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Outside United #5 パフォーマンス面で考えたデヘア契約延長問題
デヘアの契約延長問題に関して話したい
マンチェスター・ユナイテッドの正 GK を長年務めているダビドデヘアの契約が、この記事を書いている 2023 年 6 月の末日に切れてしまいます。
が、今の今まで契約延長されていないので交渉がうまくいっていないみたいです。
先日ジョーンズが退団を発表し、ファギー時代を知る在籍選手はデヘア一人となってしまいました。
ファギー勇退後はクラブとしてよくない時期だったかもしれませんが、持ち前のセービング能力でチームの危機を何度となく防いでくれました。
そんな功労者であるデヘアはいまクラブと契約延長交渉の最中で、最悪の場合は FA カップ決勝がラストマッチとなり退団する可能性があります。
22-23 シーズンは自身 2 度目となるプレミアリーグゴールデン・グローブ賞を獲得しまだまだできることを証明したシーズンだったのではないかと思います。
そんな成績とは裏腹に、ゴールデングローブ賞があまり取り沙汰されない印象を受けており、僕はそこに疑問を感じています。
それだけでなく、サポーターからは契約延長を渋る声が聞こえてきます。
主にデヘアのパフォーマンスへの不満や現チームや監督へのフィットが不安視される点からだと思われます。
果たしてその主張は正しいのか本記事で検証していきたいと思います。
デヘアの功績
獲得タイトル(※ユナイテッドに限る)
プレミアリーグ:2012-13
FAカップ:2015-16
EFLカップ:2016-17, 2022-23
FAコミュニティ・シールド:3回 (2011, 2013, 2016)
UEFAヨーロッパリーグ:2016-17
近年はクラブとしてチャンスが減ってしまい、タイトルに恵まれなかったかもしれません。
加入した 11-12 シーズンはシティに 1-6 で負けたり、時たまミスするデヘアが目立っていた印象ですが、12-13 シーズンで正ゴールキーパーとして安定しリーグ優勝に貢献してくれました。
個人受賞
PFA年間ベストイレブン:5回 (2013, 2015, 2016, 2017, 2018)
クラブ年間最優秀選手賞:5回 (2013-14, 2014-15, 2015-16, 2017-18, 2021-22)
プレミアリーグゴールデン・グローブ賞:2 回(2017-2018, 2022-2023)
印象的なのは 2017-18 年で PFA ベストイレブン & クラブ最優秀選手 & ゴールデン・グローブ賞の個人三冠を勝ち取っています。
このシーズンはデヘアの十八番であるセービングが特に神がかっていた時期でユナイテッドがリーグ 2 位を記録できたのもデヘアの功績が大きいと思います。
デヘア契約延長の妨げとなる要因
給料が高すぎる問題
デヘアのサラリーはチームでトップとなっており、プレミアリーグで見てもデ・ブルイネやハーランド、サラー並みに高いことで有名です。
契約延長したのが活躍した 2019 年 9 月頃で全盛期に延長できたのが大きいでしょう。
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デヘアとしては 22-23 シーズンもコンスタントに出場し、ゴールデン・グローブ賞を取るなど結果を残しました。
ただユナイテッドとしては選手のサラリーの改善する動きもあるみたいで、減額した契約で延長を望んいるそうです。
両者引かずに時間が経っているという状況なのでしょうか。
現代とテンハグのサッカーへ適応できていない件
テンハグは就任当初から後方からのビルドアップにチャレンジしています。
デヘアはどちらかというと足元がうまくないと言われており、ビルドアップの際はパスをミスするシーンを良く見かけます。
また開幕当初は慣れていないのもあり、相手チームの前線からのプレッシングによりボールを失い負けるといった試合もありました。
テンハグが理想とするサッカーを実現させるためにはデヘアでは役不足なのではないかと思われます。
ではデヘアがどのくらいふさわしくないのか今季のスタッツを調べてみたいと思います。
デヘアのスタッツ
デヘアのユナイテッド加入からのスタッツや他 GK のスタッツとの比較などを行いながらサラリーや契約延長が妥当か見ていこうと思います。
セービング
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デヘアのセーブに関するスタッツを見ると、ここ近年はピーク時(17-18 シーズン)と比べるとやや低調なパフォーマンスとなっています。
17-18 シーズン、22-23 シーズンはどちらもゴールデン・グローブ賞を獲得し同じくらいの被シュート数(17-18 が 140 本、22-23 が 142 本)を記録しているがセーブ率は 10% も違います。
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リーグ全体で見てみると上から 8 番目に高い数値となっています。
ゴールデングローブを取っていることを考えるとこの結果には意外でした。
ただセーブ率ランキングはリーグ順位を反映しているものではないのでなんとも言えないですね。
次に Post Shot xG という指標と失点数を見てみます。
Post Shot xG とは失点期待値みたいなもので、シュートを打たれたあとに点がどのくらい入るかの期待値を表したものです。
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ちょっと見づらい散布図ですが、横軸が PSxG、縦軸が実際の失点するです。
サウサンプトンは期待以上に取られていることがわかり、エヴァートンやフルハムは期待値より取られていないことがわかります。
ユナイテッドの期待失点数が 41.3 点だったのに対して、実際は 43 失点でほぼ期待通りの失点となっています。
ディフェンスが防いでいるケースもあるので一概には言えませんが、デヘアは想定通りの活躍をしていると言ってもいいでしょう。
結論、セービング能力はピーク時から落ちているが、期待値通りの仕事をしていると言えるでしょう。
パス
パスは 22-23 シーズンは本数が増加していました。
これはテンハグ監督に変わってからゴールキックや低い位置からのビルドアップにチャレンジしていたためだと思われます。
とはいえ早い段階で諦め長いパスを使ってた印象で、ちゃんとロングパスの本数が増えていました。
またロングパスの割合が増えているため全体では成功率が下がっているのが見て取れました。
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リーグ全体で見てみたらどうでしょうか?
以下のグラフはパスやゴールキック本数に対する 40 ヤード以上のパスの割合です。
※ 40 ヤードは 36.58m でサッカーコートの約 1/3 の長さです。
デヘアの場合普通のパスは 30%, ゴールキックは 60% が 40 ヤード以上のパスとなっており、ゴールキックでは比較的高い割合で長い距離蹴る選択を取るようです。
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デヘアの 40 ヤード以上のパスの本数と成功率を見てみると、本数では中位くらいですが、成功率で見ると 31.4% で下から 5 番目のようです。
単純にこの成功率をゴールキックにあてはめてみると、ゴールキックの 2/9(ゴールキック長く蹴る割合 2/3 x 成功率 1/3)しか前線へ繋げられていないということになります。
逆に言うとゴールキックのうちの 4/9 は相手に渡しているということになります。
ちなみに本数多く成功率が高いチームはブレントフォード、ボーンマス、ウェストハム、ヴィラなどです。
まとめると、22-23 デヘアはロングパスの割合が増えているが、成功率が低く、チャンスには繋げられていないということになります。
ディフェンス面
ペナルティーエリア外での守備も現代サッカーにおけるゴールキーパーの役割大切です。
残念ながらデヘアは今年プレミアで下から 5 番目にペナルティーエリア外での守備が少ない選手となってしまいました。
シュートストップが売りなのでエリア内で構えるシーンが多いためだと思います。
が、シュートを未然に防ぐことができれば失点の期待値も下げることができますし、カウンターにもつなげることができるのでもうちょっと頑張ってほしいところですね。。
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スタッツを眺めた結論
スタッツをわかりやすく ○△× でまとめると以下のようになります。
- セービング○
- パス△ (ロングパス×)
- ディフェンスアクション ×
まあイメージ通りの結果ですね。
セービングがスペシャルだったら現状維持でも良いのかなと思うのですが、セービングも衰えつつある現場を踏まえると減俸 or 退団になるのかなと思いました。
ユナイテッド加入の噂があるキーパー一覧
では、デヘアが契約延長しなかった場合にどんなキーパーに来てほしいか、今までのデータを見ていくと「セービングはデヘアと同じく期待通りの働きをしつつ、パスやディフェンスアクションに長けたキーパー」となります。
この理想像に近いのが噂にも上がっているブレントフォードのダビド・ラーヤか、アストン・ヴィラのエミリアーノ・マルティネスとなります。
以下特筆すべきスタッツを書いていきます。
※ 40 ヤード以上のパスはロングパスと記述しています
デヘア
失点期待値: 41.3, 実際の失点: 43, 差 +1.7
ロングパス成功率: 31.4%
ペナルティーエリア外ディフェンスアクション数/90min: 0.84
ダビド・ラーヤ
失点期待値 48, 実際の失点 46, 差 -2
ロングパス成功率 39.3%
ペナルティーエリア外ディフェンスアクション数/90min: 1.42
エミリアーノ・マルティネス
失点期待値 42.8, 実際の失点 46, 差 +3.2
ロングパス成功率 36.6%
ペナルティーエリア外ディフェンスアクション数/90min: 2
どちらも失点期待値くらいの失点数であり、ロングパス成功率やディフェンスアクションにおいてデヘアを超えています。
例えばデヘアがダビド・ラーヤに置き換わり、そのままのパフォーマンスを発揮できたとすると失点は変わらず、ロングパスが 141 本から 175 本に改善し(デヘアのロングパス本数が 449 から算出)、ディフェンスアクションが、1.7 倍に増えます。
他のリーグの候補も見ていきます。
噂に上がっていたアンデルレヒトのバルト・フェルブルッヘンも見たかったのですがデータが無かったので記載していません。
ディエゴ・コスタ(ポルト、ポルトガル)
失点期待値 25.1, 実際の失点 22
ロングパス成功率 44.7%
ペナルティーエリア外ディフェンスアクション数/90min: 1.24
オナナ(インテル、イタリア)
失点期待値 19.3, 実際の失点 24
ロングパス成功率 38.9%
ペナルティーエリア外ディフェンスアクション数/90min: 0.42(アヤックス時 1.85 を記録)
見てみるとディエゴ・コスタもオナナもデヘアのスタッツを超えていることがわかります。
オナナがディフェンスアクションでデヘアを下回っていましたが、アヤックス時代は 1.85 という数値が出ており、これが本当であればデヘアを大きく上回ります。
加えてアヤックス出身ということはテンハグのもとプレーしたことがあるためそういった面でもオナナは魅力的ですね。
ただ、リーグが違うので失点期待値など数値に乖離があり、単純に比較できないかもしれないのと、即戦力を求めている点からプレミアリーグの GK でありデヘア以上のダビドラーヤが好ましいのではないかと思いました。
デヘア残留か放出か、決断はもうすぐ!
以上、デヘアの現状と今までのスタッツを見ましたが、自慢のセービングでは期待通りの働きをしてくれているにもかかわらず、パスやディフェンス面では欧州の他のキーパーに比べると劣ってしまう事がわかりました。
最初にも書きましたがデヘアは 22/23 シーズンプレミアリーグのゴールデングローブ賞を獲得したにも関わらず、周りからの賞賛の声があまり聞こえない印象を抱いたのは、サポーターやサッカーファンがゴールキーパーを評価する軸がだんだん変わってきていることを表しているのかなと思います。
ファンより目の肥えたチームのディレクタや監督がこれに気づいていないってことはなく、契約延長に渋っているのかなと思われます。
クラブレジェンドですし扱いにも気を使ってほしいです。
僕の最終的な意見としてはこの夏 1 番手候補となる GK を獲得し、デヘアからトランジションしていく、もしデヘアが 2 番手を受け入れられない場合放出も仕方なしだと思っています。
この記事を書き終えたのが 6/28 で、契約はあと 2 日となりますが、どうなるのか静観したいと思います。
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