メンタルヘルスと職場環境改善

メンタルヘルスと職場環境改善
―産業精神保健におけるAgility と Sustainabilityに注目して―

吉川 徹

独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センター

DOI:https://doi.org/10.57339/jjomh.32.1_1

<働く人の安全と健康,職場環境改善の役割>
・職場のメンタルヘルス対策のためには個人と組織へのアプローチが共に重要である。精神障害は個体側や環境由来など様々な要因が影響し,その発症はライフコース(生まれてから現在までの経験)での要因の蓄積で決定される。仕事のストレスや社会的支援の低さなどは代表的な環境要因の一つ。
・メンタルヘルスの一次予防はセルフケア,管理監督者教育,職場環境改善の 3つのアプローチから推進が期待されており,一次予防の取組は対費用効果も高いが,心の健康支援に,簡便で有効な職場環境改善手法は模索が続いている。
・2000 年代前半に「従業員参加型職場環境改善のための手引き」及び「メンタルヘルスアクションチェックリスト(職場改善のためのヒント集,以下 MHACL)」が開発された。 MHACL は職場の良好実例をもとに,具体的に職 場で行う低コストアクションを簡便なフレーズ化したリストで 6 領域 30 項目で構成される.MHACL を活用した実施手順は,高知県庁産業医の杉原らが開発した「職場ドッ ク(workplace dock)」プログラム(2011)や ,中小事業場向け「いきいき職場づくりのための参加型職場環境改善の手引き(2018)」などとして,民間企業,公務職場,医療機関などで展開されている。

<職場環境改善を通じた心の健康づくり>
長時間労働や心理的負荷等の職業性ストレスに影響する要因としては,社会的要因,組織的要因,個人的労働要因を挙げていて,個人の特性も関係しながら職業性ストレスがもたらされる.その生じたストレスは個人だけでなく組織も社会にも影響が及ぶ。下記の図で重要なのは,曝露要因があって心理身体的な症状が出て疾病に至るという一方向だけの要因・影響関係ではないこと。

<過労死等の実態からみたこれからの力点>
包括的な介入として職場におけるメンタルヘ ルス対策一次予防策としての職場環境改善に,長時間労働対策,仕事の負荷軽減策,事故・災害対策, 上司・同僚の相互支援と共に,専門家が多面に双方向で支援しながら,労働者が働くことを通じて成長できる,働きがいのある職場作り。


<学び・感想>
・ストレス・要因・影響などは一方向ではなく双方向となっている。
・心理的要因、職場環境という個別性のある要因等に関して、一般的な対策だけが有用とは限らないものの、良好事例を参考にした対策は0⇒1を考えるより、非常に時間的にも対策の質的にも有効と感じる。
・まずは様々な論文・報告で学ぶことに加え、チェックリストやヒント集なども参考に自身の組織体制に応じた改善策を模索したい。


今日も最高の一日に。

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