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けしか欄

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2020年2月の記事一覧

空港ポスト003-後編10 19/12/17~19/12/25

 続きです。
 よろしくお願いいたします。

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ドット絵に近い姿の学生がスーツを着たまま筋トレをする
/若枝あらう

 スーツのあの画一的な、それを着ている人物の解像度が下がるイメージ、が「ドット絵」に変換された、うえで、それを「着たまま筋トレをする」の着替えてやれよ……な謎行動を起こしている、というおもしろさの生み出し方が良かったです。「学生」を逆にカラフルなイメ

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空港ポスト003-後編10 19/12/17~19/12/25

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メモが飛ぶまでを見ていた 両面に鶏の煮込みの書かれてあった
/小泉夜雨

「メモが飛ぶ」まで初句で、いったんできる切れ目が効いて、臨場感が生まれているところが上手いと思います。「メモが飛ぶ」「まで」の隙間のような時間、飛んでいっている様やその時間ではなく、を切り取っているのがこの歌、であるわけで、そこを強調することに、

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空港ポスト003-後編9 19/12/17~19/12/25

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ひかる枝ひからない枝ひかる枝渋谷の冬をめくって歩く
/草薙

 花占い(「好き、嫌い、好き、嫌い、、、」のあれ)のモチーフっぽく「ひかる枝ひからない枝ひかる枝」っていう、知らないやつ、を言ってきているのがおもしろかったです。もちろん比喩として読みに行く、ことはできるうえで、よくわからないまま「好き、嫌い、好き、嫌い、」

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空港ポスト003-後編8 19/12/17~19/12/25

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ディスクール だ円の多い街にいてそれでも訃報はかならず届く
/村上航

「だ円の多」さ、に気付いていながらそれが歌の核ではない感じ、をおもしろがれつつ、それ以上に込み上げてくる「どういうこと?」の疑問が勝りすぎて歌の印象はそっちで残りました。
「それでも訃報はかならず届く」の、誰の、を言ってこないところで「すべての」の

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空港ポスト003-後編7 19/12/17~19/12/25

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チャーハンは良いと後出しされながら酢豚を待っている大盛で
/御殿山みなみ

 なんでそれを、いま、言うんだよ……の気持ちを抱くこのひと、の気持ちを追体験できる歌で、「待っている」状態でそれがじわっと持続する感じ、「大盛で」の【しかも】の感じ、辺りにすごくおもしろさのある歌だと思います。別に、酢豚はそれでもおいしい、のに

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