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軽く踏みこんだら時の重みが鈍く光る『シッコウ!!』をこの夏は汗を拭きつつ観察したい

各TV局の夏ドラマが始まる7月は、ドラマ初回チェックが楽しい。


とりあえず必ず観るぞ、と決めてたのが7/4(火)に初回放送があった、テレビ朝日系ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』。

正直「織田裕二の刑事ものか、テッパンだな」程度で初回を観たら、がっつりはまった(そして刑事ものじゃなくて裁判所だった)。

ケンティーがなんか可愛い感じで織田裕二さんに寄り添ってる予告を見たからそれだけでもはまる気満々だったが、初回から登場人物すべてが魅力的でいちいちはまった。

もちろんケンティーが想像以上にお茶目で、いっそうはまったのは言うまでもないが。

公式HP: シッコウ!!~犬と私と執行官~|テレビ朝日

絶対嫌われる職業を正義の役を極めた織田裕二が演じる渋い輝き

『シッコウ!!』でなにが良いって、とにかく織田裕二。

すでに大ベテランでけっこうな年齢だが、織田裕二の立つところいつでも「Love Somebody」が若き日の歌声で即座に流れる。気がする。

「若い時はやんちゃしたよなぁ俺も」感を背中で語れる大ベテランである。ラブ、サンバディトゥナイ。

今回織田裕二演じる執行官とは、裁判で判決が下ったにもかかわらずゴネて実施されていない刑罰をきちんと実施する裁判所職員。

罰金を払わない人からは罰金を取り立て、立ち退きを命じられても居座っている住居から荷物を運びだして鍵を替える。

情のない人でなし呼ばわりは、ドラマ中の織田裕二にも浴びせられる。

絶対嫌われまくっている仕事。

しかも成功報酬の歩合制だから安定収入ではない(でも収入は年2千万円を下らない高給取りだそうですが)。

そんな執行官の業務を淡々とこなす織田裕二。

その後ろ姿には生活のために仕方なく続けてきた諦めはなく、自分じゃなきゃできないからやるか、という矜持がある。

居座り住人の家のポストを覗く姿も、「お前は人の心があるのか!」となじられてわずかに眉をひそめる表情も、鈍い銀の光がある。

汚れたシルバーではなく、年季を経て深みを増したいぶし銀の輝き。

さすが織田裕二である、ネバネバ、ラブサンバディトゥナイ。

ベテラン名優×ケンティーは間違いない

さて、中島ケンティー健人といえば昨今は、スーツでデスクのスマホをとって素で英語のセリフを普通にしゃべるドラマ「彼女はキレイだった」のイメージが強い。

そもそもSexyZoneを知らずジャニーズの顔の区別がつかない一般の皆さんにも「セクシーサンキューの人」といえば通じるのがケンティー。

かっこいいセリフを真顔で言うにふさわしい美しい顔面、それでいて青春の熱さもほとばしる温度の高さ(実際汗っかきである)。

そういえばトレンディドラマ出身の織田裕二兄貴と似たところもあるのでは。

なので、ケンティーはバシッと決めてヒラリと乗りこみ見事打ちのめしてニヒルに微笑むのが適役だ、と思われているのではあるまいか。

いや、違うんですわお嬢さん。


以前ケンティーが演じたハマり役で、普通の刑事ものだと思ってうっかりドラマを見たお茶の間がズブズブと沼に引きずり込まれた作品がある。

それこそが2018年日本テレビ系秋クールドラマだった『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』

遠藤憲一さん演じる伝説の泥棒を、彼の素性を知らずに慕う新人刑事。

まぁたまに決めるところは決めるけど、基本クゥンクゥン甘える仔犬ちゃんのケンティー刑事(と書いてデカ)の可愛いことといったら!


もうエンケンさんは言うまでもない。

愛嬌たっぷり、ケンティーに劣らず可愛い、それでいて限りなく大人。

川底で100年流れに削られて丸くなった石の持つ歴史の愛おしさよ。

そんな歴史的に可愛い巌の芸術品エンケンさんと、素が可愛いんですキャンキャン仔犬のケンティーのコラボ、とにかく破壊力がすごかった。

そう、ベテラン名優とセクシーサンキューちゃんの組み合わせは間違いない。


待望の組み合わせが今回「いぶし銀のレインボーブリッジ」織田裕二と「いっぱい食べてすくすく育ったけどまだまだ飼い主には甘えたい仔犬」のケンティーで再び味わえるチャンスが到来である。

若くて可愛い以上に女性の苦難をなめたヒロイン枠に共感

で、ここに紅一点放り込まれるヒロイン枠の設定がまた良い。

伊藤沙莉さんの浮き足立たない動作と低めのお声が絶妙だ。


いや、伊藤さんの役そのものはバタバタで人生浮き足立っているポジションなのだが、それを「しゃあない覚悟決めるか」という肝の座った演技で地に足つけているのがとっても良い。

ドラマだから、当然ドタバタは起こる。しかし「事実は物語よりも奇なり」なのが現実で、人はいざ「ドラマよりも奇特な現実」に遭遇しても腹を決めて進むしかない。

そんな「奇特な現実」に出会ってしまった人の「しゃあない覚悟決めるか」感を伊藤さんがちゃんと醸し出すがゆえに、ドラマに現実味が生まれている。

言うたかて織田裕二×ケンティーで「これはドラマの世界に違いない」なので、若くて可愛くて声は低めで足腰強そうな伊藤さんがドラマにもたらす現実味は貴重だ。

まとめ:当然だが人は歳をとることが人生なのだ

そりゃあ「踊る大捜査線」の織田裕二はカッコよかった。情熱ほとばしる無敵のトレンディ俳優である。

「ドロ刑」の20代前半ケンティーの「ベテランの胸を借りてます」なちょっとした甘えたもまたキュート。

それを経ての苦難の職である執行官・織田裕二と事務員ケンティー(またケンティーの花柄の腕カバーが可愛すぎ)が火曜の夜9時に舞い降りる。

織田裕二とていつも走ってばかりはいられないし、橋も人生も封鎖されるような経験もあったろう。

ケンティーだっていつまでも甘えられる年齢ではないし、時すでにsexyな10周年越えボーイズグループの長兄なのだ。


そんな2人が、世の中の正義の果ての後始末をするドラマとは、また粋なものである。

若き日にきちんと情熱を持ってトレンドを生きアイドルをしてきたものだけが削り出す、「勢いだけの若さを越えて生きてよかった」彫刻のような演技を見られたら幸いだ。

#テレビドラマ感想文

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