謡(うたい)が謡われる時
「高砂(たかさご)や。この浦舟に帆をあげて。」
披露宴の席で「高砂」の一節はよく謡われてきました。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。
昔は宴会の席で余興で謡を謡われていたことがあるくらい、一般的に普及していました。(今だとカラオケでしょうか)
一節謡うことを「小謡」といいます。
(大判小謡本と「祝言小謡集」のCD)
お能は様々なドラマがある物語のため、おめでたい席ではおめでたい物語の謡を、誰かを偲ぶときはそのような物語の謡を謡うことができます。
例えば結婚式の場合では、夫婦の繁栄を祈った「高砂」など。
新年を祝うときは「老松(おいまつ)」や「岩船(いわふね)」などが謡われることが多いです。
(「老松」謡本のイラスト)
反対に葬儀や法要では「江口」や「融(とおる)」など。
他にも「偲ぶ」等の言葉が入っている曲が使われることが多いです。
「江口」は「白妙の白雲にうち乗りて西の空に行き給ふ(白い象に乗って西(極楽の方角)へ歩いていく)」という一節があったり、「融」は最後「名残惜しの面影」で終わったりすることから、故人を偲ぶ時に謡われることが多いようです。
他にも景色を謡ったもの、春夏秋冬を謡ったもの、月を謡ったものなどもあります。
謡を謡うことは、人生で起こる様々な出来事を謡うことでもあるのかもしれませんね。
(「江口」謡本のイラスト)
さて、その中でも「高砂」は多くの場所で謡われてきた曲です。
前回「羽衣」が一番のベストセラーとお伝えしましたが、「高砂」もそれに次ぐくらいのベストセラーです。
お能が上演される際、一番最後に「附祝言(つけしゅうげん)」というものが謡われることがあります。
その時に一番謡われるのが「高砂」の一節なのです。
「最後はおめでたく。」こういった配慮は日本人の歴史という感じがしますね!
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