『源氏物語』の能:NHK大河ドラマ「光る君へ」
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公は、女優の吉高由里子さん演じる紫式部です。
NHKホームページには、次のように書かれています。
1月7日からいよいよ放送が始まりました。
能の中には、『源氏物語』を典拠とした作品がたくさんあるので、楽しみにされている方も多いと思います。流儀による違いはありますが、現在上演されるいわゆる「源氏物」は10曲(「葵上」「浮舟」「落葉」「碁」「須磨源氏」「住吉詣」「玉鬘」「野宮」「半蔀」「夕顔」)です。
これと紫式部自身がシテの「源氏供養」をご紹介していきたいと思います。
⚫︎源氏供養(げんじくよう)
では、まず「源氏供養」から。
作り物語の作者という妄語戒を犯した罪で成仏できない紫式部は、『源氏物語』の主人公である光源氏を供養し、自らも成仏しますが、実は彼女は石山寺の観音が仮に姿を現した人物でもあった、というお話です。
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⚫︎葵上(あおいのうえ)・野宮(ののみや)
『源氏物語』の中でも屈指の人物、六条御息所を主人公とするのは、「葵上」と「野宮」。
「葵上」では生霊、「野宮」では死後の御息所の霊が登場します。御息所の高い品格、車争いなどのエピソード、源氏への思い…と様々な面が描写されます。
(「葵上」あらすじ・見どころはこちら)
(「野宮」あらすじ・見どころはこちら)
[対訳で楽しむ「葵上」はこちら]
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⚫︎夕顔(ゆうがお)・半蔀(はじとみ/はしとみ)・玉鬘(たまかずら)
御息所と並んで人気の人物といえる、夕顔をシテとした曲に「夕顔」と「半蔀」。源氏との短い恋と、夕顔の花のはかなさが合わせて描かれます。
この夕顔の忘れ形見である玉鬘が主人公で、恋の妄執に苦しむ姿を描くのが「玉鬘(玉葛)」。
(「夕顔」あらすじ・見どころはこちら)
(「半蔀」あらすじ・見どころはこちら)
(「玉鬘」あらすじ・見どころはこちら)
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⚫︎碁(ご)
若い頃の源氏が出会う、二人の女性(空蝉、軒端荻)が現れる「碁」は、二人の霊が実際に碁を打つシーンがあります。
⚫︎須磨源氏(すまげんじ)・住吉詣(すみよしもうで)
光源氏自身が登場するのは「須磨源氏」と「住吉詣」。
「須磨源氏」は光源氏の霊がシテで、在りし日の雅な姿を見せます。明石の君がシテ、光源氏がツレとして現れるのが「住吉詣」。二人が住吉神社参詣の折に再会する場面を描きます。
(「須磨源氏」あらすじ・見どころはこちら)
⚫︎落葉(おちば)
「落葉」の主人公、落葉の宮は、源氏が晩年、正妻として迎えた女三の宮の異母姉で、柏木の妻。夫の死後、交流があった夕霧(源氏の子)への慕情を述べます。
(「落葉」あらすじ・見どころはこちら)
⚫︎浮舟(うきふね)
宇治十帖の世界を描く「浮舟」。源氏の子(実は柏木の子)の薫大将と、匂宮との間で揺れ動く、浮舟の苦悩が描かれます。
(「浮舟」あらすじ・見どころはこちら)
源氏物は半数の曲で「序ノ舞」が舞われ、平安時代の雅で美しい世界観が感じられます。
また各曲に独自の工夫もみえ(「半蔀」の作り物や、置かれた小袖を病床の葵上に見立てる演出〈出し小袖〉など)、魅力的な作品群です。
なお、今年の京都観世会例会では、『源氏物語』が題材の演目が毎月上演されます。
こちらでは能楽鑑賞多言語字幕サービス「能サポ」も導入されていますので、ぜひご利用ください!
『源氏物語』は原作のほか、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、田辺聖子、橋本治、瀬戸内寂聴、大塚ひかり、林望、林真理子、角田光代ら、数々の作家による現代語訳が出されています。
また大和和紀のマンガ「あさきゆめみし」もあり、大河ドラマを見ながら、これらの作品を読んでみたり、能の源氏物をご覧になってみるのはいかがでしょうか。
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