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お茶代

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僕が文学サークル「お茶代」の課題として作成した記事および、「お茶代」に関する批評のまとめです。
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2023年10月の記事一覧

ウィットとユーモア

 僕が笑いに関心を持つきっかけは、西部邁最後の弟子を名乗り、雑誌「表現者クライテリオン」に多数投稿されている平坂純一さんだった。
 平坂さんは笑いをウィットとユーモアに大別して論じられ、獅子文六論のほか、YouTubeチャンネル「平坂アーカイブス」でも度々触れられている。ウィットが「知性による高みから個別的な時代や場を切り取るような乾いた諧謔」*1であるならば、ユーモアは「自らが時間と空間を超越し

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詩的なものと僕

詩的なものと僕

 大阪のとある病院の一室で生を享けた僕は、物心つく頃には既に奈良へ移り住んでいた。その後も家族の仕事の都合上、週に一回、当時住んでいたはずのかの地を訪れていた。けれども小学校の三年以降、塾に通い始めるのと時を同じくして大阪へ行くことはなくなり、思い返すことも次第に少なくなっていった。
 その「第二の故郷」——故くした郷という字面に従うならば唯一の、と言うべきなのかもしれない——を再び訪れたのは昨年

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