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【日記9】からあげクン〜入院前日の思春期みたいな親父

10.1 SUN

勝浦の旅から無事に帰ってきたことを、近所の神社にご報告に行ってきた。
急に涼しくなって心地よく、歩き回っていたらお腹も空いたので、コンビニで缶のお酒とからあげクンを買って飲みながら歩いた。
外で飲むのにいい季節が来たね、と喜び合える人と結婚してよかった。

10.2 MON

このところadobe fontsの不具合にずっと悩まされていた。フォントがアクティベートされず、会社でこれまでに作ってきた販促物でつかっていたニタラゴルイカがすべてダメになっていた。
アウトライン化してないのかよと言われそうだけど、何度も繰り返し金額を変えたり文言を変えたりして使うので、アウトライン化する前のデータもめちゃくちゃ大切で、むしろそれがないとめちゃくちゃ手間なのだ。
いちいちすべての文字のフォントを変えるところから作業が始まるので、かなり時間をロスしまくっていた。
そんな日々からようやく解放された。
喜びのあまりTwitter(あいからわずまだそう呼んでいる)で投稿したが、1つもいいねがついていなくて、そりゃそうだよなと思った。

10.3 TUE

日付が変わった頃くらいに、急にノンフィクション作家の山際淳司さんを思い出した。
スポーツの一場面をそのまま描くというよりは、取材に取材を重ねて、自分なりの分析を展開して、ドラマをより深く掘り下げていく文章が魅力的だった。
「江夏の21球」や「八月のカクテル光線」が好きだった。
かつては僕も野球をやっていた。上手くなりたいと思った時期もあったけれど、心ない先輩に背中をどつかれたり、笑われたりして行かなくなった。
中学1年生の夏終わりぐらいから行かなくなって、そのまま卒業まで幽霊部員を通した。
辞めようと思って話をしに行ったこともあるけれど、なぜか辞めることができなかった。不思議な、嫌な力がかかっていた。
あの時にきちんと辞めていたらどうなっていただろう。
野球部を辞めて、写真部に入部したいという思いを実行に移せていたら、今どうなっていただろう。
やらなかったこと、できなかったこと、今もまだ続く後悔が中学・高校時代に多すぎる。

10.4 WED

地元の焼き鳥屋で妻と待ち合わせたら、知り合いに会った。
同じ街で小さなイタリアンを営んでいる夫婦だ。
旦那がシェフで、奥さんがドリンクや接客をする。お店が休みの日には、とにかく朝から晩まで食べ飲み歩きをしているとは聞いていたけれど、確かに僕が焼き鳥屋に着いた時にはもう2人ともぐずぐずに酔っ払っていた。
仕事中はパリッとしてるのに、プライベートではぐでぐでしていて、僕は2人のことをもっと好きになった。

焼き鳥屋が早めに閉まるので2軒目も行って、だいぶ遅く帰ってきたら、第4回BR賞発表号の「現代短歌」が届いていた。
田村穂隆さんの『湖とファルセット』を取り上げて佳作に入った日下踏子さんの「銀色拡縮反転地図-あるいは寄せ絵による歌う樹の肖像-」、野川りくさんの「クィアとしての『湖とファルセット』」を読んだ。
松江での「『湖とファルセット』を読む会」のためにも、この2つの書評は頭に叩き込んでおきたかった。

10.5 THU

東京も朝晩はかなり冷えるようになってきた。
昼間はいいけれど、流石に半袖Tシャツではこたえるので、通勤はジャケットを着ることにした。
「自転車屋のスタッフとして就職し、店舗に配属されたのに、経理部で欠員が出たために急遽本社に呼ばれた」という経歴を盾になんとなく私服でずっと通勤してきたので、今の会社でスーツを着たことがない。
それでもたまにはジャケットを羽織る。下はTシャツ、しかもスニーカーなので、すっごく自由気ままに仕事している人のように見える。
でも実態は、マジでしがないただのサラリーマンだ。
毎月の給料日が待ち遠しくて、仕事帰りに馴染みの店に寄って一杯ひっかけるのが好きで、健康とメンタルのためにタバコを辞めて3年が経つ、ただの、サラリーマンだ。

10.6 FRI

やっと一週間が終わった。
来週は1日しか会社に行かないので、詰め詰めだった。
僕は会社で使うすべての販促物、例えばポスターやチラシ、ショップカード、大きいものだと店舗の壁面の看板なども作っている。
それらにはきちんと期限がある。キャンペーン開始時期や施工のリミット、狙いたい時期など、社内のこととはいえ、けっこういつも締め切りに追われている。
そんな中でほぼ一週間留守にするし、前の週にも3日間の夏休みを取ったしで、てんやわんやだった。
でもそんな一週間もついに終わった。旅の間も社用のケータイは持ち歩かなければならないし、ひっきりなしに連絡も来るだろうけれど、できる限りの作業は進めたからちょっとだけ不通を許してもらう。

10.7 SAT

有楽町の交通会館に行った。北海道物産展でチョコを買い、隣の三省堂で出雲大社のガイドブックを買った。
有楽町から新橋まで、缶ビールとファミチキのレッドを両手にぶらぶらと散歩した。
宝塚劇場の裏から帝国ホテル、日比谷公園の横を通った。思い出があるような、ないような、そんな街と通りだった。

10.8 SUN

僕の実家へ。
勝浦のお土産を渡すのと、肝臓ガンの再発で翌日から入院するという親父に会うため。
でも、行ったら親父いねーでやんの。
おそらくだけどね、息子に激励されるとか、面と向かって何か話すみたいなことに対してただただちょっと反抗的でいたい、まるで思春期の子どもみたいなところのある人なんだと改めて思った。
ちょっと斜に構えてる、オレ。みたいな。
まぁ、頑張って。
歌壇賞に親父と母と自分とのことを連作にして出したから。
ちゃんと賞をもらうから。
だからちゃんと退院して、読みなよ。読めよ。

今週のアルバム

さぁ、始めようか、の写真
山際淳司さんの本たち
鉄板締めちゃってパティ焼けないから、揚げてあげると言われて出来上がったメンチカツバーガー。飛んだ。
焼き鳥好き
勉強になりました
てくてく散歩
こちらは揚げてあります
実家の美容室にも歌集を卸している。笑

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