還る

海のある町で育ったの
砂浜には縁がない
工場だらけの町だったけど
潮の香りと 夜も赤い空は
体に馴染んでる

海のない町に住んだの
ただあなたが育ったという
それだけの理由だったけど
移り変わる色と 山に沈む夕日を
今も覚えてる

あなたに聞いたことがあったわ
海がない町はどんなふうなのかって
海のある町で育った私には
海のない町が想像できなくて
あなたはちょっと考えてから答えたわ
山を見ると帰ってきたなぁってほっとするって

体にしみついたものは
消し去りにくいもの
私から海を取り除けなかったように
あなたからは山を
きっと取り除いたりはできない

私は結局海のある町に帰ってきたの
強制的な要因に動かされるように
だからあなたもいつかきっと山に帰るわ
自分ではどうしようもないものに動かされて

根拠はなくともそんな気がしてるの
きっとそれが自然の定めなの
私は海に還り あなたは山に還る
還る場所ですら すれ違う
交われない私たちが 自然の定め