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Netflix 「FIFA を暴く」 スポーツ界最大の汚職に迫る

Netflix はサッカー系ドキュメンタリも扱っている!?

今、サッカーのドキュメンタリといえばアマゾンプライムの「All or Nothing」かと思います。
昨年はアーセナルのシリーズが公開になり、相変わらず我々サッカーファンが見ることのできないロッカールームや選手たちの普段の映像が収められており人気を博しています。
「All or Nothing」の人気も相まってかサッカーの映像を見るのならアマゾンプライムという印象がファンの中ではあると思います。

しかし Netflix にもサッカー系のドキュメンタリが何本かあるみたいです。
しかも扱っている話題が比較的マニアックに感じました。
例えば「フィーゴ事件」があります。
2 時間弱の動画で、ルイス・フィーゴがバルサからマドリーに移籍した際の交渉の裏側に迫る内容で面白そうです。

他にも Netflix では「ボカ・ジュニアーズ・コンフィデンシャル」、「アネルカ 天才プレーヤーの素顔」、「サンダーランドこそ我が人生」などがあります。(とくに「サンダーランドこそ我が人生」はマニアックすぎるw)

今回は Netflix にある「FIFA を暴く」というドキュメントについて紹介します。
2022 年 12 月に公開された作品で 1 話 1 時間弱の 4 話構成です。
題材は 2015 年に起きた FIFA 汚職事件を扱ったものとなっています。
以下ネタバレを含むので観ていない方は Netflix で観て読むか、そのまま読み進めるかはおまかせします。以下 URL です。


見どころ

登場人物

物語には登場人物がたくさん出ます。
少なくとも以下の 4 人を知っておくと良いでしょう。

ゼップ・ブラッター
1998 年から 2015 年のまでの FIFA の会長で、物語の主人公とも言っても過言ではない人物です。
彼は前任の会長によって 1974 年から FIFA に携わっており、サッカーの商業的な成功に導いた人でもあります。
ちなみにワールドカップにスポンサーを持ち込んだのは彼のようです。
同時に彼が会長だった期間に FIFA は汚職が絶えない組織へと腐敗していくこととなりました。

ジョアン・アヴェランジェ
ブラッター氏の前の FIFA 会長で、ビジネス指向が強くブラッター氏とともにサッカーの商業化を進めた自分物の一人です。
またヨーロッパ人以外の初の会長であったことからヨーロッパ以外へのサッカーの普及にも貢献しており、日韓ワールドカップの誘致がその代表的なエピソードとなります。(ちなみに彼は日本単独開催を推していたさそうです。)
しかし彼が会長の時代から FIFA の汚職の噂が立つようになり、その疑惑で辞任します。

ジャック・ワーナー
トリニダード・トバゴの政治家であり、実業家であり、FIFA の前副会長、北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)の会長でもある人物。
2015 年の事件では逮捕されており、サッカーに関する活動を永久に禁止する処分に処されており汚職事件の中心人物とも言えます。

チャック・ブレーザー
ワーナー氏と同じ北中米カリブ海サッカー連盟の副会長、1996 年から 2013 年まで FIFA の執行役員を努めた人。
2015 年の事件はこの人の逮捕から始まるのでキーマンと言えます。

他にも汚職事件に関わった FBI の捜査官や FIFA 幹部本人のインタビューも映像の中に含まれており、よりリアルに事件のことについて知ることができます。
また映像ではありますが、アルゼンチンの独裁者ビデラやネルソン・マンデラ氏、プーチン氏、オバマ氏、サルコジ氏といった政治に関わる要人も物語には出ており FIFA という組織の規模の大きさが伺えました。

あらすじ

前述の通り 2015 年に起きた FIFA 汚職事件をメインに扱った作品です。
話はブラッター氏の前任者、ジョアン・アヴェランジェ氏が FIFA の会長職に就いた 1974 年から始まります。
この頃 FIFA はビジネス重視な組織へと変貌を遂げていました。
その変貌に深く関わりがあるのがゼップ・ブラッター氏でした。
彼は W 杯にコカ・コーラなどのスポンサーを呼び込むなどサッカーで稼ぐことを当たり前にしていきます。
FIFA がお金を持つこと自体は良いことで 1982 年大会から初めて優勝国に賞金が配られたようです。
他にもサッカー後進国のサッカー協会への資金援助やインフラ投資などに当てられる資金が増えたそうで、サッカーの普及に大いに役立ったと言われています。

それと同時にお金を持つと人間欲が出てしまうもので、この頃から汚職の噂があったようです。
1998 年にアヴェランジェ氏は不正金銭受領の疑い会長を辞任すると、彼を引き継ぐ形でブラッター氏が会長になります。
このときの選挙で勝負を分けたのがアフリカ票の行方で、ブラッター氏は南アフリカへのワールドカップ誘致を公約として掲げ当選します。(このとき選挙に勝つために金を配ったという噂もあるみたい。。)

その後ブラッター氏は自分を支持する人物を中心に FIFA へ入閣させ協会を私物化します。
1998 年の会長選以降、2002 年、2007 年、2011 年、2015 年と 4 度にわたって再選を果たし長期政権を築き上げました。
この期間ブラッター含め FIFA の幹部たちは協会を汚職に汚職を重ねます。
その汚職が明るみになるのが 2015 年の汚職事件であり、スポーツ界最大と言われています。

2015 年 FIFA 汚職事件

2011 年にブレーザー氏が脱税の容疑で捜査を受けます。
しかしこのときブレーザー氏をそのまま逮捕するのではなく FIFA 内部の捜査のために協力することとなります。
ブレーザー氏はときに盗聴のためのマイクを仕込んだり、電話やメールの内容を確認されました。
調査の末 2015 年に 14 人に容疑がかけられ、うち 7 人が逮捕という自体になりました。
逮捕者の中には北中米カリブ海サッカー連盟会長のワーナー氏などがいました。
FIFA 会長のブラッター氏は含まれていませんがこれだけの逮捕者が FIFA から出てしまった以上会長が責任を取らなければ収集が付きません。
ブラッター氏も数々の容疑をかけられましたが逮捕までには至っておらず、2028 年までサッカーに関わる活動を禁止されている状態です。

起訴事実は 47 件にものぼそうですが、ワールドカップ開催地選定での不正主だった内容です。
ワールドカップの開催地は理事会 24 名の投票で決まるのですが、理事を買収するという不正投票が過去のワールドカップではあったようです。

その他の汚職や疑惑については割愛します。
詳しくは wikipedia に事件の内容が長々と書いてあるのでこちらをどうぞ。

感想

FIFA の腐敗の原因とその対策、依然として残る問題

まずはワールドカップ開催地選定の投票に関してです。
仕組みは先程書いたように理事会参加の 24 名だけの投票で決定していました。
投票に参加する人数が少ないと全員買収されてしまい投票自体をコントロールされてしまう恐れがあります。
また会長選の投票は少し仕組みが違い投票自体は各国のサッカー協会が 1 票という形で行われますが、協会を束ねる各地域のサッカー連盟の長が買収されると属する国々の投票をコントロールできてしまう恐れがあります。
これらの投票に対する問題に対して、ワールドカップ開催地の投票も各国の協会による投票の方式に変わったようです。
また権力が集中しないように会長や理事会に任期を設けて同じ人が長くやらない仕組みを導入しました。
権力を分散させるために機能別で組織が細分化されていっています。

投票に関して対策を進める一方で、政治的圧力を受けない仕組みも必要だと思いました。
2022 年ワールドカップ決定の際の投票で、当時 UEFA 会長だったプラティニ氏はサルコジ大統領とカタールの代表の食事会に呼ばれ投票へ圧力を受けたと話しています。
エムバペ残留の際もサルコジ大統領が電話したという噂と似ていますね。
また作中にありましたが、過去のワールドカップではあからさまに国民の関心をスポーツに逸らすために利用されたケースがあるようです。
カタールにもその噂があり、今後 FIFA にはそういった問題への対処をどうしていくのか注目したいと思いました。

全員悪人。何が正義かわからない

観てて正義ってなんだろうと思ったエピソードがあります。
2022 年のワールドカップがカタールに決まった際に誹謗中傷の声があり、それに対しカタールのワールドカップ招致に携わった人が涙するシーンがありました。
しかしその数分後にカタール側から賄賂があった事実が発覚し、先程涙していた人も何も悪びれずやったこと白状していました。
これには僕も一時同情していたのですが一瞬にして冷めました。
僕らからすると賄賂は悪気のある行為ですが、彼らにとっては違うのです。
あとから明るみに出る事件から推測すると、ワールドカップ招致に賄賂を送るのは当然の行為でカタールが入札した時点では慣習のようになっていたんじゃないかと思いました。
実際にそのようにアドバイスしたというエピソードも出てるくらいですし。このように悪事を呼吸のごとくできてしまう土壌がすでに FIFA で整っており、日常的にやってたからこそこれだけの罪状で起訴されれうこととなったのでしょう。

これには国によって価値観が違うのも影響しているかと思います。
これだけ多くの国でサッカーがプレーされていることは素晴らしいことですが、それらの国をまとめて物事を進めるのは難しいことです。
ブラッター氏はインタビューで文化を超えて統率することはできないとおっしゃっていたが、それを規制するのが FIFA(国際サッカー連合)の仕事では?と思い、心底このトップあっての組織だったんだなと痛感しました。

サッカーの話?ってほどサッカーが出てこない

見終わったあとに気づいたのですが、サッカー選手があまり出て来ません。
途中ベッカムが出てきますが、僕が確認できたのはそれだけです。
(過去に選手だった人もいるかもしれませんが。。)
サッカーでは選手が主役です。ブラッター氏でも協会の幹部でもありません。
もっと選手や監督、サッカーファンの声に耳を向けてほしいと改めて思いました。

まとめ

以上が、FIFA を暴くの感想なんですが、作中でカタールワールドカップの労働者問題や LGBT 問題についてさらっと触られていました。
労働者問題に関しては Amazon Prime Video の「The Workers Cup」という作品で細かく描かれています。
Netflix で「FIFA を暴く」を観て労働者問題にも興味が湧いた人はこの作品も観てみると良いと思います。

余談ですが、サブスク 2 つ加入しないと 2 作品見れないほどサッカーコンテンツは充実してきておりサッカーファンはどれだけお金や時間があっても足りませんね。。。


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