな笑

また、多少酒造りに関連することですが、麹作りの際に酒蔵に泊まって麹の様子を深夜1時間おきに確認しなければならないのですが、起きれずに見に行くことが出来なかったこともありましたね。

森酒造場に帰還、直面する現実

ーーー修行を始めてからいつ森酒造場に戻られたんですか?

森:浦霞での3年間の修行を終えた後ですね。

酒蔵に戻るタイミングで、自信を持てるくらいには製造に関する知識・経験を学んでいたのですが、当初は5年計画で考えていて、残りの2年間は製造ではなく営業など、ビジネスとしての日本酒を学びたいなと考えていました。

しかし、急遽実家から「戻ってきてほしい」との連絡があったので、平戸に戻らなければならないことに。

実はこの頃まで、実家である森酒造場がどのような状況だったかを知ろうともしなかったですし知る由もなかったので、完全に無知の状態で蔵に戻ったんですよね。

蔵に戻って実際の状況を知ると、かなり絶望的な状態で「この先、本当にやっていけるのか?」と感じたことを今でも良く覚えています。

まず、経営状況はかなり厳しいもので、そもそも私が蔵に戻った頃はほぼお酒を作っておらず、基本的には桶買いで賄っていました。実際に作っていたのは20-30石程度だったと思います。

加えて、製造環境も最悪の状況でした。平成初期の30年近く前から設備投資を行っていなかったため、とても古い設備しか残っておらず「そもそも動くのか…」というところから始まりました。

また、蔵の中が埃まみれでホースポンプなど含めてまともな道具や設備はなく、壁もカビが繁殖しており「この環境で酒造りをしたら、オフフレーバーのミックスジュースができてしまう…」と感じざるを得ないほど悲惨な状態でした。

なので、まず最初の仕事は酒を造るのではなく、高圧洗浄機でカビを綺麗に取ることでした。

まず清潔な環境をどうにかして作り上げ、必要な設備を補助金等を駆使して最低限購入し、酒を造ることができる環境をつくることに注力しました。

ーーーそのような状況だと誰しもが絶望してしまうと思うのですが、当時の森さんの心境はいかがでしたか?

森:それが意外と楽観的で笑

確かにすごく厳しい状況ではあったのですが、製造畑しか経験していなかったこともあって、金銭勘定が当時はしっかり出来ていなかったんですよね。今はそんなことはないですけどね!

そういった意味で、当時は厳しい状況を詳細に理解できていなかったので、良い意味で前向きになれました。

それと、もうとにかく「まずは良い酒をつくらないとダメだよな」と強く感じていたので、そのためにできることだけに集中して、目の前のことを必死に頑張るしかなかった。

なので、そこまでストレスを感じたという実感はありませんでした。

ーーーそこから、いつ飛鸞としての転機が訪れたのですか?

森:それもかなり最近のことで、3年前くらいですかね。

初年度からちょっとずつ扱ってもらっていましたが、急激に取扱数が増えていったのはその頃からで。

実は、帰ってから一度も営業したことがないんですよね。

これには理由があって「良い酒をつくれば売れる」と信じていたからです。

そう信じながら、ひたむきに良い酒を追求し続けた結果、たまたま2020-2021年のタイミングで、とある酒販店様が飛鸞を味わっていただくことがあって、その方から「特約店流通」というものがある、ということを教わりました。

その頃まで、流通について詳しく考えてこなかったのですが、当初から「お客様の顔が見える範囲内で、丁寧にお酒を売りたい」と考えていたので、特約店様をつくる形で販路を拡大しました。

最初はご紹介いただくことが多かったですが、大変有り難いことに多くの酒販店様からお問い合わせいただくようになり、どんどん飛鸞を楽しんでいただく方が増えていきました

今は今で別の大変さがありますが、当時、先が見えず大変な中よく頑張ったなと今振り返っても思っています。

これからの飛鸞

ーーー今考えている、今後の取り組みについても教えてください。

森:まずは食中酒として、食卓にあるとワクワクするようなそんなお酒をつくっていきたいですね。飛鸞があると明日が頑張れるような。

数字とかの基準は特につくらず、まずはお酒としての価値を高めていきたいです。

また会社としては、先のnoteでも話していますが「平戸に賑わいをもたらす」ことをビジョンとして、頑張っていきたいと考えています。

幼かった当時はそこまで考えていませんでしたが、やはり一度地元を離れてから戻ると「平戸にはこんなに素晴らしいものが沢山あるのか」と気付かされました。

また、酒造りにおいても飛鸞独自の価値を追求するには、平戸との結びつきが必要不可欠です。そういった意味でも、平戸が持続可能な形で今後も経済が回るよう、飛鸞を通して農業や観光などの需要を増やし、飛鸞を通して多くの方を平戸に呼び込めるようになりたい。

今後も、そのために全力で頑張ってまいりますので、応援の程何卒よろしくお願い申し上げます。

飛鸞をつくる蔵人を募集しております!

飛鸞は、国内だけではなく世界に羽ばたいていくブランドを目指しております。そのため、今まさに『人の力』がより重要になる段階に差し掛かっています。

私たちの目標は、モノづくりを楽しみながら、飛鸞というブランドを成長させていくことです。10年後、20年後には、より素晴らしい景色を皆さんと共に見たいと考えております。

飛鸞を通じて、日本酒の価値を高め、業界の常識を変えていけるような酒造りを実現できればと思います。そのために、私たちと一緒に新しい挑戦を楽しみ、共に成長していける方をお待ちしております。ぜひ、奮ってご応募ください。

応募に関して

下記の選考プロセスを経て採用とさせていただきますので、ご興味のある方はまず、こちらの飛鸞 / 森酒造場 採用フォームより書類選考にお進みください。

ご質問等がございましたら、Google Form内にある「備考欄」にご記入ください。

それでは皆様のご応募お待ちしております。

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