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【日記29】ヒーターのコード〜ずっと迷っている電車

1.14 SUN(10℃/0℃) 手のひら痛い

ヒーターのコードにつまずいて、両掌をとっさにつくも前のめりにひっくり返る。
手のひら痛い、しか言えず爆笑。

『VIVANT』を観終えた。

1.15 MON(11℃/2℃) 水星草

同僚が財布を無くしたという。
朝に、午前中探してなかったら出社すると連絡が来た。
結局見つからなかったそう。
あまりにもかわいそうだったので、「ダウジングに使う水晶を貸してあげましょうか?」と聞いたら、「普通にいらないっす」と言われた。

会社から歩いて帰った。途中でお気に入りの本屋さんに寄って、小津夜景さんの『いつかたこぶねになる日』を買う。
文庫本になった時には省かれたが、単行本では「漢詩の手帖」という傍題がついていた。学校の授業以外で初めて漢詩を読んだかもしれない。
テストに出る範囲を暗記するくらいしか関わることのできなかったことを悔やむほど、漢詩が魅力的なものだとこの本を読んでわかった。
印象に残ったのは徐志摩の「再別康橋」という詩。「ふたたび、さよならケンブリッジ」と訳され、留学先のイギリスを去るときの繊細な気持ちが描かれている。
詩の中に、「青荇」というものが出てくる。中国では見かけない草を、徐志摩がそう書いたのらしいが、張葵という人の研究によればその草は英語の俗称ではwater-starwort、日本ではみずはこべだそうで、英語の直訳で「水星草」としてみるのもこの詩にふさわしいと張葵が著書の中で述べているというくだりでキュンとしてしまった。

1.16 TUE(7℃/0℃) 写真を一生懸命やっていた頃の読書記録

ロラン・バルト『明るい部屋 写真についての覚書』を、10年前の1月16日に読み始めたという記録がとある場所に残っていた。
なんで読んだんだっけ。内容もほとんど覚えてないけど、多分、写真を一生懸命やっていたからだろう。

1.17 WED(12℃/0℃) 29年前

阪神淡路大震災から29年。
1月17日の午前5時46分。当時、6歳だったはずの自分はどうしていただろうか。
朝起きたら、もうすでにテレビの向こうは被災地だったことだけが鮮明な記憶としてある。

16時ごろ、仕事の気分転換に会社近くのコンビニへ行く。
こげめしというせんべいが1枚単位で売っているので、スタンダードなしょうゆ味とカレー味、ウィルキンソンのジンジャーエールを買う。これで生き返る。

1.18 THU(13℃/2℃) 23歳の頃

会社から家まで、なるべく歩いて帰ることにしている。だいたい1時間半くらいの道のり。
家に着く頃には、寒さと疲労で頭がキーンとして、また膝がふるふるとする。
途中、川沿いを行く。自然があり、昔よく通った江戸川沿いの遊歩道に似ていることに気づき、駆け出しの頃のことを思い出した。
椿山荘の裏手にあたるその道を、まだ23歳の僕はよく歩いた。とある出版社へ仕事の打ち合わせに行くためだ。
切ないことばかりあった一年だ。

1.19 FRI(15℃/8℃) またまた本を買う

朝、電車に乗って『いつかたこぶねになる日』を開くと、昨夜寝る前に読んでいた場所と、栞の位置が違った。どうやら栞の位置を変えないまま、パタンと閉じて寝てしまったらしい。
定型について書かれている箇所に、付箋を貼った。
定型の型はカップケーキの型でなく武術の型である。ここのくだりは心において置きたい。

小津夜景さんの本を読み終わってしまうのが名残惜しくて、同じく小津夜景さんと、そして音楽家の須藤岳史さんの手紙のやり取りで構成された『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』を買う。
須藤さんはヴィオラ・ダ・ガンバの奏者である。
ヴィオラ・ダ・ガンバといえば、『耳をすませば』の雫が歌うシーンで西司郎が使っていたチェロに似た古楽器だ。

もう一冊、土井善晴さんの『味つけはせんでええんです』を。
これはもう一行目からやられた。即買いでした。

1.20 SAT(7℃/6℃)

朝からぽつぽつと雨。
傘を差すほどでもない雨だったので、こんな短歌を思い出した。

傘を差さなくていいほどの雨が降るという気象予報士の目を見てしまう/竹中優子

竹中優子「冷蔵庫置く」(「罠と伊予柑」、2018年)

昼前に美容師の母の元へ髪を切りに。
地下鉄を乗り継ぎしたあと、さっきまで乗っていた電車が車庫に入るために、僕の乗る電車と同時に走り出し、しばらく並走した。
空っぽの電車が走っている。
そんな小説を以前に書いた。行き先を失い、乗客も乗せず、ずっと迷っている電車が登場する。

今週のアルバム

川沿い1
川沿い2
月曜に塔着。いい表紙。
寝る前に読む
これこれ、これでいつも生き返る
川沿い3 橋です。
新年会帰りの渋谷駅。もう遅い時間です。
朝からなんちゅうもん食ってんだシリーズ

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