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人の意見は聞きたくない

ちょっと不穏なタイトルになっていますが、人の意見を聞くか聞かないかについて書いてみたいと思います。人の意見を聞くか聞かないかは、仕事をしていても、作品を作っていても、常に付きまとう問題で、いまだにどうするべきか迷っている問題でもあるんです。

まずは仕事の場合。私はクライアントがいる仕事をずっとしてきたので、人の意見を聞かざるを得ない状況にいます。と言いますか、「人の意見を聞いて映像を作る」という仕事なので、人の意見を聞かずには仕事は成立しません。クライアントからの依頼があって、それに則って映像を作りますので、常に「どうしたいですか?」と思いますし、クライントの満足こそがその仕事の成功だと思ってやってます。

だから基本的には、クライントの意見は100%採用するスタンスで仕事をしています。いろんな修正があっても、割と素直に対応します。すごくカッコ悪くなるけど、それでもクライアントがそうしたいと言うならそうします。その商品やサービスを1円でも多く売らなければならないクライアントと、ちょっとオシャレなCMだったり、世の中にウケるCMを作りたいと思っている私たちとは、基本的なスタンスが全く違います。圧倒的にクライアントの意見とスタンスが正しいんです。だって、そのクライアントの人の家族や、部下の人生や、会社そのものの存続がかかってますから。

でも、そのまま作ってしまったら技術的におかしな事になる場合は「ちょっと待ってください」と言って、最善の方法を伝えます。

例えば、一番よくあるのが、MAルームで音のミックスをしている時ですね。「音楽を下げて、もっと声が聞こえるように出来ませんか?」と言われることです。これはもう本当によく言われます。下手したら仕事の60%ぐらいの確率で言われるんじゃないでしょうか。

クライアントは言葉のメッセージを確実に伝えたいと思っているので、試写をしても言葉だけに注意して音を聞いてしまいます。そうすると、言葉以外の要素がすべてうるさく聞こえるんですよね。それで、「もうちょっと音楽を小さく」「もうちょっと音楽を小さく」とやっているうちに、おかしなバランスになってしまいます。

そんな時は「これをこのままテレビで流すと、このCMだけ極端に音楽が小さく聞こえますけどいいですか?」と確認します。「他のCMは音楽もセリフも両方最大限大きく聞こえるようにミックスしてますから、このCMが流れた時に凹んだ印象になります。」とも言います。

ほとんどは納得して頂いて、元に戻ることが多いんですが、「どうしてもこのバランスで行きたい」と言ったクライアントのCMは、案の定、突然ボリュームが小さくなったかのようになってしまいました。

仕事の場合はいいんです。そもそも人の意見を聞くスタンスでやってますから。問題は仕事じゃないものを作ってる時です。

私が人の意見を聞かなくなるのが、作品を作っている時です。本当に人格が変わるほど人の意見を聞かなくなります。表向きの人格は変わってないんですけど、使っている脳の部位が違うんじゃないかというぐらい、人の意見を聞かないですね。

私の中には、意見を頂いたら前向きに検討して、それに基づいて修正したいという気概はあるんです。気概はあるんですけど、なかなか行動に結びつかないんですよね。ダメですね。

プロデューサーの勝俣さんによく言われます。ちょっと前までは遠慮がちに冗談ぽく言われてましたけど、最近は本気のスタンスで言われますね。このまま固辞し続けたら世界大戦が勃発するんじゃないかと思う事すらあります。キューバ危機ですね。漢字で書くと「急場危機」でしょうか。

なぜ、人の意見を聞きたくないのか?

先日たまたまこんなTweetに出会いました。

アマは「自分が喜ぶ」。プロは「人が喜ぶ」。

これは野村監督の言った言葉らしいのですが、「ああこれは自分の事を言われているな」と秒で思いました。私は作品作りにおいては、気持ちが常にアマチュアで、プロでは無いんだと気づきました。薄々感じていた事を、この言葉がハッキリさせてくれたんでしょうね。

事実、私は作品を作っている時、人を喜ばせようなんて思ってません。自分が作りたい作品、自分が喜ぶ作品を作ることしか考えてません。まさに図星だなと思いました。グーの音も出ませんね。

プロスポーツと映像作品においてのプロとアマの違いを、同じ様に語ることは出来ないかもしれませんが、たぶん勝俣さんはプロのスタンスで作品を見ているから、アマチュアのスタンスでやっている私を見てイライラするんだと思います。この野村監督の言葉に出会ったことで、この先は勝俣さんの言うことも、しっかり聞ける気がしています。いや、今までもしっかり聞いてきましたけど、次こそ行動に移せる気がしてきました。

こんな大事なことを、アラフィフになってから気づくんですね。「自分が観たいと思う作品を作る!」と言うのは、こだわりの作家の言葉のように聞こえますけど、「私はアマチュアです!」と宣言している様なものなんでしょうね。

ここで「アマチュアの存在意義とそのスタンス」に言及し始めると、あと8000字書かないと締められなくなるので、今回はこの辺にしておきます。








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