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【読書】7.5グラムの奇跡


著者:砥上裕将

視能訓練士と呼ばれる、眼科医院の検査のスペシャリストとして働き始めたばかりの青年が、病院のスタッフや患者とのふれあいを経て大きく成長していく1年間の物語でした。

物語は全部で5章あり各章特定の患者に関する話になっているのですが、どの患者も一筋縄ではいかず、治療を拒んだり通常起こりえないような検査結果が出てしまったりと問題を抱えています。
これらの問題に対して、「人の瞳を見るのが好き」という一見変わった嗜好の主人公が、真っ直ぐ素直に患者の瞳と向き合うことで、精神的に辛い思いをしている患者の背景を理解して、ベテランのスタッフ達が気が付けなかった問題を解決していく形で話が進みます。

眼科という世界、また、その中でも訓練士という仕事があることを初めて知り、幾人もの人達の「助けたい」という思いが一回一回の診察に込められていることが力強く描かれておりました。特に主人公のセリフには患者を思う力強さだけでなく、繊細さも含まれており、とても綺麗な表現が印象的でした。

文章として楽しむだけでなく、表現を目で見て楽しみつつ、見えることの喜びを感じられる一冊でした。

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