おねこさん

寒い日が続くようになって
気が付けば近所を猫が一匹
よくうろつくようになった
さくらねこのたぶんオスだ
いわゆる地域猫というやつ
ずいぶんと人慣れしていて
話しかければにゃーと鳴き
呼べばすぐすり寄ってくる

家の前まで来ては営業活動をしている
おそらく冬の間だけでも入れてくれる
家を賢くも自分で探しているようだが
自分の世話だけで精一杯なわたしには
出くわしたときちょっとおしゃべりし
外猫にしてはずいぶんきれいな毛並を
なでてやるくらいのことしかできない

「あんたはそういう捨て猫を拾ってまうタイプや
だからあいつみたいなのも拾ってやってまうんや」

大学生のころ教授に言われたことがある
わたしは自分が癒されたいくせになぜか
観察眼と周囲の空気の読み過ぎのせいか
癒されたい人を引き寄せてしまっていた
ちなみに捨て猫は二度拾ったことがある

最近よく会う近所で営業活動中の猫に
呼び名でもつけようかと思ったけれど
愛着がわきすぎるのが怖いから止めた
捨て猫を拾ってしまうタイプらしいし
たぶん自分がこんなに無力な今ですら
わたしは手を差し伸べそうになるのだ

とりあえずおねこさんと呼んでいる
さわりごこちはぬいぐるみのようで
シルキーな感じで短毛で白と茶の斑
地域猫で世話をしてもらっていても
冬の間どこかの家で過ごせるのなら
それがいちばんいいと思うのだけど
もうしばらくさわらせていてほしい

わたしは癒されたかっただけ
癒すことで癒されていただけ