その三日坊主、違うと思う
先月突然仕事を辞めて、夫は手当たり次第にやりたいことに手をつけ出した。小説を書く、とPCに向き合うがPCが火を噴いた。かと思えば庭に斬新なデザインの納屋を建て始め、屋根から落ちたかと思えば古いミシンを出してきてやたらと何か縫い合わせている。家の布巾が全て無くなった時たまりかねて止めたら、急に顔を上げて言った。
「俺、クリエイターとしての可能性を模索中なんだ」
「あの姫路城の出来損ないみたいな納屋から何とかして」
私は庭を指す。「何につけても三日坊主なんだよ」
「それだよ」夫は目を輝かせ紙を差し出す。
そこには『エッセイ募集!』の文字が躍っていた。「俺の三日坊主が役に立つ日が来たんだ、体験をまとめて応募しようと」
そうだ畑創りも! と彼は鍬をかついで外に飛び出し、いっしんに穴を掘り始めた。
私はチラシを見る。「お題『三日坊主のクレーター』」とある。
読み間違えてるんだ、彼。
慌てて止めようと庭に飛び出して、彼の堀った大穴に転げ落ちた。
(ルビ分含めず410文字)
またまた、たらはかに(田原にか)さんの企画【辛口】に参加を!
よろしくお願いします。
ラブレターの方がなんか思いつかなくて(はずかし)。
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