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猫との出会い
SEで泊まり込みの仕事が三日も続いた。
僕はとへとだった。そのうえ、雷雨と来た。
三日前は晴れだったから、当然傘なんて持ってきていなかった。
雨の中を走り、近くのコンビニに入り、ビニール傘を買って外に出ると
黒い子猫が目の前にいた。
「にゃあ」
寒そうに震えて僕の目の前で止まった。
ごめんな、と内心呟きながら猫を無視して帰ろうとした。
こんな不健康な生活をしている僕が生き物を飼うなんてできない。
命は救ってやりたいが、責任が持てないなら最初から関わりなんて持たない
方が良い。
そう考えていると、後ろから声をかけられた。
「あなた、こんな可愛い猫を捨てるなんて本当に人でなしね。しかもこんな雷雨の中」
後ろには、いかにも嫌味な金持ち代表と言わんばかりの紫色の服を着て、髪まで紫に染めたふくよかな女性が立っていた。
「……あ、あの僕のことですか」
「あなた以外いないでしょう」
「……いや、僕の猫じゃないですよ。僕はたまたまここを通りかかっただけで」
「うそおっしゃい。こんなに懐いているのにそんなわけないでしょう」
下を見ると、子猫が僕の靴の辺りに居座り、上目遣いで僕のことをずっと見ていた。
「いや、ほんと……」
「いい訳はいいからさっさと猫ちゃんを連れて帰りなさい」
「はぁ、これからどうしよう」
「にゃあ」
結局おばさんに逆らえず、うちにまで猫を連れてきてしまった。
僕が途方に暮れていると猫が僕の膝の上に乗ってきて一鳴きした。
「はぁ、お前のことで頭を悩ませているっていうのに」
「まぁ、雨が止むまでの間だけだぞ」
僕は、それからコンビニで買ってきたキャットフードを皿に出した。
子猫は遠慮なしにバクバクといい音を出して、ものの数秒で食べきってしまった。そうして、また膝上に乗ってきてそのまま眠ってしまった。
それから数日、猫を早く追い出そうと思ったが、雨は止まず中々追い出せないままの日々が流れた。
ついには、時間になったら自動でご飯出てくる機械と猫砂などを買ってしまっていた。
多くはない給料の中から、一気にお金が出ていき、内心ひやひやしたが猫が死んでしまうことに比べればましだ。
財布を見て、途方に暮れていると子猫がすり寄ってきて一鳴きした。
「にゃあ」
「ハピネス、お前が気にすることじゃないさ。お前の飼い主は絶対に探してやるから、もう少し待ってろよ。姉さんに知り合いで猫を飼いたい人がいないか聞いてやるからな」
子猫は首を振り、もう一鳴きした。
「にゃあ」
「一緒にいたいのか?」
「にゃあ」
「……そうしたいのは僕だって同じさ。でも今みたいにお金にも時間的にも余裕がないとどうしたって無理な話さ」
猫は首をかしげたまま、もう一鳴きした。
僕はどうしたものかと、家に積まれている本の山を見た。
いつも読んでくださってありがとうにゃ。 ゆうきみたいに本を読みたいけど、実際は読めていない人の為に記事を書いているにゃ。今後も皆が楽しめるようにシナリオ形式で書いていきたいにゃ。 みにゃさんが支援してくれたら、最新の書籍に関してもシナリオにできるにゃ。是非頼むにゃ。