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映画祭日記(2020年スラムダンス映画祭)

ロッテルダム、ヨーテボリと続き、遂に最終の地、スラムダンス映画祭に来ました。アムステルダムから10時間ほど飛行機に乗って到着。ロッテルダムもヨーテボリも暖冬の影響でそれほど寒くなかったですが、スラムダンス映画祭をやっているパークシティはスキー場でもあるので、普通に寒いです。

パークシティに着いたら、同時期に開催されているサンダンス映画祭の垂れ幕や、サンダンス映画祭ショップなどがあり、この街ではいまサンダンス映画祭が開催中なんだなという事がわかります。そして、その一角に、マニアな集い的な感じでスラムダンス映画祭の会場があるんです。

サンダンス映画祭は、いまや上映作品が競って買われるような、インディペンデント映画祭と言うよりも、かなりビジネスの臭いもするメジャーな映画祭になっていますが、スラムダンス映画祭は完全なるインディペンデント映画祭です。上映会場もホテルの一室を使ってますし、すごく手作り感溢れる映画祭でした。

アムステルダムからソルトレイクシティに来る飛行機の中で一睡もせずに、映画を見たり、noteを書いたりしていたので、スラムダンス映画祭の会場についた時にはもうヘロヘロでした。でも、会場と同じホテルを予約していたので、そこはすごく楽でした。パークシティは中心部から離れたロッジやホテルが多いので、下手すると中心部から何キロも離れてしまうんです。

ヨーロッパを経てスラムダンス映画祭に来たのは、勝俣P、伊東P、岡崎P、そして私の4人で、日本から秋山桃子さんが合流しました。たまたまソルトレイクシティ空港に着く時間が近かったので、一緒にシャトルバスに乗ってパークシティに向かいました。

パークシティは標高2100メートルぐらいなので、街を歩いていると、ちょっとゼーハーゼーハーしますが、ここのところ水泳をやっているせいか、思ってたほど酷くはなってません。心肺が強化されてる感あります。

『SHELL and JOINT』の上映は、20時15分からでした。着いたその日の上映はなかなかきついものがありますが、スラムダンス映画祭は1月30日で終わってしまうので、ギリギリのタイミングなんです。こちらの渡航計画に合わせて上映スケジュールを組んでくれました。

上映の前に、スチル撮影がありました。映画祭のロゴが入った壁の前で全員で写真を撮ってもらい、私と桃子さんは、さらに別室でポートレートを撮ってもらいました。有名なカメラマンの方らしく、いろいろ指示してくれました。ちょっと口を開けて、笑わず、ぼんやりした目にするように言われたのですが、すごく難しかったです。たぶん「思慮深い作家」方向にしようとしてたんじゃないかと思います。私の写真はいつも同じ表情ですので。

上映会場はシアターではなく、ホテルの大きな部屋を使っての上映でした。全部で70人ぐらいの小さな会場です。そこでまず音量チェックをしてからの上映になりました。上映素材はProRes422HQを渡していまして、すごくクリアでキレイに色も出ていました。

ロッテルダム、ヨーテボリと、ずっと満席でしたが、スラムダンスでは85%ぐらいの入りでした。そして、上映が始まってから30分以内に5人ぐらいの人が出てきました。やっぱりヨーロッパとアメリカは好きな映画が違って、『SHELL and JOINT』みたいな分かりにくい映画はダメなのかも知れない、上映が終わる頃には全員が帰っていなくなってしまうんじゃないかと思いましたが、結果的には多くの方が最後まで観てくれました。そして笑うポイントもまた、ロッテルダム、ヨーテボリとは違って面白かったです。それでも勝俣さんの登場シーンは爆笑されてましたが。

Q&Aではまたいろんな質問がありました。最初は音楽に関する質問でした。音楽に関する質問はもう慣れたものです。日本語ですが。次に、「映画の中の女性が強いけどどうしてか?」という質問が来ました。ロッテルダムやヨーテボリでは、日本はまだまだ男女平等ではなく、特に日本映画の中では男性が優位に描かれいるので、女性を強く描きたかったんですと言いましたが、今回は、アリとかハチは絶対的なメス優位の社会で、『SHELL and JOINT』は節足動物をモチーフにしている映画なので、自然と女性優位に描くことになったと言いました。

先日のnoteにも書きましたが、映画を通しての対話が大事だと思いますので、制作意図なんか無くても何かしら言うことで、さらに楽しんでもらえるんだと思います。「特に意図はありません」とか「何となくそうなりました」とか「皆さんが観て感じたものが答えです」と言っちゃうと、そこで終わってしまいますので。でっち上げでもいいと思いますw

すべてのシーンがFIXになっている理由も質問されました。これに関しては、観客が映画の中にいる登場人物を観察しているようにしたかったので、そうしたと答えました。『SHELL and JOINT』は、マイクロフォーサーズの12mmのレンズ1本だけで、すべてのカットを撮影しているのでそれも言いました。意外とそういうマニアックが技術的な話が好きな人もいたりしますので。『SHELL and JOINT』は映像を褒められることが多いです。ミリ単位でのカッチリしたアングルとか、とにかく美しいとか言ってもらいます。

当初は自分で撮影してしまうことに躊躇もありましたが、お金もかからないし、フットワークも軽くしたかったので、止むに止まれず自分で撮影する事になりました。結果的に、撮影で作品の足を引っ張らなくて良かったなとホッとしてます。

Q&Aの後も、いろんな人が声をかけてくれました。やや興奮の面持ちで近づいてきて、こことここの映画祭は絶対にハマるから後で連絡する、と言ってくれる方もいました。『SHELL and JOINT』はハマる人にはかなり深く刺さる作品なんだなと思いました。でも、無理な人には、相当無理なんじゃないかとも思いました。それでもそれを、スクリーンでみんなで一緒に観るところに、映画の素晴らしさがあるんでしょうね。

これで、ロッテルダム、ヨーテボリ、スラムダンスの上映の立ち会いとQ&Aがすべて終わりました。かなりの強行軍で来ましたので、暴飲暴食には気をつけてましたが、さすがにスラムダンスの上映後は、いつもより多めにワインを飲みました。30日にコンペの授賞式があり、今回の映画祭ツアーは終わりになります。映画祭から帰ったら、3月27日の劇場公開に向けてさらに動きます。


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