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大阪桐蔭vs下関国際 2022

名勝負は長い人生でめったにあるものじゃないと今日あらためて感じました。能舞台でも、クラシック音楽の演奏会でも、ジャズセッションでも、名舞台はいくつもの巡り合わせで成就するもの…。

前評判の高くなかった下関国際は、案の定、6回に一塁手が内野フライを落球して競り合いの中で勝ち越しの1点を与えてしまった。

大阪桐蔭4vs 3下関国際
このスコアで9回の下関国際の攻撃へ。

絶対王者といわれる大阪桐蔭を相手に、挑戦チームが9回1点のビハインドというのはほぼ負けを意味する。

ところが、こんなことに!

9回下関国際は、1番赤瀬がセンター前ヒット。普通なら1点負けているのだから、2番松本にはバントでしょ。なんと松本もレフト前にヒット!

3番ピッチャーの仲井がここで送りバント、一死二塁三塁となった。もう甲子園は、歓声とも悲鳴ともつかない興奮した熱気に包まれ、下関国際の応援団に合わせて観客の大半が大音量の手拍子を送った。

王者・大阪桐蔭の強さを甲子園の観客は十分に知っているのだ。下関国際?いくらがんばっても、ここまででしょと。

そして、4番賀谷が1-1からの3球目を叩きつけると白球は、ピッチャー前田の頭の上を超えて、狭い二遊間を破った!センター海老根からの矢のような返球を頭からかいくぐって二塁走者の松本までもホームインした!逆転だ!

ガイィーーン!!

と頭をぶん殴られたような、新鮮な衝撃が僕の頭の中に響いて、ギャーという興奮が走った。感動と感激と興奮で、僕の両掌は冷たく感じられた。

試合が終わって大阪桐蔭の選手たちが涙するのは分かるが、この試合では勝った下関国際の選手たちも、勝利した監督までも涙を見せていた。

甲子園なんて、たかが、高校生のクラブ活動じゃないか、という批判があることも承知で言いたい。こういう試合がどれだけの人たちに感動を届け、あとに続く若い選手たちに勇気と希望を与えるだろうかと。

気がついたら、静まり返った甲子園に下関国際の校歌が流れていた。ようやく僕はケータイを取り出して球場全体を写真に撮った。

このあと、球場を後にする下関国際の監督に、大阪桐蔭の西谷監督が歩み寄り手を差し出すシーンがあった。

ネット裏の観客は思いがけない二人の監督の握手にどよめいた。西谷監督は勝利した下関国際の監督に何を語ったのだろうか。名勝負の後のさわやかな一瞬だった。


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