風
さみしい時、人はどうするのだろう。だれか他者と話をすることを願うだろうか。わたしが心の底からさみしい時は、人を求めてもやっぱりさみしい。そういう時は一人で本を読んだり文章を書いたりするしかないと思ってきたけれど、もしかしたらほかの方法もあったのかもしれない。
あるよく晴れた春先の午後、わたしは両側の窓を開けた車の中で一人ぼんやりとしていた。日差しがフロントガラス越しに暖かく降り注ぎ、外からは風の音がした。少し遠くで木々が風にそよぐのを何気なく見つめていてふと思った。
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