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おとそ気分とショウワモダン

毎年のことでありながら、実はふくしま、正月の雰囲気…いわゆるおとそ気分があまり好きではなかったりする。

というのは実は簡単なことで「正月だから」という理由でいつもはできることができないどころか、正月仕様の特別バージョンになっていたり、曜日感覚が薄れたりするのがなんかしっくりこないのだ。

かれこれ30年以上も生きているんだから、いい加減慣れろという話なんだけど…いまだにうまくいかない。

しかも「おとそ気分が好きではない」と言いつつ、そのムードに一度ハマると、そこから抜け出すのに苦労するからややこしい。

多分、根っこが怠け者だから、一度怠けちゃうとそこから気持ちを立て直すのに人の数倍、時間が掛かるんだろうね。

そういえば小学生の頃から1月は「気が抜けている」とか「ダラケている」という理由で必要以上に怒られていたし、編集者時代も「オマエは1月、ホントにダレるな!」と滅多に怒らなかった編集長からもカミナリが落とされた記憶がある。

こういう時、ふくしまはショウワモダンという競走馬を思い出す。

生涯成績47戦10勝、6歳時には安田記念を制した遅咲きの名馬だけど、個人的にはハードワーカーというイメージが根強く残っている。

というのも、名門・社台ファーム生産馬の割に血統が地味なせいか、2歳7月のデビューから酷使&酷使のローテーション。2歳時は約半年間で5戦を消化すると、3歳時は1年間で8戦して、1月開催の中山で短期間の間に2勝をマークした。

その後もショウワモダンは4歳時も2月の早春Sから始動して、この年も年間8走。5歳時は1月のニューイヤーSから走り始めて、なんと11走を消化。特に東風Sを買った後は中2週でダービー卿CT、中3週で都大路S、中2週で欅Sと3月半ばから5月末までに4戦を消化。その後に1ヵ月ほど間隔を開けて福島テレビOPとマイル前後の距離なら芝ダートも問わずと言わんばかりのローテを駆け抜けた。

と、5歳終了時での通算成績は32戦7勝。並のクラブ所有馬ならお疲れ様のひとことも添えられての引退となりそうだけど、ショウワモダンはまだまだとばかりにハードなローテを敢行。

個人所有馬ならではな使い方と言えばそれまでだけど、半兄のユメノシルシが故障に悩まされて長期休養に入ったことがあるのを考えるとここまで何のケガもなく、走り続けられた同馬のタフさには本当に驚かされる。

そんなショウワモダンが、ついに6歳で覚醒する。

前年と同じくニューイヤーSで年明け1走目を走ると、月末にはダートの根岸S、そして2月末には中山記念、3月半ばは東風Sとここまでで早くも4戦を消化。しかも中山記念は3着と重賞で初の馬券圏内入りと使い込めば込むうちに調子を上げてきた。

すると東風Sで3着に入った後は昨年同様にダービー卿CTに出走。7番人気ながらこのレースで勝利して念願の重賞制覇を果たすと返す刀でメイSも59キロを背負って勝利と3年ぶりの2連勝をマーク。これで調子づいた陣営は一気にG1、安田記念へのエントリーを決めた。

メイSから安田記念は中1週のローテとなる上に、この時期の東京競馬場の芝コースはショウワモダンが苦手とする高速馬場、そして年明けからすでに6戦も消化しているなど、普通に考えたらとても勝ちに行くローテーションではない。

陣営としては「無事に馬場を回って来ればいい」くらいのイメージだったと思うけれど、レース中、ショウワモダンの何かが目覚めた。

中団からレースを進めたショウワモダンは直線で一気に伸びて、並み居る強豪馬を差し切りまさかのG1初制覇を達成。しかも時計は1分31秒7というレースレコード。39戦目で国内G1初制覇は史上最多キャリアでの勝利という記録づくめのものとなった。

晴れてG1馬になったことで、陣営もショウワモダンの労をねぎらい、競走馬として初めてとなる夏休みを与えた。放牧に出した後、安田記念の4ヵ月後に行われる毎日王冠に向けて調整するというトップホースにふさわしいローテーションが組まれた。

…だが、それがショウワモダンにとっては裏目に出た。

迎えた毎日王冠。馬体重こそ安田記念時と同じ516キロだったが、目方だけがあっていても中身は全くの別物だったようで、直線伸びきれずに9着に惨敗。追われても一切伸びる気配はなく、久々の上位人気を裏切る形になった。

この大敗に慌てた陣営は、やはりハードローテの方がいいのではということで中1週で富士S→連闘で天皇賞(秋)という異例のローテを組んだが成果は出ず、マイルG1春秋制覇を狙ったマイルCSも17着と春の強さは跡形もなく消え去った。

明け7歳になったショウワモダンは年明け緒戦の東京新聞杯にプラス24キロの532キロで出走するという文字通りの正月太りで臨んで15着大敗。その後、3戦しても一度も馬券圏内に入ることなく競走馬生活にピリオドを打った。

多分、休み期間に慣れていなかったショウワモダンは牧場での過ごし方がわからなかったのだろうと思う。周りを見てダラダラ過ごしだしたら本当にダラけてしまい、いつもはすぐに入っていたやる気スイッチが入らなくなってしまったように思える。

年末までバタバタ仕事していた人間が、正月を迎えてダラけるのを覚えてしまったら、自分を律するのに時間が掛かるように。そうした個性がいかにも生き物らしく、面白いなぁと思うわけで。

…おとそ気分が抜けずダラけてしまった時、やっぱりこの馬を思い出す。今はあっちの世界にいるらしいけど、生前のようにせかせか動いているのかそれともダラダラと日がな一日を過ごしているのか…

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