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後戸に咲く花

こんにちは。新作の紹介です。
一番下に本作の詳細情報とご覧いただける展示の情報を記しています。

広い世界へ(後戸_a_萌芽)

 すべての始まりであり、すべてが還る場所である後戸に咲く花。少女は何かを求めるように手を伸ばし、外の世界へと生まれ出ようとしている。

後戸に咲く花

 ここは後戸です。すべてを生み出す空間です。神々がここから生まれて、そして様々な生命が誕生しました。今もこの空間は膨大な生命を生み出し続けています。
 少女はその生まれ続ける生命の象徴です。咲き乱れる牡丹や芍薬は生命の力強さを表していて、大地に流れる川や身体に流れる血のように潤い瑞々しく、色彩も相まってまるで身体の細胞や肉を模したように少し怖さを感じさせるくらいの構造の複雑さをしています。
 この花は一体どのように生えているのでしょうか?
 そもそも後戸に地面はあるのか?何を栄養分として育つのか?
 この花の幹は後戸を闊歩する動物の様な生命体の角なのではないかと考えられています。角のある動物といえば鹿などでしょうか。ただしこの空間にいる動物はこちらの世界の動物とは一線を画する構造を持っているのは確実です。きっといつかそんな不思議な角の幹から繁茂する花の様子を見る日も来るのでしょう。
 しかし何よりも不思議なのはその花からさらに少女が生じていることです。この裏には後戸の意思があるのではないでしょうか。私達との対話を望む形で対話者として少女が送り込まれる。このことはまさに後戸という未知の空間が実はこの世界と地続きであり、後戸の不思議な現象もありえない事柄ではなく、ただ単に私達見えなくなってしまったものなのです。
 故に実は後戸は身近な場所であり、いつもそこに存しています。

作品のイメージについて

 さてここからはこの作品の制作についてです。
 たしかこの様な作品をはじめて描いたのは10年前に銀座のスルガ台画廊での個展の時だったと思います。まだまだ描きとして駆け出しの時です。こういう不思議なイメージを描いている人は周りに誰もいなかったので好んで同じ様な作品を描いていました。しかし、どういう意図をもってこのような作品を描いていたのか思い出せません。新しいイメージを描くときは参考となる作品などがままあるのですが、それも定かではありません。
 その他にも昨今は初期に描いていたイメージの焼き直しと言ってしまうと印象が悪いですが(笑)、その頃に起源をもつ作品を描くことが多くなりました。描き始めた頃にはまだまだ曖昧模糊としたものが、色々描き技術や知識も向上してきた中でようやく自分の意思でちゃんとした意味付けをして形にすることができるようになったと考えています。
 これも不義なもので案外核となる大切なものというのはすでに子供の頃に身に着けているのかもしれませんね。いずれにしても、ようやくその核の外郭がおぼろげながら見えてきたと思うのです。これは精神分析のラカンの考えですが、人を構成する核となる要素は決してその本人は手にすることができない。ただただその周りを回って大きさや形がなんとなくわかる程度のことだという旨のことを言っています。あるいはラカン派の思想家の方がその核あるいは本当に求めている欲望の目標というものは捕まえようとしても、追いつけないか、もしくは追い抜いてしまうかで決してちょうどよく手の届くことはないと言っています。
 ですから、私にできることはせいぜい世界の姿の暗示することくらいでしょう。しかし、暗示という確固たるものではない故にいろいろな人に違った形や意味を開示しながら本当に見つけたい大事なもの肌のぬくもりを伝えられると思うのです。
 欲しいものは遠いか近いかでちょうど自分の手に収まることはない。それが想像力の源であり、私が本作のような作品を描く意味のひとつです。

 下に掲載した作品が過去の同系統の作品です。同じ形式でも今とは違う印象ですね。昔の作品にはその時ならではの構成のシンプルさ故の強さがありますね。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
これからも包み隠さず作品についてお話していきたいと考えていますので、是非次回以降のお話にもお付き合いください。

【作品情報】

タイトル:広い世界へ(後戸_a_萌芽)
サイズ:M4号(333*190mm)
技法:パネルに油彩
価格:154,000円(140,000円+税)

「小さな作品の表現展」

2023年 3/10(金)〜3/18(土)
13:00〜18:00 日曜・月曜休廊

ギャラリーベルンアート
530-0047
大阪府大阪市北区西天満4-2-4(美術ビル2F)

出品作家
浅野信二・市川伸彦・岩本将弥・大竹茂夫・遅野井梨絵・小林宏至・豊永侑希・ 濱元祐佳・平林孝央・松本潮里・水野恵理・やちだけい・吉田然奈・(敬称略)

購入など作品に関するお問い合わせは下記画廊までお願い致します。

ギャラリーベルンアート
◆電話
06-6361-5507
◆お問い合わせフォーム
bernart@kf6.so-net.ne.jp

◆ギャラリーサイト
https://www.gallery-bernart.com/

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