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悪魔の投資定理

定理「勝ち負け50%の投資でも、繰り返すと、期待値(結果の平均値)は ±0(増減なし) でなく、-100%(所持金をすべて失う)に近づく」

そんなバカな。

ああ、手数料のことね、と思うかもしれない。
いや、手数料0でもそうなる。

勝ったときの利益と、負けたときの損失が違うのかな?と思うかもしれない。
いや、利益と損失は同じとする。
10万円賭けるなら、勝てば10万円増え、負ければ10万円失う。

は? 意味がわからない。勝つ確率も50%、負ける確率も50%でしょ?
当然、平均は0じゃない?
...そうですね。意味不明ですね。

例えば、いま所持金が100万円あるとする。
このうち、一定割合bを賭けにあてるとする。
全額投資はあまりにも危険だから、通常bは100%ではない。
リスクを取る人で50%、安定志向の人で10%くらいか。
賭けて勝っていくと、所持金が増えて、もっと大きな金額の賭けができるようになる。
負けていくと、所持金が減るので、賭け金は小さくなっている。
賭け金の金額は変わるが、賭け率bは変えない。
普通の投資は、大体そんな感じだ。

いま、賭ける割合bを10%とする。
すると1回目の賭け金は、100万円 x 10% = 10万円 となる。

勝てば、10万円を得る。所持金は110万円になる。
2回目のの賭け金は、110万円 x 10% = 11万円だ。

そこで勝てば、さらに11万円を得る(雪だるま式に増える)が、負けると11万円を失う。
110万円 - 11万円 = 99万円

...あれっ?
一回勝って、一回負けただけなのに、1万円減っている...?

順番の問題、かな?
勝→負で減るなら、負→勝だと逆に増えるんじゃないか。
お願い、そうと言って。

1回目に負けて、10万円を失ったとする。所持金は90万円になる。
2回目のの賭け金は、90万円 x 10% = 9万円だ。

そこで勝てば、9万円を得る。
90万円 + 9万円 = 99万円

...えっ?
一回負けて、一回勝っても、やっぱり1万円減る...?

b = 50%なら、もっと劇的に減る。
1回目の賭け金は、100万円 x 50% = 50万円 だ。

勝てば、50万円を得る。所持金は150万円になる。
2回目のの賭け金は、150万円 x 50% = 75万円だ。

そこで負けると75万円を失う。
150万円 - 75万円 = 75万円

勝ち負けを1回ずつすると、なんと25万円を失ってしまうのだ。あわわ。

10回賭けると、平均5回勝って、5回負ける。
すると、100万円が、24万円になる。勝ち負けの順番とは関係なくそうなる。
20回も賭ける前に、ほぼすっからかんになる。

理由は、非常にシンプルだ。

勝つと (1 + b)倍になり、負けると (1 - b)倍になる。
勝って負けると、

倍になる。1より小さくなる。
負けて勝っても同じ値になる。順番とは関係ない。

完全に勝ち負け50%で手数料もない公平な投資でも、投資し続けると、期待値は0に収束するのだ。
名付けて、悪魔の定理。(勝手に名付けました)

これはどういうことか。
市場の中にある金額の総量は、変わらない。参加者の数も、変わらない。
なのに平均が、減る...? なにそれ、怖っ...!
やっぱり、悪魔のしわざ...? ラプラスの悪魔か何か...?

この謎については、さておき。

賭ける人は、通常は、自分が勝つ可能性が高いと思うから、賭けるわけだ。
つまり、その人の主観では、勝率は50%ではない。
そして、50%より少しでも高ければ、利益が出るのだろうと思っている。

しかし、この悪魔の定理に従えば、50%なら、損になる。
50%より高い、というだけでは、ダメなのだ。

では、何%以上なら、利益になるのか?というのを、知りたいですよね。私は知りたい。
これは、賭ける割合bに応じて異なる。

閾値となる勝率をrとすると、

を解けばよくて、

を得る。なんだか複雑ですかね。ちょっと変形して

とすると、すっきりした感じがするかも。しないか。

bを具体的に代入してrを計算すると、下記になる。

b=10%のとき、r > 52.5%
b=20%のとき、r > 55.03%
b=30%のとき、r > 57.6%
b=40%のとき、r > 60.28%
b=50%のとき、r > 63.09%

あなたの賭け事の、主観的な勝率は、この閾値を上回ってますか?
だったら、よかったですね。めでたし、めでたし。

安易な考えで投資をしてはいけないよ、という戒めでした。

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