見出し画像

ポーリッシュ法が難しすぎる

ポーリッシュ法は時間でつくれない

ここのところ2日に1度くらいの割合で栗原シェフのビアンキュイカルテの課題である、ポーリッシュ種のバゲットを焼いています。そしてとにかくこれが難しい!

昨年2023年に児玉シェフのカルテで採用した老麺(ローメン)法のバゲットも難しかったのですが、正直、難易度で言えばポーリッシュ種のバゲットの方が上のような感じがしています。

別にポーリッシュの方が老麺法より高尚だとか、美味しいとかそういうことじゃなく、ただただ、ポーリッシュの良さが出た焼き上がりにもっていくのが難しいという意味なんですが。

難しい理由はいくつかあるんですが、最大のポイントは他の製法に比べて生地の工程管理が繊細で、「時間で作ることができない」っていう点ですね。

児玉シェフもよく言ってましたね、「時間はただの目処です!」「時間で作らないように!」と。

これは講習で「何速で何分こねた」とか「レシピにホイロ◯分ってかいてあるから」という点だけを重視して、生地の状態を確認しないで生地作りを進めていくやり方はパンづくりとしてNGですよということなんですが、まさにポーリッシュ法ではこれが顕著で、とにかく時間だけで管理してると生地がまったく安定しないんです。

たとえばポーリッシュの仕込みひとつ取っても、レシピ通り60分発酵とって一晩冷蔵庫で寝かしても毎回できが違います。それはもう見事なほどでイヤにになってしまいます(笑)。

基本的に吹きすぎているということはなくて、まずままず良い感じか、ちょっと若いな、全然若いな、の3点のうちのどこかです。

ポーリッシュが完熟にならない!


こうなってしまう原因の一つは、私たちの家庭製パンでの仕込み量が、ベーカリーに比べて極端に少ないからなんですね。

家庭用オーブンでバゲットを焼こうと思うと200gの生地量で2本が限界です。4本作ると2回転しなければならず、ホイロが20分以上伸びてしまうと2回転めの生地はもう過発酵です。

だから生地を無駄にしないことを考えると生地量400gで仕込みたくなります。

しかしその生地量のポーリッシュの仕込みとなると、粉の量は75gに、そしてセミドライイーストは0.25gになってしまいます。これはかなりつらい(笑)。イースト0.25gを正確に計量するのも無理目なんですが、そもそも0.25gのイーストで安定した種を仕込むのはかなり難しい作業です。

過去10回ほど試していますがレシピ通りに仕込んでもある日はまずまず、ある日はちょっと吹き悪い、またある日はぜんぜん発酵しているように見えないなど、出来がてんでんばらばらです。

それでもある程度のブレならば、冷蔵庫で寝かせる時間を1時間程度のばして調整できるのですが、全く吹きが感じられないときは2時間冷蔵庫でひっぱり1時間室温においてもダメでした(笑)。

確かにポーリッシュは前日の作業が簡単でその点は優れているんですが、一晩かけて寝かした種が翌日になってアウトになってると結構へこみます。というか、こねる前から「あぁ、今日もダメかな~」という気持ちになってしまうんですよね。しかも結果は必ずダメです(笑)。

というわけで、今の私はポーリッシュ種を仕込むときはある工夫をしています。これがけっこう効果が高くて、もし同じように悩んでいる会員さんがいらっしゃったらぜひ試してみていただきたいです!責任はとれませんけど。

試行錯誤でたどり着いた解決策

シンプルにポーリッシュ種を多めに仕込むということです。

必要な量の2倍か、できれば3倍量にして仕込みます。
そうすると倍量でイースト0.5g、3倍量でイースト0.75g。これだけでも安定性はずいぶんあがります。
もちろんポーリッシュは余ってしまいますが、残りはパンドミの種として使えば無駄にはなりません。ポーリッシュのパンドミもかなりおいしいのでお勧めですよ。

ポーリッシュを倍量以上で仕込むようになってから、種の出来で悩むことはかなり少なくなりました。多少元気がないかな?と思った時も1-2時間引っ張るとかなりいい感じに熟してきます。
ゲンキンなもので、こういう種で仕込むときは計量してる時もなんとなくウキウキしてくるものでミキシングも楽しい時間です。

もちろん種がしっかりできたところで最高のバゲットが焼きあがるわけではないのですが(泣)、ミキシングから窯出しまですべての工程に集中できますし、ちょっと悲しい焼きがありの時も種以外のどこかで大きな問題があったんだな、それはたぶんあそこかな?という反省もできます。

これは生地の管理技術を学んでいる人間にとってはかなり大きなポイントですよ!

そして、「おっ!今回はちょっといいかも!」と思えるぐらい、いい感じで焼きあがった時が出てくるようになります。
これはうれしい!

うれしいんですが、ポーリッシュの場合はこれでもまだ安心できないんですよ、実は(苦笑)。
なぜなら、さらなるこの製法ならではの関門が待ち構えてるからなんですね。

ポーリッシュ法のパンは見た目でできの判断が難しい

ポーリシュ法で作ったバゲットがそこそこいい感じで焼き上がりました。
完璧というところまではいきませんが、浮きがまずまずでクープもそれなりに開いてます。

これが冷蔵発酵法やディレクトなら、見た目がまずまずなら食べてみたときの風味の良さもいっしょでそれなりに粉の甘みや香りの良さが出ています。

ところがポーリッシュ法の場合は、外見だけでは風味の判断ができないケースが結構あります。外見がまずまずで味も良しという時もありますが、同じような外見なのに今日は味も香りも弱いということも少なくないんです。

もちろん私のパン作りがへたくそだからなんですが、それなら味がしないときは外見もめちゃめちゃなのが普通じゃないですか。おっ、今日はいい感じで焼けたじゃん!と窯だしのときにウキウキしていながら、食べてみたら味がしないという時があるんですよ!。

これは栗原シェフも5月のレッスンでおっしゃってましたが、ポーリッシュ種が少し若いときによく起きる現象のようです。見た目は良く焼き上がっていても味も香りも弱いと。

でも私の場合は、種が完熟していても同じような現象が起きるんですよね(笑)。これは間違いなく生地の扱いが下手なのが原因と思われます(笑)。残念ながら私のレベルだと、「まるめでこうすると」とか「ベンチタイム明けでこういう状態だと」みたいな推測はできないんですけど、どこかで何かをやらかしているんだと思います。

これから何度も練習していけば、そのうち「こういうことが原因かも」と思い当たることが出てくるかもしれません。というか、それがわかるまで作り続けなければと思っています。

なぜそんなにやっかいな製法で作るのかといわれれば、その理由は最初の回で書いた内容につきます。ポーリッシュ法のバゲットは一番、時間ではなく「生地との会話」で生地を扱うことが求められる製法だと思われるからです。

プロのベーカーリのように大量の生地を1年を通じて温度や湿度の管理がしっかりされている環境でつくるのとは異なり、少量で外部の温度の影響を受けやすい自宅で作ることになる家庭製パンは、ある意味もっとも「生地との会話」が必要となるパン作りのような気もしています。
きびしなぁ。(笑)
でもがんばろう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?