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何もない世界に

 今回もお越しいただきありあがとうございます。
 新作のご紹介です。ギャラリーアークのグループ展「アストレア展」にて展示されます。展示と作品詳細は文末に掲載しておりますので、そちらもご覧ください。
 では、作品のご紹介に参ります。

世界の始まりが孵る (湛 _a_ 現実界の靄)

何もない靄がかった世界
後戸から注ぎ込まれた生命が渦巻き新たな世界を形作る

ひとつに溶け合った世界から

 この世界はまだ始まっていません。明け方の霧の中にいるように、私の眼前にはゆっくりと流れる真っ白な靄が広がっています。霧が晴れればいつもの風景が広がっているのだろう?しかし、待てど暮らせど霧は晴れず、歩いても 歩いても何もありません。何も見えません。私しかいない世界です。はたと気づきます。私とは何なのだろうと思います。あれ、私自身はどこにいるの?気づけば私を認識できません。意識はあるはずなのに、私という形がどこにも見当たりません。私の手は?私の足は?私の身体は?

 そんな世界に花が咲きます。その花は重い音を立てながらむくむくと螺旋状に増殖し伸びてゆきます。どこからともなく蝶々が飛び回り風が吹き始めます。
 この花は後戸から流れ出た生命が形を成したものです。私を含めすべてが溶け合った世界を満たし、形を与えます。すべてがひとつであり、かつ何も無い空(から)の世界に形という象徴が導入され、象徴はあらゆる存在を分け隔て距離を作り個が生じるのです。ここから新たな世界が始まり、そしていつか終わります。

現実界

 現実界とはラカン心理学では象徴界である言語などの象徴によって構成される社会からこぼれ落ちてしまう世界です。同様のテーマを扱った作品を5月の個展に出していましたので、参考にリンクを下に貼っておきますので、そちらも合わせてお読み頂けたらと思います。
https://note.com/hirabayashiart/n/nb665ade87ba6

新たな構成

本作は奥行きを意識して描きました。
メインの少女を中心に、奥へいけばいくほど背景の色に溶け込むようにし、手前のモチーフ(蝶)は誇張気味に大きめに構成しています。これまでの作品を振り返るととても平面的な印象をいだき、それはそれで良い面もあるのですが、もっと動きをつけて躍動感のある作品も描いてみたいと思ったので以上のようなポイントを意識したきっかけです。こうやって描き方を変えることで絵の印象もおのずと変わってきます。それはすなわち作品のテーマの変容でもあります。テーマありきではなく、形によってテーマ・作品の意味が変わっていきます。これからもこんな感じで、より躍動感のある形・構成を意識することで作品持つ印象も変わってくると思います。私はそのことにとてもわくわくしています。皆様にも同じ思いを共有していただけるよう引き続き描いてまいりますので、どうか今後もお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。

 というわけで、本作のお話は以上です。
 こちらの作品は横浜のギャラリーアークでご覧いただけますので、是非実物も見てみてください。

【作品情報】

タイトル:世界の始まりが孵る (湛 _a_ 現実界の靄)
サイズ:P4 号(333*220mm)
技法:パネルに油彩
価格:154,000 円(140,000 円 + 税)

【展示情報】

アストレア展

会期:2023.6.22(木)~7.1(土)*日曜休廊
時間:11:00-18:00 (最終日は 17:00まで)
会場: ギャラリーアーク(横浜市中区吉浜町2-4アクシス元町)
TEL:045-681-6520
E-mail:ark@art-sq.com

*購入など作品に関するお問い合わせは画廊までお願いします。

http://ark.art-sq.com/


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