そらうた

物語の始まりはありがちな春のこと
仁王立ちであいさつをするあなたを
遠くから見ただけで引き寄せられた
たぶん一目惚れが実在するとしたら
あなたが最初で最後なんだと思うわ

色黒 一重まぶた 下唇の小さな黒子
肩が厚いのはスポーツをしていたから
二人で話すときには低く落ち着く声で
前髪に指先を絡めるように頭をなでて

特に関わることもなさそうなのに
何かと接触することが多くなって
でもお別れの時は決まっていたから
迷惑にならない程度には伝えたくて

あなたに捧げるとしたら
それはきっと青だろうと
思いついた時から決めていたのよ
生きづらさをいくつも抱えた私に
青空を見せてくれたのは
きっとあなただったから

青い空が水面のように波紋を描き
淡いピンクの花が咲こうとしてる
降り注ぐ銀色の雨のような光の粒
たくさんの言葉を添えて贈った 一枚の絵

水面に花がひらけば 空から降るいくつもの歌
ねぇ あのころ あなたにも聞こえてた?
私にできる限りのすべてを込めて贈ったつもり
ねぇ いまでも あなたには残ってる?
光の粒のようなそらうた 空に降り水面に昇る