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サヨナラ、愛を込めて(井口理ANN0が最終回を迎えて)

 一年前まで、ラジオをあまり聴かなかった。ときどき菅田将暉やオードリーのオールナイトニッポンを聴くくらいで、毎週聴く番組はなかった。電車で聴くのはラジオではなく音楽だった。 

 King Gnu井口理のオールナイトニッポンゼロの最終回から一週間が経とうとしている。わたしは次の日の予定と相談して、リアルタイムで聴けるときはMixchannelで視聴し、そして放送から一週間は時間が許す限りradikoで繰り返すタイプのリスナーだった。井口理ANN0を毎週欠かさず聴くようになったのはいつだったっけ。きっかけももう忘れてしまった。

 わたしには、一週間に一度絶対に会う人なんて家族を除いていない。ましてや、毎日声を聴く人なんているわけない。でも、井口さんの声だけは毎日聴いた。そして木曜日深夜の放送から一週間、毎日同じところで笑ったり泣いたり、眉間にシワを寄せたりした。電車で聴くのがいつの間にか音楽からラジオになっていた。井口理のオールナイトニッポンゼロを聴くのが、不規則な生活をし、毎日違う本を読み、いろいろなバイトに出かけていくわたしの、唯一のルーティーンだった。

 正直、他の番組をこんなに真剣に聴いたことがないので比べることはできないが、井口理ANN0はリスナー(常田メン)をかなりスペシャルな気持ちにさせてくれた。わたしたちリスナー(常田メン)は、大ブレイク中のKing Gnuのボーカルキーボードが爆笑したり、喜んだり、あたふたしたり、怒ったり、悲しんだり、泣いたりするのを見た、聴いた。それはそれはスペシャルな1年だった。井口理ANN0は、常田メンを、スペシャルな出来事の、スペシャルな目撃者にしてくれた。
(常田メン:最終回に決定した井口理ANN0リスナーの総称)

 真剣に熱唱する姿に完全に心奪われてしまった、「King Gnu 井口理 presents
勝手にポルノグラフィティ20th Anniversary Radio」。ポルノグラフィティ岡野昭仁からのメッセージにかなり動揺する井口理の姿にヲタクとして激しく共感した。

 綾野剛がゲストで来たときはいきなりパンスト相撲をするので深夜に声を出して笑ってしまった。その一週間は本当に大変で、radikoで聴き直して電車の中でニヤニヤしてしまったり、バイトで事務をしているときに吹き出してしまったりした。

 aikoが最初に来た回の井口さんのデレデレ具合にはわたしも頭を抱えたし、二回目のaiko回、今や伝説となったふたりの『カブトムシ』を聴いたときはふつうに泣いた。もちろんふたりの歌声に感動したのもあるけれど、おそらくかなりの重圧のなか、ゲストのことを考え準備し、確かな実力とともに最高のパフォーマンスを披露する井口理の姿に、泣いた。

 井口理が『ミュージックアワー』を熱唱しているところにポルノグラフィティの岡野昭仁さん本人がサプライズ登場したのは記憶に新しい。本当にびっくりしたし、何より井口さんが嬉しそうなのが、嬉しかった。

(他にも載せたいのがいくつもある)

 いつの間にかめちゃめちゃに応援している自分がいた。ゲストが来る回はうまくできると良いなとこちらもそわそわしてしまって大変だったし、井口さんが噛むとこちらも「ぁぁぁああああ!!」となった。なんだかいつも「頑張って!!」と思いながら聴いていた。井口さんには人にそんなふうに思わせる力があった。それも魅力の一つだった。

 ゲストが来る回もスペシャルで好きだったけれど、ひとりで喋り続ける回もスペシャル好きだった。好きなものの話をしているときの声が、めちゃめちゃによかった。

 井口理ANN0は基本的に、明るかった。明るくしようとしていた。この世には苦しいことや、悲しいことがあるという前提に立って、明るくいよう、明るくしようとしているのを感じた。世界の暗い出来事や暗い部分を度外視しない真摯な態度に、とても好感を持った。

 Mステの階段パフォーマンスや時折上がる憑依動画で「キングヌー 井口理の奇行まとめ」を作られてしまうような、大ブレイクしているKing Gnuの超人気者だが、ラジオでの井口さんはいい意味で、人間らしかった。井口さんの話を聴いていると、揺れていていいんだ迷っていていていいんだと思えた。

 二月の最終週、ラジオを三月いっぱいで終わりにすると告げるとき、井口さんは「自分の何気ない発言が誰かを傷つけてしまっていたかもしてない。」と言った。一年でこんなに大人気番組にしたのに、このラジオのファンがこんなにたくさんいるのに、「今までありがとう!あと数回よろしくね!」と言うだけでもよかったのに、井口さんはわざわざそう言った。

 その言葉を聞いたとき、このラジオを聴くことにしてよかった、聴いていてよかったと心の底から思った。そういうことを言葉にしていくところに心惹かれて今日まできた。言葉を慎重に選んでいるのが伝わってくるラジオだった。だから安心して聴くことができた、だから楽しかった、だから毎週聴こうと思えた。

 King Gnu井口理のオールナイトニッポンゼロの最終回から一週間が経とうとしている。radikoで聴くことができるのも明日まで。毎日聴いていた井口さんの話し声のない生活に、すぐには慣れることができないと思う。かなり寂しくなると思う。でも、この番組でラジオの楽しさを知ったから、わたしはこれからもラジオを聴き続けようと思っている。

King Gnu井口理のオールナイトニッポンゼロ、めっちゃ楽しかったです。ありがとうございました。サヨナラ、愛を込めて。

まとまらない文章ですが、どこかに残しておきたいと思い公開いたしました。

ヒラウチ

今日の一曲はもちろん:ポルノグラフィティ『ミュージックアワー』

強い人にはなれそうにもない揺れてるきみでいいよ






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