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10月個展作品紹介7(23年)

新作の紹介です。

 産声が遠くから聞こえた

悠久の歩みを続ける新しい世界はここへ辿り着いた

無を蚕食しながら有を生み出し世界が広がる

作品紹介

 後戸から紫陽花の種が降ってくる前のこの世界は真っ白な“現実界”です。現実界とは何も形が定められていない言語化・象徴化以前の世界です。それ故に私達は何も認識出来ない世界です。そこに形を与えるのが後戸からやってきた世界の素、紫陽花なのです。

 本作品の背景は北八ヶ岳の坪庭を参考にして描きました。この坪庭は標高2000メートルを越える場所にあります。地上よりも空が近く生えている植物や地形も独特で異世界にいるような雰囲気があります。
 私は地元の高原の風景をよく作中に描きます。その理由はこれまでも再三述べててきたことですが、ここが還るべき場所だと感じたからです。もうすこし率直に言うと天国です。死んだら行く場所、あるいはこの世に生まれ落ちる前にいた場所なのではないかと思うのです。数年前に霧ヶ峰に立った時にふと湧き出た感覚でした。
 実はこの感覚にはもうひとつ考えられる原因がありまして、それはゲームです。私はゲームやアニメには多大な影響を受けているのです。そのゲームはゼノブレイド2です。主人公の少年が世界樹の頂上にあると言われる楽園を目指す物語です。最終的に楽園に辿り着くわけですが、その時に目の前に広がる景色がとても印象的だったのです。ネタバレになってしまうので具体的には言及しませんが、そこにはアンビバレンス/二律背反な世界があったのです。この楽園というひたすら平和な場所というイメージに付随する裏側を見せることで返ってその場所の神秘性が増すのです。
 このゲーム中における楽園の印象は単純にビジュアルによるものだけではありません。物語の中で語られることでその印象がより強く印象付けられます。そんな作品づくりを私自身も取り入れてみたいと思っている次第です。
 というわけで、本作のこの場所―楽園というのは必ずしも平和な空間ではないのです。ここではまだ形の定まらない現実界という自分自身の存在が安定せず、世界に溶け出してしまいかねない曖昧な世界の怖さを伴う一方で、いつか(かつこれまでも)世界とひとつであるという感覚を得られるのです。

ヤギ

 本作は後戸のシカが外に出た姿を描きました。こちらでその作品は紹介しています。

 青々と茂らせていた葉っぱが外の世界へ出て花を咲かせました。姿も現実界を象徴するように白いヤギとなりました。周りに生える葉っぱを食べこれからどんどん大きくなり世界を構築してゆくのです。
 ちなみにこのヤギさんは羽村動物園にいたヤギを参考に描きました。とてもイケメンです。ほかの動物園のヤギとは顔の造形が別格です。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。
 引き続き個展作品の紹介をしますので、よろしくお願いします。

【作品情報】

題名:成長する時 (岐 _∅_ 世界の蚕食)
大きさ:P8 号(455*333mm)
技法:パネルに油彩
価格:264,000 円(240,000 円 + 税)

【出品情報】

こちらの展示でご覧いただけます。

平林孝央個展
”再生 世界のみる思い出”

2023年10月20日(金)-29日(日)
24,25日休み
12:00-20:00
最終日は19:00まで

ギャラリーフェイストゥフェイス
〒167-0054 東京都杉並区
松庵 3-35-19 SHOEI BLDG.2 #102
(西荻窪駅南口徒歩 2 分)
03-6875-9377

https://www.facetoface2000.com/

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